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異世界女子野球  作者: 秋山如雪
第1章 異世界で野球?
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第1話 異世界は突然に

※本作品を、すべての千葉ロッテマリーンズファンに捧げます。

※もちろんロッテファン以外の野球ファンも大歓迎です。

※この物語はフィクションです。非常に似ている名前の人物が出てきますが、実在の人物とは関係がありません。ただし、もちろんリスペクトはしています。

※基本的に「ギャグ路線」なので、実際の野球から離れている部分があることをご了承下さい。


 日曜日の昼下がりの東京湾は穏やかな風に吹かれていた。


 千葉県千葉市美浜(みはま)区。

 稲毛いなげ海浜公園にある、野球場では、その日、とある高校の女子野球部が練習試合をしていた。


 野球熱が盛んになったとは言え、「女子」の野球人口は少なく、男子のようにメジャーではないため、傍目はためにはいまいち盛り上がりに欠けるように見えるかもしれないが、彼女たちは至って真剣だった。


 千葉県立美浜マリン高校女子硬式野球部。


 メンバーはたったの10人しかいない。


 しかも、監督がかなりの放任主義のため、彼女たちは自分たちで勝手に練習試合の相手を探して、練習試合を行う有様だった。


 その日、相手になってくれたのは、同じ千葉県でも東京寄りにある、松戸市にある松戸総合高校だった。珍しく、その高校にも女子硬式野球部があったからだ。

 女子の場合、体力的な面があるため、どうしても男子との試合は出来ない。

 そのため、練習相手となる女子チームを見つけるのでも大変だったのだ。


 マウンドに上がっているのは、短髪の少女で、右投右打の2年生のエース。

 名前を黒木くろき知代(ともよ)という。

 スタミナに自信を持ち、スライダー、スローカーブ、そしてフォークまで操る、美浜マリンの実質的なエース。常に「闘志あふれる熱い」投球をするハートが熱い女子だった。着いたあだ名が「魂のエース」。


 その彼女の相手をする、キャッチャーは大柄な体躯の1年生だった。

 1年生とは思えない、そして女子にしては大柄な170センチはある女性で、右投右打。パスボールを滅多にしない、堅実なキャッチャーで、肩も強いし、チャンスにも強いバッターだった。

 里崎さとざき里美さとみ。その名前からあだ名は「サトサト」。ムードメーカー的な明るい少女だった。


 一塁は、左投左打のヒットメーカーが守っている。

 その名を福浦ふくうらなごみ。人の打撃フォームを真似するのが得意で、「天才」と称される、バッティングセンスを持っていた。ショートカットで丸顔の少女で、2年生。そして実家が金持ちというお嬢様だった。


 二塁手は、右投右打。右打ちに定評がある、2年生で、ほり美幸みゆき。中距離バッターで、実は釣りが趣味という、意外な一面を持つ。身長160センチほどのセミロングの女性。アウトドアの趣味を持つ割には、穏やかな性格の丁寧な口調の女性だった。


 遊撃手は、右投左打。女性らしいというべきか、身長が152センチ程度しかない、チーム内で最も小柄な少女。2年生の、小坂こさか琴美ことみがグローブを構える。

 彼女の守備範囲はとてつもなく広く、ショートが本職のはずが、いつの間にかセカンドやサード方向に飛んだボールまで処理しては、一塁に華麗に投げている。守備の天才だった。また、足も速く、チームでは1番を打っていた。

 性格は、無口だが、たまに鋭い一言を発する。


 三塁には、チームで唯一、眼鏡をかけているのが特徴的で、温厚そうなちょいポチャ体型の右投右打の女性、3年生の初芝はつしば清美きよみが入る。

 一見、温厚そうで、闘争心がないようにも見えるが、実は人一倍練習をこなし、常に全力でプレーをする、チームの柱にして、唯一の3年生だった。


 外野手のうち、左翼手レフトには、茶髪の派手な髪の少女が入っている。外野守備が上手く、肩も強いが、いかんせん、「競馬好き」という問題点があり、一見すると、不良のように見える少女だった。名前は大塚あかり。右投右打。1年生に見えない、どこか大人びて見える1年生だった。


