第六章「ジュウホウとブライ」ラスト
その光景を見届けた俺達3人がその場にへたり込む。
「さすがに今回は肝を冷やしましたよ」
ジュウホウは言った。
「今は良いが次からはどう止めるつもりだ?」
俺の問いにジュウホウは少し黙った。
「わかりません。とりあえず職業レベルを上げましょう。できることを増やすためです。幸いこの山にはレベル18までの魔物が出現します。半年あれば20くらいまでレベルを上げることができるでしょう。ブライの場合は高レベルのためレベル1上げるのも不可能かもしれないですが、トシミツさんの場合は伸び代がかなり残されている」
こうして俺達のレベル上げが始まり、マウンテンバードやビッグモンキーというデカい猿と戦い、疲れたら酒を飲むという生活を繰り返していく。
一月が経ち、俺はレベル6から12までレベルを上げることに成功した。
2つのアルを発射する魔法アルズ、3つのアルを発射する魔法トリプアルを覚え、さらに濁り酒の球を発射する魔法ホワイトアルまで覚えていく。
ある日、俺は戦闘中にアルやホワイトアルを生成して遊んでいると、わずかに形を変えられることに気がついた。
これは、面白いな。
そして、それ以降の俺は酒を変形させることに情熱を燃やし始める。
酒をこねて伸ばして形成する酒アートだ。
タモツにもこんな芸当はできまい。
しかし、そんなことをしているうちに、レベル上げを始めてから5ヶ月が経過した。
その時の俺の泥酔者レベルが14、騎手のレベルも10に上げ、ナイトという職業になれるようになっていた。
そして、その日は俺が村まで酒を買いに行っていた。
「兄者、もうすぐ半年経つが何か良い案は思いついたか?」
ブライは短期間で言葉を流暢に扱えるまでに成長していた。
「ううむ・・・」
ジュウホウのレベルが少し上昇しているとはいえ、今回をしのげるかどうかはギリギリと言えるだろう。
ジュウホウとブライがそんなことを話していると、急に辺りが薄暗くなった。
雲が太陽を包み込み、青紫色の電流が走る。
そして黒いクチバシが雲の中から顔を覗かせていた。
「馬鹿な・・・早すぎる・・・!」
黒陰鳥の出現周期は半年。
予定より1ヶ月も早く、ジュウホウとブライは面食らったが、すぐに追い返す準備に取り掛かる。
しかし、ジュウホウの念力とブライの剛力だけでは、黒陰鳥を押さえ込むことができない。
トシミツの酒力が欠けていたのだ。
「よりによってトシミツさんが酒を買い込む隙に現れるとは・・・」
2人の力は呆気なく黒陰鳥に押し切られてしまった。
山にいた生物は黒い影に覆われ次々に倒れて、大きな黒い鳥が山の生命を狩り尽くしていく。
その時俺は村で、山の異変に気がついた。
巨大な黒い鳥が山から村に向かってきていたのだ。
すぐに周りの人もそれに気が付き、辺りがざわついている。
「みんな、村から離れろ!」
俺は叫んだ。
村の兵士達が村人集め、村の外に誘導していく。
「トシミツさん!あなたは!?」
村の若い兵士が俺の下に駆け寄ってくる。
「ちょっと試したいことがあるんだ」
俺はそう言って親指を立てて、買った酒をがぶ飲みした。
俺はレベルアップによって、酒気カウンターを6つまで生成することが可能になっていたのだ。
今その酒気カウンターを全放出する。
「俺のアートにな」
俺はホワイトアルを6回使い、それぞれの部位に変形させた。
1つは胴体、1つは頭、2つは左翼、2つは右翼。
それを合体させるとまさに黒陰鳥と同じくらいの大きさの巨大な白い鳥が完成していた。
この白い濁り酒の鳥は太陽の光を浴びて、神々しい輝きを帯びている。
すぐに、俺はそれに乗り込むと、黒陰鳥に向かって飛び立った。
応用魔法:白陽鳥
白陽鳥が黒陰鳥にある程度まで近づくと、俺は白陽鳥を急旋回して黒陰鳥に白陽鳥を追わせる形をとった。
そして、白陽鳥の速度を落としてやると、黒陰鳥は白陽鳥に重なり、やがてピッタリと同化していく。
気がつくと俺は灰色の鳥に乗っていた。
そう、闇は光に中和され、それはただの鳥になっていた。
人畜無害なただの鳥は、背中に乗せた俺を村まで運んで行ってくれる。
村に着いた俺が飛び降りると、再び飛び去っていくただの鳥に手を振った。
しばらくすると、村人が集まってきて、そしてジュウホウとブライが村まで戻ってきた。
「アナタの独創には感服しましたよ」
ジュウホウは言った。
「アンタは村の、いや、世界の英雄だ」
ブライは言った。
村人も俺に向かって拍手と歓声を送り、俺は一言叫んだ。
「宴や!」
その夜、盛大な宴が行われた。
村の危機からの解放の宴だった。
宴の最中、ジュウホウは俺に話しかけてくる。
「帝都に行ってはどうですか?」
「帝都?」
帝都とは、人間を統べる王が住む都である。
「実は私の所に召集令状が届いています。私もブライを連れてすぐに向かわなければならないのですが、わけあって今は村を離れられません。先に行ってくれませんか?」
確かに帝都には1度行ってみた方が良いかもしれない。
「なぜ王様から呼ばれているんだ?」
「正確には王の御子息<パンピー>様からの召集です。大きな声では言えないのですが、人間勢力が二つに割れようとしています。王には長男のパンピーと次男のギガントという2人の息子がおり、跡目を争っているのです」
おいおい、これ以上面倒なことを始めるなよ。
これじゃあ魔王を倒しても平和が来ねえじゃねえか。
「私達も用が済んだらすぐに向かいます。どうか、パンピー様に力を貸して上げてください」




