第六章「ジュウホウとブライ」1
トシミツの装備と能力
<装備>
・ロティサリースピア
レア度:ユニーク
攻撃力:大 炎属性
<アクション>
・魔法アル
酒気カウンターを1つ消費することで威力と度数が上がる。
<フィート>
・泥酔王
泥酔状態になり全ての能力値が低下する。
・酒気メーカー
飲酒を行うたびに、トシミツの上に酒気カウンターを1つのせる。
・千鳥足ステップ
回避率+50% 命中率−20%
「さ、酒・・・」
俺は無人の荒野を2日ほど彷徨っていた。
逃げる時に使った馬は、タモツとの戦闘で負った足の傷が致命的なものにはなっていない様だったのと、疲れ果てていたので可哀想だったから逃してやった。
バブルガムの街は滅び、帰る所を失って、これからどう生きていけば良いのか分からない。
だがそんなことよりも、今は飢えと、酒に対する飢えを解消しなければならなかった。
俺はロティサリースピアを杖にして歩き、スムージーが現れたら、それで薙いで倒し、また彷徨うことを繰り返していた。
そして、ついにこの荒野で人と出会った。
2人組の男で槍で武装している。
「何だ貴様!山賊の仲間か!?」
男達が槍をこちらに向けて叫ぶ。
「さ、酒・・・」
俺は久しぶりに出会った人間に安堵して、気を失い、その場で前のめりに倒れ込んだ。
気がつくと俺は石畳の上に転がっていた。
鉄の柵で仕切られており、牢屋であることが理解できる。
「うう・・・」
「おお気がついたか」
俺の呻き声を聞いて、柵の外にいる番兵らしき男が話しかけてきた。
番兵は柵の隙間から、ボロ雑巾なのかパンなのか分からない物体を俺に差し出してくる。
「食いな」
どうやら食い物の様だ。
俺はすぐさまそれを平らげるとこう言った。
「さ、酒・・・」
「どうやら自分の置かれている状況が分かってないらしい」
番兵はそう呟いてそっぽを向いた。
「さ、酒・・・」
俺の再び放ったこの言葉が、その場で虚しく響き渡る。
しばらくすると、足音の様なものが聞こえてきて、俺の居る牢の前に武装した2人の男が立ち止まった。
「お前、ジュウホウ様がお呼びだ。出ろ」
その男達は牢の扉を開けると、俺を抱え起こし、外に連れ出した。
ここは村だった。
決して大きくない集落で、道沿いに畑や木造の建物が並んでいる。
「さ、酒・・・」
「ええい、黙れ!」
男達は俺を抱えながら、その中でも立派な建物の中に入っていった。
その建物の中に、1人の男が立っていた。
その男はカタツムリの様な帽子を被り、髭を胸の辺りまで伸ばしている。
おそらくジュウホウとはコイツの様だ。
「ジュウホウ様、連れて参りました」
男達は俺をジュウホウの前に転がす。
「ご苦労」
ジュウホウはそう言って、男達を下がらせた。
「さ、酒・・・」
「なるほど。おい、この方に酒を用意してやれ」
俺は用意された酒を飲み干すと、酒気カウンターを浮かべ、正気を取り戻した。
「ほう、面白い」
「ここは・・・?」
「ここは山の中にある村<マカダミアの村>だ」
どこだ・・・?
俺がほうけた顔をしていると、ジュウホウは話始めた。
「この村は今、2つの危機に脅かされている。アナタにそれを解決して頂きたいのだが、どうだ?」
「なぜ俺に・・・?」
「私にはおおよその未来が見える。この世界に勇者が現れると・・・。しかし、それはアナタではないかもしれない。でも、アナタが特殊な人間だということはわかる」
また勇者か・・・
俺はジュウホウのステータスを覗いた。
ジュウホウ 預言者レベル12
やはり預言者か。胡散臭い。
しかし、コイツ強いな。
「酒の恩がある。協力しよう」
「ふふ、分かりやすい方だ。では、まず東の山に住むと言われる<赤鬼>を倒しに行きましょう。この鬼はたびたび村付近に出没して畑を荒らし、女や子供を驚かすらしいのです」
なるほど、そんなに大したことはなさそうだ。
「この件にそこまで人員を割くことはできませんから、捜索にはトシミツさんと私、そして他2名で向かいましょう」
こうして俺は、ジュウホウ達と東の山の中に入って行った。
山にいた魔物は、マウンテンバードという人間サイズの鳥であり、レベルが5〜7付近だったが、ジュウホウの指から放つビームによって簡単に薙ぎ倒されていく。
どうでも良いかもしれないが、この戦いの中で俺のレベルは6に上昇した。
「ジュウホウさん、アンタそんなに強いんだったら、1人で解決したらどうなんだ?」
華麗なる戦闘を見て、俺は冗談混じりに言った。
「確かに、この赤鬼の件は私1人でも解決できるかもしれません。ですが、アナタのチカラはいずれ必要になる」
ジュウホウの真剣な眼差しは遠くを見つめていた。
数時間の関わりだが、俺の見る限りこの男は悪い人間ではない。
私利私欲ではなく、何か真っ当な理由で行動する芯のある男の様だ。
ジュウホウに付いて山をしばらく歩くと、大きな洞穴の前に着いた。
そして、その中から身長約2メートルで赤い身体をした半裸の大男がノッソリと姿を現す。
その大男はかなり痩せ細っている。
「あ、あう・・・」
俺達を見てその大男は虚ろにそう呟いた。
ジュウホウの手下の男達は、ジュウホウの前に立ち、大男に向かって槍を構える。
これはギリギリ人間じゃないのか?
俺がそう考えているとジュウホウは叫んだ。
「お前はまさか、ブライ!ブライなのか!?」
「ブライ・・・。おで、ブライ・・・」
ジュウホウの言葉を聞いて、大男はまた虚ろな表情でそう呟く。
「俺が分からないのか?ブライ!ああ、我が弟よ!無理もない!幼き日に生き別れた弟よ!そろそろ会える気がしていたんだ!」
ジュウホウは大男に駆け寄るとしがみつき、泣き崩れた。
「あう・・・あ、兄者・・・」
ブライは虚ろな表情で答えた。




