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第七章「タモツの野望」ラスト

テラーとはその類で有名な傭兵で、雇おうと思ったら多額の報酬を要求できるレベルだった。


暗殺は失敗したが、その点を見ると将軍バーバリがタモツを高く見積もっていたということがうかがえるだろう。


そして幻惑師とは、(まぼろし)を見せつけて相手を混乱させる魔法使い系の職業である。


幻惑師というのは世界でも一握りの職業だが、その者たちの間では相手の感情を幻術に利用できる方が効率が良く、相手の好きな物や嫌いな物などの、感情をより動かせるものを投影する術が一般的だった。


中でもテラーは恐怖を幻術に利用するのを得意としていて、相手に恐怖する者を見せることを極意としている。


しかし、タモツには恐怖する存在はいなかった。

強いていうならシラフという概念しかない。


テラーはタモツのそこが気に入っていたが、術を尽くしてやっと浮かび上がった像であるトシミツという男も少し気になっていた。


(決してタモツが恐れるような男ではない。ただ・・・)


驚くほどの軽装で炎の槍を持つ男トシミツ。

そのチグハグな面白さはこの世界で群を抜いている。


(タモツとトシミツ、コイツらは普通じゃない・・・)


興味深い男2人を目の当たりにしたテラーは城への道中、お祭り前の子供のような気分だった。


城に帰ったタモツは、まず将軍バーバリの邸に立ち寄る。


テラーはタモツが当然のように兵舎に帰って、ふんぞりかえってしまうだろうと予想していたが違った。


タモツは将軍バーバリに会って、これまでのことを謝罪していたが、まあ酷いものだった。


タモツはまず泣いた。


「やっと!騎士(ナイト)に!なったんです!うあああーッ!」


「バーバリ様のご指摘を!真摯に受け止めてえええーッ!」

地に伏して鼻水を垂らしながらのタモツの謝罪は、終始こういった具合で絶叫し邸内に響いたが、聞き取れない部分も多く、将軍バーバリやテラー、周りにいた者たちはわけがわからなかった。


(きめぇ・・・)

さすがのテラーもそう思いながら引いていた。


しかし、狂気じみた気迫だけは凄い。


やがて、将軍バーバリは口を開いた。

「わかった・・・」


おそらく、謝罪が伝わったから放たれた言葉ではないだろう。


まるでクズ男がパートナーに許されるように、タモツには土壇場で許されるほどの憎めなさがあったからだとテラーは思った。


「パンピー派の居場所が見つかった。今、我々とパンピー派の陣営が睨み合いの状態になっている。お前の班もそこに合流しろ」

バーバリの命令は、タモツとテラーを許したということを意味していた。


タモツ班は南の現場に向かい、到着した頃には、その戦いはすでに始まっていた。


プラム平原の戦い。

約5千対5千の軍が衝突する大決戦である。

この世界の戦いで過去類を見ない歴史的な一戦だった。


この大規模な戦乱に、さすがのタモツも怯んで・・・

はいなかった。


「行ってみるか・・・」

タモツの気の抜けた声と共に、参戦するタモツ班。


弓矢や火球の魔法を掻い潜った後、テラーがタモツの班全員に恐怖の像を纏わせると、タモツを筆頭に駆けた騎馬班が、パンピー軍にクレーターを開けた。


パンピーの雑兵が恐怖で混乱する中、タモツ達は長い柄の武器でそれらを薙ぎ倒していく。


この戦いの雑兵のレベルはせいぜい5ほどのものである。

タモツの素の突撃を受け止められる者はほとんどおらず、まるで序盤にベーシックダガーでスムージー狩りをする感覚に似ていた。


そして、タモツが100人斬った時、誰かが叫んだ。

「うむ、さすがだ!」


(勝ったな・・・)

テラーは思った。

しかし、安心はできないとも思った。


自分やタモツクラスの高レベル帯がそう易々とは現れないだろうが、パンピー軍の高レベル保持者が、どれほどかによってまだまだ戦況は変わるだろう。


しばらくタモツ班が前線を荒らし廻り、引いたりしている間に、やっとの思いでついてきているテラーに向かってタモツは言った。


「おいおいテラジイ。からかうなよ」

タモツが苦笑いしている。


「?」

タモツの言葉を聞いて、意味を理解できず、テラーは首を傾げた。


しかし、すぐにその言葉の意味を理解して驚いた。


雑兵の中に混じった赤い炎のゆらめき。

テラーはタモツと同じようにくたびれた服を着て馬に乗り、戦場で浮いている男を確かに見た。


「あれは・・・本物ですよ」


タモツは絶句し、トシミツが生きてこの戦場に辿り着いていることに驚いた。


なんの因果か知らないが、この戦場で、しかも敵軍で相見えることになろうとは考えもしない。


しかし、今の自分からするとトシミツなど相手になるはずはないと分かっていた。


この半年で相手にした強敵が、トシミツよりも自分を強くしているという自負がある。


「良いことを思いついた。少し遊んでやるか」

タモツはニヤリと笑い、テラーに耳打ちをした。

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