第八章「熱風」1
トシミツの装備と能力
泥酔者レベル14、騎手レベル10、ナイトレベル3
<装備>
・ロティサリースピア
レア度:ユニーク
攻撃力:大 炎属性
<アクション>
・魔法アル
酒気カウンターを1つ消費することで威力と度数が上がる。
・魔法アルズ
2つのアルを放つ。
・魔法トリプアル
3つのアルを放つ。
・魔法ホワイトアル
白く濁ったアルを放つ。
・白陽鳥
世界を救った伝説の白い鳥。
・馬呼び
自在に馬を呼べる。
・スティンガー
威力のある馬上攻撃。
<フィート>
・泥酔王
泥酔状態になり全ての能力値が低下する。
・酒気メーカー
飲酒を行うたびに、トシミツの上に酒気カウンターを1つのせる。
・千鳥足ステップ
回避率+50% 命中率−20%
・馬術
馬に上手く乗れる。
ジュウホウの願いでパンピーに力を貸すべく、馬と紹介状を貰い、マカダミア村からプラム平原まで来た俺は、パンピー派の貴族に紹介状を渡して、パンピーの軍に入ることに成功した。
まあ、入りたかったわけではないんだが・・・
無数の人間が2組に分かれ睨み合い、弓矢や火の玉で牽制し合っている。
これが戦争か。
しかし、この状況を達観できている自分に驚いている。
本来なら生き死にの話なのだが、全く死ぬ気がしない。
おそらくここにいるほぼ全ての者が、俺よりもレベルが下だから恐怖心が薄いのだろう。
だが、俺はこの中でも戦場は素人だ。
とりあえず、他の騎兵の様子を見てから行動しよう。
指導者の合図までは誰も前に出たがらない。
この弾幕の中、先に出た者から集中砲火をくらうだろう。
しかし、相手側の軍から6人ほどの騎兵からなる班が先行してくるのが見えた。
その班は全てが漆黒の鎧を身にまとい、この世の者ではない雰囲気を醸し出している。
「なんだ・・・?」
パンピー軍から疑問の声が浮かび上がっていた。
やがて、その漆黒の班がパンピー軍に衝突したらしく、すごい衝撃と動揺が俺の元まで伝染してくる。
漆黒の班は1回の突撃で30人ほどのパンピー兵を薙ぎ倒すと、馬を巧みに操って方向転換し、また戻って2度目の突撃で、さらに倍の人数を叩きのめした。
予想外の打撃を受けて、当然逃げる兵や動揺してどっち付かずの兵も現れる。
これは、負けるんじゃないか?
漆黒の班の先制を皮切りに、相手の軍が進軍を開始する。
そして、漆黒の班は数度の突撃の後、軍に引っ込んでしまった。
なんだったんだあれは?
俺は思った。
あれのステータスを見た者はいるのだろうか?
もしかしたらトミジイ(幽霊)の類いではないかと。
そんな呆けたことを考えているうちに、次の波が来た。
進軍速度を超えて飛び出してくる一騎の兵。
しかもそれは明らかに俺目掛けて突進して来ていた。
「お、親父・・・!?」
馬を巧みに操り斧槍を携えて特攻する俺の父親がそこにいた。
「久しぶりだな、トシミツ!」
親父はそう言うと、斧槍で俺の目の前にいる兵士達を倒しながら、すれ違い様に斧槍を俺に目掛けて振り抜いた。
しかしそれを間一髪で屈んで避ける俺。
さらにUターンしてくる親父に、俺は馬を操って親父に相対した。
年齢的に今は落ち着いているはずの親父だが、その鬼の形相は子供の頃の怖かった親父のそれを上回っている。
「親父!やめろ!」
その言葉は親父に全く響いてはいなかった。
今度放った親父の突きはガードが間に合わず、左肩に食い込んでいく。
「グウッ!」
鋭い衝撃に馬から落ちそうになったが、どうにか持ち堪えた。
この時ほどレベルを上げていて良かったと思ったことはない。
現実世界の騎馬戦であれば、呆気なく宙に放り出されてしまっていただろう。
地に落ちればひどい場合、ひしめき合う馬の蹄の餌食になってしまう。
「死ねい!」
俺が体制を立て直している間に、親父は三度の突進を繰り出そうとしていた。
しかし、何やら様子がおかしい。
親父の外皮が塵が掃除機に吸い込まれるように消え失せ、中からタモツが姿を現した。
「なんだ?魔力切れか?」
タモツは呟いて、馬を制止した。
「トシミツさん!」
俺が振り返るとジュウホウがそこにいた。
「これは幻術です。術者は私が止めておきます」
タモツの後方にいた老人がジュウホウの念力に苦しんでいる。
そして、ブライも戦場の中心に躍り出て、拳を振り回し暴れていた。
俺はジュウホウに向かって頷くと、タモツの方に向き直る。
「久しぶりだな。タモツ」
「トシ坊。元気そうだな」
俺はタモツに正直な気持ちを伝えるべきだと思った。
「俺はあの時のことを怒っちゃいない。お前さえ良ければ、またこの世界で一緒に飲んだくれるのも悪くないと思っている」
「そうか。お前はそうでも俺はもうそんな生活はこりごりだ。俺はこの世界で力を手に入れる。それなら、お前はパンピーを裏切ってでも俺の仲間になれるのか?」
確かにジュウホウやブライの手前、パンピー派を裏切るなんてことはできない。
タモツは俺の心を表情から察した。
「ふふ、そうだろう。俺達はあの日から別々の海へ出航してしまったんだ。それぞれのしがらみの中で生きるしかない」
タモツは静かにザ・トリニティを構える。
戦場に来た時点で人を殺す覚悟はしてきた。
タモツが来るなら、そうするしかない。
俺もロティサリースピアを構えた。
そして、俺達は同時に動き出す。
動きでなんとなく分かるが、タモツのサブ職業はナイトだろう。
馬による戦闘を得意とする戦士系の上位職業だ。
ならば、互いの推進力が乗った槍の破壊力は十分な殺傷力を持つ。
死なずとも戦闘続行不可能なダメージは負うことになるはずだ。
お互いの馬が加速していく。
このままいけば間違いなく刺し違える。
だが、緩めるわけにはいかない。
今から中途半端に緩めれば、それが隙となり、相手だけを生かすだけになってしまうはずだ。
逆にむしろ捨て身になるべきだ。
その気迫でタモツを下ろす。
そう、炎の槍を構え、熱風のようにお前を攻め立ててやる。




