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ブルーテイル・ハピリス  作者: aki.
1,三人の旅
11/12

お金を貯めよう





 港町のギルドは、夕刻になっても賑わいを失っていなかった。


 依頼を終えた者、これから向かう者、酒を片手に騒ぐ者。

 様々な気配が入り混じる中、シオンは静かに扉を押し開けた。


「いらっしゃいませ」


 カウンターにいた受け付けの女性が顔を上げ、すぐに彼だと気付いて軽く会釈する。

 シオンは無言で頷き、依頼掲示板の前へと向かった。


 ――金貨130枚。


 短期間で稼ぐには、危険度が高すぎても低すぎても駄目だ。時間をかけず、確実に報酬が出るものが好まれる。


「…………」


 視線を上から下へと滑らせていく。

 B級以上の依頼は報酬がいいが、準備や日数が必要になる。逆にE級やD級では、効率が悪い。


「……これか」


 シオンの視線が、ひとつの依頼で止まった。


――《港湾地下水路の魔獣排除》

――危険度:C級

――報酬:金貨60(討伐数により加算あり)


 地下水路。

 港町の下を走る古い水路で、最近になって魔獣が住み着いたらしい。


「時間も、場所も悪くないな」

「シオン」


 声をかけられ振り向くと、ルーンが立っていた。

 少し遅れて、フィルも姿を現す。


「お前たちも来たのか」

「宿にいても暇だったし、休むにしてもまだ早いから」

「それ、いい依頼?」

「ああ。C級だ。今日中に終わらせられる」


 フィルはシオンの視線の先にある依頼書を横から覗き込み、眉をひそめた。


「地下水路かぁ……狭そうだね」

「だからこそ、数で稼げる」


 シオンはそう言って、依頼書を剥がした。


 三人でカウンターへ向かうと、受け付けの女性は依頼書を確認し、少しだけ表情を引き締める。


「地下水路の件ですね。ここは最近、魔獣の数が増えていて…。緊急の依頼だったので助かります。受理しますので、少々お待ちください」


 そう言って、受け付けの女性は作業を始める。


 そして、手続きを終えた三人はギルドを後にした。



+



 港の喧騒から少し離れた場所。

 石造りの蓋が並ぶ一角で、シオンは足を止める。


「ここだ」


 重い蓋を押し開けると、湿った空気が一気に吹き上がってきた。


「うわ……」


 フィルが思わず顔をしかめる。


「狭いし、暗いわね」


 ルーンはそう言いながらも、躊躇なく足を進めた。

 梯子を降りて、フィルが服に着けたライトのスイッチを入れて周囲を照らす。

 地下水路の中は、天井が低く、足場も不安定だった。


「足元、気を付けろよ。滑りやすいからな」

「気を付けてね、ルーン」

「わかってるわ」


 奥へ進むと、水音が反響し、遠くで何かが動く気配がする。


「あれが、依頼にあった魔獣だな」


 シオンの低い声と同時に、影が動いた。

 ライトに照らされ、ぬるりと姿を現したのは、人ほどの大きさの水棲魔獣。鋭い歯を剥き出しにして、こちらを睨んでいる。


「数、結構いるね」

「一体ずつ確実に仕留める」


 シオンが剣を抜き、フィルが前に出て盾を構える。

 通路が狭いため、魔獣は正面からしか来られない。


「今なら、私の魔法も使いやすいわ」


 ルーンが小さく魔法陣を展開する。

 狭い空間での戦闘。

 だが、それは同時に、連携が最大限に活きる場でもあった。


[グアアアッ!!]

「行くぞ!」


 地面を蹴り、魔獣が襲い掛かってくる。

 同時に動き出し、三人は魔獣に応戦した。


 フィルが盾で受け止め、

 シオンが確実に仕留め、

 ルーンが後方から補助と制圧を行う。


 その流れを途切れさせる事なく、彼らは短時間で次々と魔獣を倒していった。

 最後の一匹をシオンの剣が貫き、やがて、地下水路に静寂が戻る。


「……これで全部、かな」


 フィルが周囲を見回す。


「そのようね…。付近に魔獣の気配はないわ。依頼は完了?」

「ああ。依頼の条件は満たしている。これで終わりだ」


 シオンは落ちたコインを拾い上げ、数を確認した。

 赤と黒のコインが、合計で三枚。


「あんなに倒したのに、たったそれだけなの?」

「必ずしも魔獣がコインを落とすとは限らない。…こればかりは運だからな」

「そうなのね。…なら、あと少しね」

「どうする?」

「そうだな…。思いのほか、早く片付いたから、もう一件いけそうだ。ギルドに戻るぞ」


 剣を鞘に収めて、シオンは言った。



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