 同じく、中堅手センターには、長髪の女性が入っている。右投右打。身長160センチと平均的だが、足が速く、守備範囲が広い上、強肩で、その肩は「レーザービーム」と称されていた。

 彼女もまだ1年生の、大村おおむら三葉みつばという。

 一見すると、明るく真面目に見える。流し打ちが上手いことに定評があった。


 そして、同じく右翼手ライトには、特徴的なドレッドヘアーの女性が入っている。右投左打、元・不良の2年生、諸積もろづみつかさだ。

 守備や走塁に自信があり、中でもヘッドスライディングしながら打球をキャッチするという、離れわざをやってのける。あだ名は「モロ先輩」とか「モロ」。


 ベンチには、今日も放任主義の監督の姿はなかったが、代わりにメガホンから声を上げる女性が一人。

 右投右打、控えの1年生ピッチャー、小林こばやしみやびだった。ショートカットに、身長164センチほど。速いストレートと、スライダー、シュートが持ち球だが、どちらかというと球威で押すタイプだ。


 その日は、6月末の穏やかな昼下がり。


 梅雨時で、蒸し暑くはあったが、雨は降っておらず、ある意味で「野球日和」だったのだ。


 ところが。


―キーン!―


 相手の松戸総合高校の4番バッターが放った打球が高々と頭上に上がる。

 センターの大村がグローブを構えた。


 次の瞬間。


―ピカッ!―


 あれだけ青く輝き、雲がゆったりとたゆたう、穏やかな空に稲光が走っていた。

 同時に、彼女たちが野球をしていた、グラウンドだけが大きく「揺れて」いた。


「地震か!」

 ムードメーカーの、明るい性格の里崎が声を上げ、キャッチャーマスクを外す。


 しかし。

「キャー!」

 対戦相手の松戸総合高校の女子野球部員たちは、早々と試合を放棄して、足早にグラウンドから去って行った。


 一方、呆気あっけに取られて、同時にどこか「肝が据わっている」彼女たち、美浜マリン高校の女子野球部員たちは逃げずに、その場で状況を見定めようとしていた。


 残された彼女たちの頭上から、雲が沸き上がり、それがどんどん大きくなり、やがて、彼女たちを狙うかのように、雲の塊が地上に降りてきて、そして彼女たちは包まれていた。


 晴れ間が広がっていた天気は嘘のように雲に覆われ、視界が遮られる中、彼女たちはマウンドに集まっていた。


「何が起こってるんだ?」

「マジで、訳わかんねえ」

「どうなってんだ、キャプテン」

「サトサト、助けて」


 メンバーが口々に不平不満を述べ、現状がどうなっているか全くわからないまま、次第に雲は晴れて行く。

 やがて、揺れていた地面も穏やかになり、視界が広がっていく。


 そこにあったのは、巨大で、見たこともない「平原」だった。


 一瞬、彼女たちは、

(北海道にでも飛ばされた)

 と勘違いしていた。


 しかし、そこに広がっていたのは、見たこともない木々や小動物たちであった。


 そして、彼女たちからわずか50mほど先の広場では。


「ヘイヘイ!」

「バッチコーイ」

「ナイバッチ!」


 野球の試合が行われていた。


 ただし、野球というスポーツを実施していた「物」が問題だった。


 それは明らかに「人間」ではなかったからだ。


 一方は、身長が1mから1.5mほどしかない上に、筋肉質で、髭を生やしている。

 もう一方も、同じく小振りで身長が150㎝程度しかないが、高い鼻を持ち、そして手にはバットではなく棍棒を持っていた。


 この小人こびとのような両者がそれぞれ9人ずつ揃い、野球をしていた。


 彼女たちは、呆気に取られ、近づいて試合を眺めることにした。

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