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ブルーテイル・ハピリス  作者: aki.
1,三人の旅
12/15

不穏な依頼





 地下水路を出ると、空はすっかり暗くなっていた。

 夜の港町は落ち着きを取り戻し、風の音だけがその場に響く。


 濡れた靴底で石畳を踏みながら、シオンたちはギルドへ戻った。

 扉を開ければ、夕刻よりも人は減っていたが、内部には相変わらず灯りがともり、低い話し声が満ちていた。


 カウンターへ向かうと、先程と同じ受け付けの女性が顔を上げる。


「お帰りなさい。…随分と早いですけど、地下水路の件は……?」

「完了した」


 シオンが簡潔に答えると、女性は目を見開き、すぐに頷いた。


「さすがシオンさんですね。確認しますのでお待ちください」


 やり取りをしている間、特に何もする事がないフィルとルーンは、ボーッと女性とシオンの話を聞く。


「………」


 暇だなぁ。と、思いながらフィルは周囲を見回していると、ふとカウンターの脇に立つ人物に目が止まった。


「あれ…?」

「どうかしたの?」


 声を漏らせば、隣に立つルーンがフィルの方へ顔を向ける。


 彼の視線の先に立っていたのは、見覚えのある女性だった。

 緑色の髪を揺らし、依頼書を一枚手にしたまま、落ち着かない様子で視線を彷徨わせている。

 声をかけるべきか迷っているような、そんな困った表情だった。


「リリアさん」


 近付いて、声をかける。

 びくりと肩を揺らし、女性…リリアは彼の姿を見て、息を吐いた。


「! フィル……!び、っくりした…」

「ここにいるなんて珍しいですね。何か依頼しに来たんですか?」

「あ、……えと、」


 眉尻を下げて、リリアは視線を泳がせる。

 その様子に、フィルとルーンは顔を見合わせた。


「討伐数の加算分も含めて、金貨90です。お疲れ様でした」

「ああ」


 受け付けの女性に報酬袋を受け取り、袋の重みを確かめながらシオンはフィルたちの方へ視線を向ける。


「……リリア?」


 そこでシオンも、リリアの存在に気付いて彼女に近付く。

 声を掛けると、再び彼女は肩を震わせた。


「シオンっ、…そうか、フィルもいるんだから、シオンもいるよね」

「こんな所で何をしてる?…それは、依頼書か?」


 問うと、リリアは一瞬だけ言葉を詰まらせ、手にしていた依頼書を胸元へ引き寄せた。


「……ちょっと、相談があってさ」


 彼女の声は、いつもより少し低い。


「相談?」

「うん。一応、依頼として受け取ってはくれたんだけど…、ちょっと迷ってて」

「どんな依頼?」

「この依頼、なんだけど……」


 そう言って、差し出された依頼書にフィルが目を落とす。


――《旧灯台内部・夜間調査》

――危険度:未設定

――報酬:金貨50(調査完了時)


「旧灯台?」

「…うん。最近、港の外れにある旧灯台で、妙な光が見えるって噂が出てて」


 リリアは小さく頷き、言葉を濁しながら視線を落とす。


「旧灯台に行ったって人が誰も戻ってきていない、っていうわけではないの。ただ……」

「ただ?」

「その、…旧灯台に行って、戻ってきた人たちがね、口を揃えて言うの」

「なんて?」


 沈黙が落ちる。

 ギルドのざわめきが、少し遠く感じられた。


「……灯台の中を歩いていたら、声が聞こえたって」

「声?」

「どんな声だ?」

「わからないけど、話によると、うめき声だったり叫び声だったり笑い声だったり、いろんな声が灯台内に響いてたって」


 シオンの問いに、リリアは答える。


「え、それって…」

「……、うん。もし、これが…ゆ、幽霊の類とかだったらって考えたら、依頼を出すの…躊躇しちゃって」

「…………」


 依頼書から目を離し、ルーンはシオンを見た。


「……依頼って、何でもいいの?」

「基本は、どんな依頼でも平気だ」

「猫探しとか、浮気調査とかね。でもほとんどの探求者はやらないかな。オレたちもたまにやるんだ。探偵みたいでカッコいいから!」


 シオンの言葉にフィルが続ける。

 目を輝かせながら言う彼に、ルーンは冷ややかな視線を送った。


「それで、…その幽霊の話と貴女が渋っている理由には何か関係があるのかしら?」

「え?…あ、えと?」


 口を開き、ルーンはリリアに問う。

 見た事のない少女の顔を見て首を傾げた彼女に、フィルは慌ててルーンを紹介した。


「……関係は、ないけど…でも怖いじゃない。調査に行った探求者が戻ってきて、声の主は幽霊でしたって言ってきたら」

「怖い?」

「リリアは昔から、幽霊や見えないものの類が苦手なんだ」

「だから、…どうしようかなって」


 眉尻を下げて、リリアは言う。


 フィルから依頼書を受け取り、シオンは依頼内容を眺めた。

 この依頼の報酬額は50。現在、彼らが持っている金貨の枚数と合わせれば、十分にチケットを買える値段になる。

 少し考え、シオンはリリアの方に顔を向けて頷いた。


「わかった。この依頼、俺たちにやらせてほしい。お前がよければ、だが」

「! 本当?」

「えっ、受けるの?」

「……ま、まぁ、リリアさんが困ってるのに無視するわけにはいかないよね」

「この旧灯台は何処にある?」

「ありがとう。シオン、フィル。…旧灯台は、ここから出て、東に三十分ほど歩いたところにあるわ」


 リリアはホッと息を吐き、口元を緩ませる。

 そして、シオンは依頼書を受け付けの女性に見せた。



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