第四章「混迷の森」1
トシミツの能力
<アクション>
・魔法アル
酒気カウンターを1つ消費することで威力と度数が上がる。
<フィート>
・泥酔王
泥酔状態になり全ての能力値が低下する。
・酒気メーカー
飲酒を行うたびに、トシミツの上に酒気カウンターを1つのせる。
・千鳥足ステップ
この世界では3つの種族が勢力争いを行っている。
一つは帝国率いる<人間>。
一つは魔王率いる<魔人>。
そして、一つは死んだ人間が魔人によって復活させられた存在<死者>だ。
現在は人間側が広く種族を繁栄させ多く領土を保持しているが、何が起こるか分からないこの世界ではその勢力図が、何時入れ替わってもおかしくはないのである。
まあ、以上のことを今の俺が考えたところで、何がどう変わるわけでもないんだがね。
実は以前に冒険したバブルガムの街の南に存在する、串の洞窟が最近消滅したらしい。
これ自体は珍しいことではなく、小規模の自然物は地形の変動により突然生成され、やがて自然に帰っていくのだ。
そして、どうやらその周辺に<混迷の森>というものが出現したらしい。
問題なのは、この混迷の森に数多くの資源が眠っており、特に魔人に有益な資源だと観測されたようだ。
報告を受けた帝国はすぐに精鋭を送ったようだが、こちらに来るまでに、どうしても10日はかかる。
魔人達にここが押さえられると、人類滅亡に傾きかねないということで、バブルガムの街から先に精鋭を送れとの命令がギルドに下されたようだ。
この場合、街の中でレベルが上位の者に緊急クエストとして通達があるのだが、断った場合は100万円くらいの罰金が課せられる。
そのかわり、逆にクエストに参加した場合は100万円くらいの報酬が約束されているのだ。
お国の危機だ。仕方ないことだろう。
そして最も問題なのは、俺とタモツがすでにレベル上位に入っているということだ。
タモツはまあ、受けるだろう。
この一件で借金を全額返済することができるからな。
だが、俺の場合は・・・
いくらなんでもあんまりではないかね?
どうしようもないから、俺とタモツはギルドに向かい、他の参加者達もギルドに集結した。
「そしてこれがバブルガムの街が誇る10人の精鋭達だ」
ジャック レベル9 戦士
ジャン レベル8 魔法使い
クライヴ レベル7 戦士
リンリー レベル6 格闘家
キリング レベル6 アサシンクラブJr
トシミツ レベル5 泥酔者
タモツ レベル5 泥酔者
ノエル レベル5 戦士
タジカ レベル5 善良な民間人
シジミ レベル4 サベージクリーナー
なんか、変なのが混じってないか?
「キリングとシジミは住民登録してある。だから大丈夫だ。そして、今回の緊急クエストはこのようになっている」
ギルド長は冷静な口調で話し、クエスト用紙を広げた。
<混迷の森の死守>緊急
内容:混迷の森の防衛(期間不明)
受注条件:バブルガムの街のレベル上位
推奨レベル?
「アナタは我々に死ねと申すのか?」
ジャックはギルド長に尋ねた。
「正直どうなるか検討もつかん。混迷の森は特殊な魔力が満ちていて方向感覚を狂わす、さらに魔物も多く棲みついており、魔人が攻め込んでくる可能性も高い。だが、君達にしか頼めないんだ」
ギルド長が深々と頭を下げる。
するとあの男が口を開いた。
「おいおい、ジャック。まさか怖気ついたのか?」
タモツがジャックを挑発する。
「何ッ!?」
ジャックはタモツを睨みつけた。
ジャックは潮干狩り大会で、完全にタモツの恨みを買ったらしい。
逆恨みにもほどがあるよな。
「なんだアンタ。潮干狩りで暴れてたおっさんか」
金髪の男前クライヴが言った。
「ジャックも別に行かないとは言ってないわ。帝国の命令は絶対だもの」
チャイナ風お団子頭リンリーも会話に加わる。
「ここでウダウダやってる時間はないんじゃないか?魔人に攻められる前に、森にいる魔物をできるだけ片付けておいた方が良いだろう」
話が進まないので、俺も痺れを切らし発言した。
「ああ、行こう。何とかなるさ」
どうやら、ジャックは俺の意見に賛成のようだ。
「ありがとう。食料は運ばせてある。現地で受け取ってくれ。それでは頼んだぞ」
ジャックを筆頭に俺たちは混迷の森に向かおうとしたが、酒を買い込むのだけは忘れてはならない。
俺はみんなを待たせて酒を買いに行き、俺とタモツだけパンパンに膨れ上がったビニール袋を右手に、みんなと合流した。
完全武装した者達が歩く中に、2人の不審者、その後を体長2メートルの蟹と3メートルの貝がついてくる。
何も知らない人は何事かと思っただろうね。
森に向かう道中、俺は少し気になることがあったのでみんなに聞いてみた。
「何で魔物が住民登録してるんだ?」
「不思議なことに、魔物の中には人間を襲わないものもいる。彼等は普段、塩水公園の海水池で暮らしているんだよ」
平凡な男タジカが説明してくれた。
「魔人の中に人間の味方をする者がいれば、人間の中にも魔人の味方をする者がいる。その意志が受け入れられた場合、相手種族に寝返ることも稀にあるようだ」
紫色のローブを着たジャンが言う。
「いまさらだが、魔人と魔物の何が違うんだ?」
「魔人と魔物は同じように生まれた生物だが、魔人は知的で姿が人間に似ており、魔物はより野生的な存在だ。人間と動物の関係と似ているだろう」
なるほど、またこの世界で賢くなれた気がする。
「着いたぞ」
ジャックが足を止めた。
混迷の森、それは歪な木々が密集して薄暗く、しかし所々淡い緑色に発光して怪しい空気が漂う場所だった。




