第二章「ロティサリークエスト」1
「武器欲しいよ〜」
いつもの酒場でタモツは嘆いていた。
「どうして武器が欲しいんだ?」
俺は一応聞いてみる。
「そりゃ、オメエ。強い武器があれば、もっと強い魔物と戦えるだろ?」
「なぜ強い魔物と戦いたいんだ?危険じゃないか?」
「強い防具がありゃあ問題ねえ。強い魔物と戦えば経験値だけじゃなく、良い金になるんだ。この街を出てもっとリッチな街で暮らすのよ」
今、俺たちの居るこの街は<バブルガムの街>と言って、広い街ではあるのだが、イマイチぱっとしないらしい。
それにもっと良い街に行けば、美味い酒が飲めるとタモツは言うのだ。
「まあ、良い装備を買うにも金がかかるんだがね」
「装備か。俺には必要ないな」
トミジイは自慢げに言った。
「そりゃあ、その身体じゃあ武器なんか持っても仕方ねえ」
タモツはガハハと笑ってそう言った。
「チッチッチッ、オメエら俺のステータスを見てみな」
トミジイは人差し指を立てて横に振った。
俺とタモツは言われるままに、トミジイのステータスを開いたよ。
ゴースト、レベル1。
そして、フィートに<精神体>というものがあった。
効果は「無属性攻撃のダメージを受けない」
何だこれは?
「簡単に言えばダメージを受けないと思ってくれれば良い」
トミジイは言った。
そういえば、幽霊となったトミジイには触れない。
だから、属性を持たないベーシックダガーでトミジイを倒すことはできないみたいだな。
「だがアンタ、火とか氷を食らったらお終いじゃねえか」
タモツは笑う。
そう、この世界には火や氷などの属性という概念が存在する。
これは、主に魔法という攻撃方法に付与されており、魔法ならばレベル1のトミジイを倒すことは簡単のはずだ。
魔物には耐性属性と弱点属性が存在する。
覚えておいて損はない知識だろう。
しばらくすると知らない男が話しかけてきた。
「なあ。俺はジャックという者だが、ちょっと良いか?」
ジャックは大剣を背負っている屈強な戦士だった。
「最近、特殊な受注条件のクエストがギルドに貼り出されていてな」
<ギルド>とはこの世界で、魔物を倒し生活している者たちの組合のようなものらしく、主に<クエスト>という仕事を発注してくれる。
しかし、クエストにも参加できる条件が提示されていることがあると言うのだ。
「どんな条件なんだ?」
「不思議なことに、職業が泥酔者の者がチームにいないと受注できないんだよ。泥酔者なんて職業アンタら以外に見たことがない。どうだろう俺とチームを組んでくれないか?」
「報酬は?」
「30万円。三人で分けても10万円だ。推奨レベルはレベル5。アンタらはレベルが低いようだから、戦闘は俺に任せてくれて構わない。どうだ?」
着いて行くだけで10万円。
金の価値は元の世界と大体同じ、どう考えても破格な報酬だな。
「トシ坊、やるか?」
タモツは聞いてきた。
「ああ」
もちろんだ。
<ロティサリークエスト>
内容:串の洞窟でロティサリーナイト1体の討伐。
受注条件:泥酔者がチームにいる。
推奨レベル5
串の洞窟はバブルガムの街の南に、最近生成された洞窟らしく、中にロティサリーナイトと呼ばれる魔物がいるのだとか。
ちなみに、この世界では地形の変動が頻繁に発生するため、いきなり洞窟ができたり、魔物が発生したりするらしい。
チームメンバーはレベル8の戦士ジャックをリーダーに、レベル2の泥酔者であるタモツと俺の3人。
3人中2人が泥酔者という、とてもまともとは思えないチームだが、リーダーにどうにか頑張ってもらうとしよう。
俺たちが街を出て、荒野を10分ほど歩くとそれらしき洞窟が存在した。
早速、洞窟の中に入ろうとした先頭のジャックだったが、入り口に見えない透明な壁が存在するらしく、中に入れないようだ。
「どういうことだ?」
タモツはつぶやいた。
「もしかしたら条件にある泥酔者が先に入るパターンかもしれないな」
数々のクエスト経験者であるジャックの言葉に従い、タモツも洞窟の入り口に入ろうとしたが、やはり見えない壁に阻まれる。
ジャックは首を傾げていたが、俺は入り口を調べていると、横に小さな窪みを発見した。
その窪みには酒のマークが印されている。
これは・・・よもや。
俺は見えない壁を蹴っているタモツに近づき、タモツの頭の上に手を伸ばした。
「おい!何だか分からんが返せ!」
タモツは怒鳴った。
俺はタモツの頭上にあった酒気カウンターを掴み取り、壁の窪みにはめてみた。
やはり、ピッタリだ。
タモツはハッとして、俺の行動の意味を理解し、洞窟に一歩足を踏み入れた。
どうやら、酒気カウンターを窪みにはめると、見えない壁が消える仕組みだったようで、クエストの受注に泥酔者が必須だったのはこの為だったようだな。
「おお、まさかそのためのマークだったとは」
ふふ、ジャックも頭の上に浮かぶマークを不思議に思っていたようだね。
しかし、さっそく俺たちが洞窟に入ろうとしたら、ジャックに呼び止められた。
「おいおい、これがないと真っ暗で進めないだろ」
俺たちはジャックに松明を渡された。
流石は俺たちのリーダーだ。用意が良い。
不気味なことに、洞窟内には肉の焼けるような匂いが漂っていて、何者かの奇声が反響している。
そしてその奇声は、どんどん進んでいくに連れて大きくなっていった。
「くるぞ・・・!」
ジャックは囁いた。
松明に照らされた奇声の主は、炎を纏った体長2メートルほどの鶏だった。




