第二章「ロティサリークエスト」2
少なくとも俺は後悔したね。
この炎の鶏は、以前戦ったブルースムージーのような緩い生物ではない。まるで元の世界の熊や虎のような、野生動物の迫力があった。
おそらく、その大きなクチバシによる攻撃の威力は、人間の身体など簡単に引き裂いてしまうに違いない。
「キィエエエエエエッ!」
炎の鶏が奇声を上げる。
しまった!
左手に松明、右手にボトル酒を持っている今の俺たちには、ベーシックダガーを構えることさえできないじゃないか!
俺とタモツがパニックを起こし、ワナワナと戸惑っている間に、炎の鶏が先頭のジャックに向かって突進する。
やばいやばいやばい!
恵まれた身長を持つジャックと炎の鶏とでは、体長の差はそこまででもないが、丸々太った鶏の重量はジャックの2倍以上あるだろう。
そして、ジャックと炎の鶏の距離が、わずか2メートルにまで迫ったその時、ジャックは背に携えた大剣を抜いた。
ジャックが大剣を振り下ろすと、炎の鶏の身体は綺麗に両断され真っ二つになった。
強えぇ・・・
チーム経験値と小銭が手に入り、俺とタモツはレベル3になった。
魔法<アル>を覚えた。
アルの効果「無属性魔法攻撃。酒気カウンターを1つ消費することで威力と度数が上がる」
なるほど、酒気カウンターの正当な使い道ができたようだな。
しかし無属性魔法ということは、まだ俺たちにトミジイを倒す術はないということになる。
「どうやらロティサリーナイトではないようだ」
ジャックは鶏の亡骸を見て呟いた。
俺たちも鶏のステータスを覗き込んだ。
レッドチキン レベル5
つまり目標はまだこの先に潜んでいる。
どうやら、危機は去っていないようだ。
俺とタモツは、右手のボトル酒を一気に飲み干し、ベーシックダガーを取り出した。
この先、酒なしで正気でいられる自信はないが、しかたない。命には変えられないからな。
現在の酒気カウンターは俺が2つでタモツは1つ。
この酒気カウンターというやつは、一口飲むことで一つ貯まるのだが、2つ目を貯めるにはかなりの量の酒を飲まなければならない。
今の俺たちでは2つが上限と言えるだろう。
「酔いがやっと回った。では参ろうか」
タモツもやっとアルコールで恐怖が麻痺してきたようだな。
俺達がさらに洞窟を進んでいくと開けた場所に出た。
「ここが最深部のようだ」
ジャックが辺りを見回して呟いた。
すると、けたたましい奇声が洞窟内に反響し、俺達の前に巨大な何かが降ってきた。
炎の鶏。
しかし、今度は兜と鎧に身を包み、先端が両刃の槍を携えている。
しかも、体長が3メートルもあるのだ。
「ロティサリーナイトだ!」
タモツが叫ぶ。
「レベル・・・じゅ、12!?」
ジャックは驚きのあまり変な声を出していた。
ロティサリーナイト レベル12
えっと、ジャックのレベルが8だから倒せないじゃないか。
ロティサリーナイトが槍をこちらに向けて突進してくる。
速いッ!
ジャックは鬼のような反応速度で大剣を取り出し、槍を受けるが、巨体のパワーが乗った衝撃に吹き飛ばされ、勢いよく壁に叩きつけられた。
推奨レベル5とは何だったのか。
そして、さすがにマズイと思ったのかタモツが動いた。
タモツがベーシックダガーを突き出すと、ダガーの前に小さな水の玉が発生し、それがだんだん大きくなっていく。
直径1メートルほどの水の球体。酒の球体だ。
そして、タモツの頭上から酒気カウンターが消費される。
「くらえ!アル!」
タモツが叫ぶと、魔法アルがロティサリーナイトに向かって射出された。
これが俺達の切り札だが、炎に酒は大丈夫か?
アルはロティサリーナイトにぶつかる前に、ボウッという音を立て発火した。
「ひできッ!」
その衝撃は凄まじく、近くにいたタモツは吹き飛ばされ、カエルのように壁に叩きつけられた。
しかし、ロティサリーナイトもその衝撃を受けて怯んでいる。
そうか、納得した。
これがロティサリーナイトの打開策ということだろう。
この好機に戦士ジャックの強力な剣撃を叩き込めば・・・
しかし、ジャックは地面に突っ伏していた。
ジャック!頼むから立ち上がってくれ!
やがてロティサリーナイトは正気を取り戻し、今度は俺に向かって突進してきた。
やるしかないか・・・
「高濃度のアルをくらえ!」
俺は苦し紛れに叫び、酒気カウンターを消費した魔法アルを発動した。
においが強い!これは90%以上のアルコール濃度だな!
そして、ロティサリーナイトの槍と魔法アルが衝突し、爆ぜた。
「うわッ!」
引火の衝撃で俺の身体が宙に舞う。
壁への激突を免れた俺がロティサリーナイトに向き直ると、ロティサリーナイトはやはり怯んでいた。
しかも奴の持っていた槍が見当たらない。
ロティサリーナイトの槍は、引火の衝撃をもろに受け、奴の後方に吹き飛んでいた。
これはチャンスだ!
「うおおおらーッ!手を伸ばせーッ!」
俺は槍まで千鳥足でダッシュして、槍に手を伸ばした。
ロティサリースピア
レア度:ユニーク
攻撃力:大 炎属性
こいつはたぶん凄え武器だ。
そして、武器を奪われたロティサリーナイトは怒り狂い、再び俺に向けて突進してきた。
だが、俺には酒気カウンターがまだ1つ残っている!
「アル!」
魔法アルがロティサリーナイトにぶつかり、激しい引火の衝撃がロティサリーナイトを襲う。
俺は地面に伏せてその衝撃を耐え切ると、横に松明を置き、両手にロティサリースピアを携えて、ロティサリーナイト目掛け突進した。
ザクッという音と共にスピアの先端がロティサリーナイトの首元に突き刺さっていく。
そして、ロティサリースピアでロティサリーナイトを串刺しにすると、まさにロティサリーチキンが完成したのだった。




