第三章「潮干狩り大会」1
ある日、俺とトミジイが酒場でしっぽり飲んでいると、突然タモツが店内に飛び込んできた。
「これを見てくれよ!」
タモツは柄の長い斧を手に持っている。
ザ・トリニティ
レア度:レア
攻撃力:大
その斧は、扇状の刃の逆側にクチバシのような刃が存在し、長い柄の先が騎槍のようになっている。
まるで斧と剣(曲刀)と槍が合体したような武器だった。
たしかにかっこ良くはあるが・・・
「これ、どうした?」
俺は思わず聞いた。
「鍛冶屋に作ってもらったのよ。非常に良い出来だ。まあ、200万円したがな」
タモツはザ・トリニティを大事そうに抱きしめている。
「200万円!?お前そんな金持ってたのかよ」
「100万は借金した。でも、しょうがないじゃないか。お前ばかり良い武器を手に入れて不公平だろう」
これほど、バカだとは思わなかった。
利息がどれほどか知らないが、100万円をこの世界で稼ぐのはかなり難しい。
死の危険がない通常労働は常に取り合いのため、月収良くて8万円だろう。
節約したとしても、月に5万円ほど消えるのだから、悪い月は金が残らない上、マイナスもあり得る。
魔物をただ倒しても寸志。
その日暮らしが世の常なのだ。
冒険者になれば別だが、この前のような都合の良いクエストはまず無いし、俺たちのレベルでは安定して稼ぐことはできないだろう。
「まあ待て。一気に金を稼ぐ方法がある」
軽蔑の目を向けていた俺とトミジイに反論するかのようにタモツが言った。
「ああ、そうか。もうそんな時期だったか」
トミジイは何かに気がついたようで、俺を差し置いて納得していた。
「ちゃんと説明せい」
「もうすぐ<潮干狩り大会>がある。優勝賞金はなんと250万円だ。それに優勝すれば借金は返せる」
「優勝って・・・勝算はあるのかよ」
俺は呆れ果てていたので、適当に聞いた。
「これはただの潮干狩り大会じゃねえ。貝型の魔物を捕獲する大会だ。5人1チームで行い、捕獲した魔物のレア度や大きさを競う。俺の飲み仲間に<潮干狩りマスター>というフィートを持っている奴がいてな。そいつをチームに加えれば優勝できる」
「おい、ちょっと待て。5人チームなら優勝賞金を山分けした場合、お前は50万円しか儲からないだろ」
「ふふ、優勝賞金の250万とは最低の話だ。優勝できるほどのレアな魔物を売れば、倍は儲かるのよ」
さすがにそこまでの計算はちゃんとできているか。
とはいえ、そう簡単に優勝できるか・・・?
「チームだが、俺、トシ坊、トミジイ、潮干狩りマスターの4人だから、1人足りないな」
タモツは俺とトミジイの同意無しに、エントリーシートに名前を書いていた。
そして、それを俺達が咎める前に「でも、参加するだろ?」と聞いてくる。
まあ少しでも金になるようだからやるけどね。
するととフードを被った男が話しかけてきた。
「失礼。わたくしダグラスと申す者です。盗み聞きしていたわけでは無いのですが、良かったら仲間に入れてもらえませんか?」
「いいよ」
タモツは即答しエントリーシートにダグラスの名を記入したのだった。
タモツチーム
タモツ 泥酔者 レベル4
トシミツ 泥酔者 レベル4
トミジイ ゴースト レベル1
タジマ 善良な民間人 レベル2
ダグラス 魔法使い レベル3
このタジマという奴が潮干狩りマスターだろう。
レベルが低く思えるかもしれないが、この世界ではほとんど戦闘しない者も多く、平均生涯レベルは3くらいなのだからまあまあと言えるな。
まあ、職業の欄は普通じゃ無いがね・・・
タモツは潮干狩り大会を主催するギルドにエントリーシートを提出すると、俺達はその日が来るのを待った。
そして当日・・・
会場はバブルガムの浜辺でバブルガムの街の北西に位置し、端から端まで約10キロメートルほどある。
開始場所は抽選で決められるが、開始後には自由に移動しても良いらしい。
飲酒もOKだ。
俺達は指定された砂浜に集まり、海から20メートルの所をみんなで円になって座り込んでいた。
左右を見ると他のチームも同じように集まり、5人のまとまりがズラーッと奥まで続いていて、みんな開始時間を待っている。
もちろん俺とタモツはすでに泥酔しており、タジマも俺達につられて飲み始めている。
まだ開始時間まで30分ほどあるので、俺は一つの疑問をタモツに投げかけた。
「そういえば、潮干狩りマスターがいれば勝てるって言い切ってたけど、前回は優勝したのか?」
「いや、前回は青い髪のやつのチームが優勝していたな。そいつも潮干狩りマスターを持っている」
「え?」
「まあどちらも持っているんなら、勝率は2分の1じゃねえか?」
「は?」
「そういえば潮干狩りの道具、誰か持ってきた?」
タモツは顔を上げ、みんなに向かって言った。
嘘だろコイツ・・・
みんなの戸惑っている顔を見て、思わず俺は吹き出してしまったよ。
これでこそタモツなのだ。
「じゃあ私が買ってきます。間に合うか分からないので先に始めといてください」
ダグラスは挙手をして言った。
「おお・・・我が親友よ・・・」
タモツは希望の眼差しをダグラスに向けると、ダグラスは急ぎ足で街に向かった。
ダグラス、ありがとう。
俺も事前に用意する物はないかと聞いておくべきだった。
そして、彼のようなできた人間は、今後タモツと付き合っていく限り、パシリとして扱われ続けてるだろう。
俺達のチームには、すでに不の空気に満ち溢れていた・・・
さて、そうこう言っているうちに時間が経ち、鐘が鳴らされた。
俺達のチームだけ、まさかの道具無し&1名不在のまま潮干狩り大会が開催されたるのだった。




