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第八章「熱風」2

パンピー派だとかギガント派だとか、そんなの関係ねーよ。


今はタモツをぶっ飛ばす。


雑兵が群がる戦場で俺とタモツ、2人だけのような、一騎討ちの集中力を発揮しろ。


タモツと馬上で衝突しろ。


共に散れッ・・・!!!


・・・


いや・・・待てよ・・・


タモツが速度を緩める気配がない。

ということは何か勝算があるのか?


俺だけを一方的に倒せる作戦でもあるのか?


いや・・・


まさか、それ以前の話か・・・?


俺はすぐにスピードを緩め、魔法ホワイトアルの準備をした。


なぜなら、本当にお互いの槍が心臓を貫いて、心中するなんてことは嫌すぎるからだ。


俺は酒アーティストだった頃の経験を活かし、濁り酒の霧を発生させ、タモツとの正面衝突をギリギリで回避した。


「ふん、小賢しい」

タモツは鼻で笑った。


「タモツ、ステータスは確認したか?」

俺が問うと、タモツはどれどれと言いたげな顔をしてから俺のステータスを確認したようだ。


タモツの顔が青ざめていく。


俺とタモツのメイン職業は泥酔者で、俺がレベル14でタモツが12、つまり俺の方が強いのだ。


タモツは俺のステータスの確認もせず、レベルがあの時とほとんど変わらないと決めつけて仕掛けてきたに違いない。


もちろん生死に関わることだから、俺はタモツのステータスを確認済みだ。


「お前、どこでそこまで鍛えた・・・?」

タモツは震え声で聞いてきた。


おそらく、12までレベルを上げたタモツもそれなりの強敵と戦ってきたのだろうが、俺の方が過酷な訓練だったようだな。


やがてタモツは何かに気がつき、落ち着きを取り戻して、再び突進を仕掛けてきた。


これはまずい。

タモツは俺が衝突を避けたのを見て、相打ちになることを悟ったようだ。


俺が先に降りた結果になってしまった。


いくら甘ったれた俺達でも相手が降りると分かっているなら、命を賭けることはできる。


俺が命を賭ける勇気がないとみて、タモツは強気で命を張ってきたのだ。


タモツが刺し違える覚悟を演出し続ける限り、俺がタモツの突撃に対応する構図が続いていく。


馬上の槍での戦いは、すれ違いと馬の切り返しの繰り返しでしかない。


こんなことなら遠距離魔法の一つや二つ、習得しとくんだったぜ・・・


一方、雑兵を蹴散らしていたブライは、赤茶色の鎧を身に付けた騎兵と対峙していた。


ギガント派の将軍、バーバリである。


先端に大きな片刃が付いた巨大な槍による奇襲を、ブライはどうにか白刃取りをして離さない。


「なんだこの怪物は!?」

バーバリはブライの見た目以上に実力に驚いて怒鳴った。


それもそのはず、バーバリはナイトレベル24という人類最高クラスの職業レベルを誇っていたが、力士レベル28というわけのわからない敵がポッと湧いて出てきたのである。


バーバリ自身も体長1・9メートルであり、体格に恵まれていたが、この時のブライは馬に乗っている自分と同等の背丈に感じられるほど異彩を放っていた。


「ブオッ!」

ブライの咆哮と共に加えられた剛力により、バーバリは馬から引きづり下ろされたが、それでもバーバリは大槍を離さない。


(得物なしではとても敵わぬ・・・)

バーバリは思った。


体制を整えたバーバリも逆に剛力と歴戦の身体操作によって、刃を捕らえているブライに刃を押し込んでいた。


そして、その刃の進退がしばらく続く。


一方俺はタモツの突撃に対応し損じて、右脇腹を斧の部分で切り裂かれた。


幸い致命傷にはなっていないが、左肩の傷も相まって、痛みで意識が朦朧としてきている。


酔いもとっくに覚めてしまった。


ああ、痛え・・・


突進の威力を抑えるなら、馬の足を止めなければならないが、もう賭けに出るしかない。


俺はサブ職業をナイトから騎手へ変更した。


そして、馬の走行と切り返しの速度を逆に上げた。


今まで息を入れて体力を温存させていた分、タモツ以上の走力を確実に発揮できる。


しかし、少なくとも次の2回は攻撃を防がなくてはならないだろう。


一撃目、ここはまだ作戦を切り替えたばかりで走力が上がっていない。

ほとんどタモツの推進力だけが乗った攻撃のため、受け損じても最悪なんとかなる。


タモツの突きをうまく槍の刃で逸らし攻撃をいなすことができた。


そして次、すれ違った後の切り返しを素早くする。


すると予想以上のすれ違いの速さにタモツは驚き、次の攻撃は身の入った突きにはならなかった。


この攻撃は右腕をかすったが致命的なものではない。


しかもこの攻撃の直後、高速で馬を切り返し、タモツの背後を取った。


本来ナイトとは騎手の上位職業であるが、今の段階では騎手のレベルの方が高い。

つまり馬の扱いがうまくなり、走力、切り返しの小回りが抜群に良くなるのだ。


タモツが馬を切り返そうとした時には、俺はすでにタモツの背後にピッタリついていた。


タモツもすぐにそれに気がついて、俺から逃れようとする。


当然俺の馬の方が速い。

その後はタモツが俺の槍に貫かれるだけだ。


「おい、トシ坊。分かった降参だ」


「おい、聞いているのか?この前、殺そうとしたこと謝るから」


「おいちょっと待て!悪かった!分かったよ!はじめにこの世界に送り込まれた時、女神から酒と一緒に100万円預かってたんだ!女神もお前を無一文で異世界に放り出すのは悪いと思ったのだろう!お前が知らないと思って、こっそり貰っておいたんだ!俺が心良くお前を居候させていたのもそれが理由なんだ!それも返すよ!」


「じゃあな。タモツ」

俺はそう言って、タモツの背中を槍で貫いた。

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