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第四章「混迷の森」ラスト

俺とタモツは戦慄した。


「あのジャックが・・・」


レベル9のジャックが倒されたということは、魔人はレベル9以上の存在かもしれない。


もちろんまだ断定はできないが、そのように想定しておいた方がいいだろう。


クライヴが死んだ。


また、俺達の中にどんよりとした空気が漂う。


俺とタモツは高品質な槍を、タジカはベーシックダガーを構え、キリングを誘導して、さらに奥に進んでいく。


キラキラとした緑色の淡い光源が増え、やがて開けた場所を見つけた。


その空間の真ん中には、火山のような台座から光源がチョロチョロと溢れ出している。


そして、その隣に対峙する者達がいた。


「あれは、ジャンか・・・?」

俺は呟いた。


もう1人は黒い鎧から薄紫色の肌を覗かせ、右手には黄色い長剣を携えている。


これが魔人なのか?


魔人は剣を構え、ジャンに飛びかかる。


「魔法マジックシールド!」

ジャンが手を伸ばし叫ぶと、ジャンの身体が光の半球に覆われていく。


剣が激しく光の壁に衝突し、ジャンの身体ごと真っ二つに斬り裂いてしまった。


「う・・・!」


魔人は俺達を認めると口を開いた。

「ふふ、まさかまとまって動ける者が、バブルガムの街にいようとは」


「アンタ、魔人だな?」


「いかにも。俺は<魔将サイズ>様のしもべ<コールド>。お前達は?」


「俺達はバブルガムの街から、混迷の森を占拠するため派遣された者だ。お前の都合もよく分かっているが、引き下がってはくれないだろうか?」


「ダメだ。敬意は払うが、死んでもらう」

コールドは俺に向かって、剣を振り上げ突進してきた。


ここで状況を整理しよう。

今の会話の途中で、俺はコールドのステータスを見ておいた。


コールド 魔剣士レベル14


確かに強い。

だが奴は混迷状態になっていないのだ。

その理由は奴の持っている剣にある。


標の剣

レア度:レア

攻撃力:中 装備者は混迷状態にならない


なるほど、奴らは対策して来ているというわけだな。

だが、そこが大きな隙となる。


「タモツッ!」

俺はタモツに合図を送り、コールドに向けて槍を構えた。


魔法アル!


コールドの身体を槍先から発生した酒球が包み込んでいく。


「何だ?この魔法はッ!?」

コールドは酒に溺れながら言った。


もしかしたら、この世界には存在しない魔法かもしれないな。


「クッ!これはまさかアルコールか!?」

コールドが酒球を通過すると、今度はタモツが放った酒球がコールドを包み込む。


苦しみながらも、それを切り抜けたコールドは俺に向かって剣を振り下ろした。


フィート<千鳥足ステップ>

回避率+50% 命中率−20%


これは潮干狩りの時に習得したフィートだ。


もし、コールドが泥酔状態の場合。

コールドの攻撃の命中率が下がっているから、俺の上昇した回避率を計算に入れると、高確率でこの攻撃は外れることになる。


俺はコールドの斬撃をよろめいてかわした。


そして、俺達には必勝の策がある。


コールドが剣を空振った先には、大蟹のキリングが待ち構えていたのだ。


キリングの種はアサシンクラブである。

そのハサミは砂の中で鋭利に尖れていると言われている。


キリングの大きな右鋏脚がコールドに襲いかかった。


ハサミアタック!

コールドはハサミアタックを剣で受け止めたが、その衝撃で後方に吹き飛ばされる。


「うおおらあああッ!」

俺とタモツはコールドの両側から千鳥足で接近し、ロティサリースピアとザ・トリニティで挟撃した。


そして、俺の攻撃は外れ、タモツの攻撃は入る。


「グワッ!」

コールドは呻いて、その場から飛び退き、膝をついた。


決まった。

このフォーメーションは、道中、あらかじめ決めておいた作戦で、俺達はこの作戦が成功することに賭けていたから、逃げずに戦う選択を選べたのだ。


すると、向こう側からフードを被った男が歩いてくる。

「コールド殿。ずいぶん苦戦しておられますね」


「ダグラス殿か・・・助かった」

コールドは呟き、フードの男と入れ替わりで去っていった。


ダグラス?


森の光に照らされた顔をよく見ると、潮干狩りで共に戦った、あのダグラスだった。


「ダグラス、なぜここに?」


「トシミツさん、タモツさん、こんにちは。私、実は人間でありながら、魔将サイズ様のお手伝いをしておりまして。実はアナタ達の実力を観せてもらっていたのですよ」

ダグラスは人間の裏切り者だったようだ。


「おい、ダグラス!お前、俺達に勝てると思ってんのか?」

タモツが挑発する。


「アナタの方こそ、私のステータスを見てからケンカを売った方が良いですよ」


ダグラス 占い師レベル25


う、勝てるわけがない・・・


あの時のダグラスのステータスは、あえて練度の低い魔法使いに転職していたからだったようだ。


「このステータスでは、さすがに街中で浮いてしまいますからねえ」

ダグラスはニッコリと笑った。


「ふふ、この世界が魔人のものになってしまうのは、ほぼ確定していました。なぜなら現在、魔王様は寿命という制約に苦しんではいますが、さらなる天才である魔将サイズ様が後継者になることが確定しているからです」

そう言い終えるとダグラスはムッとした。


「こう見えても私、結構すごいんですよ。占いで未来のことがわかるんです。しかし、見落としているはずはないと思っていたのですが・・・実は人間側に勇者と呼ばれる者が1人か2人現れるというのです。それによって最近はこの世界がまたわからなくなってしまいました。だから、この混迷の森を我々に譲って頂けませんか?」


いや、許可など取る必要はない。

ダグラスほどの力があれば、俺達を倒し、何ならバブルガムの街を占拠することも可能なはずだ。


俺達はどうにか命乞いをするしかないのだ。


突然、ダグラスはタジカの方を指さすと、指先からビームを放ち、ビームがタジカの眉間を貫通した。


そして、同じようにキリングも倒されてしまう。


「いや、アナタ達を殺すことはわけあってできないのですよ。さっき、実力を見させてもらったと言ったでしょう?実はアナタ達を監視していたのです。魔将サイズ様は好奇心旺盛なお方。アナタ達のような希少な人間に手を出すなとの命令です。しかし、抵抗されては面倒ですからねえ。もし、これから言う通りにしてくださるなら1億円差し上げますよ」

ダグラスは手に持っていた箱に入った金をちらつかせる。


俺達を見逃すだけでなく、1億円をよこすだと?

何を企んでいるんだコイツは・・・


「魔人の隊をバブルガムの街に向かわせました。アナタ達が動かないでいてくれたら、街の人間を絶やすことができるのです。しかし、アナタ達がこのことを先に街に報せれば、街の人間は生き延びてしまう。だから、どうかこのお金を受け取り、ここを動かないでいてもらいたいのです」


ダグラスは俺達に、人の命か金か、どちらか選べと言っているのだ。

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