時計塔から見下ろす生徒
その学校には時計塔がある。
時計塔の大きな時計の下には窓があり、偶に時計塔に登った生徒がそこから学校の中や周辺を眺めている事があった。
今も1人の生徒が時計塔の窓から、眼下で繰り広げられている惨劇を見つめていた。
街の墓場に埋葬されていた人たちの遺体が蘇り、生者に襲い掛かったのだ。
否、墓場の遺体だけでは無い、殺されて川や下水に捨てられたのであろう、川の中からやマンホールを押し開けて下水からも死者が這い出て来る。
人々は逃げ惑った。
学校の教師たちは校門を閉め、死者の侵入を防ごうとする。
だが、蘇り生者に襲い掛っている死者たちは、映画の中のオーソドックスなゾンビのようにノロノロと歩く物では無かった。
逃げ惑う生者を走って追いかけ、閉め切られた校門を飛び越えて学校内に侵入して来る。
ゾンビと違うのはもう1つあった。
生者を襲ってもその身体に齧り付く事は無く、生きているのが憎いのか、捕まえた生者の身体を引き裂き握り潰し殺すだけ。
時計塔の窓から惨劇を見つめる生徒を虐め、時計塔に閉じ込めた虐めっ子の生徒が死者に捕まりその身体を引き裂かれ、虐めっ子が暴力を振るうのを見て見ぬふりしていた教師がその身体を握り潰される。
時計塔の窓の剥き出しの天井の梁で首を吊っている生徒は、虐めっ子や教師の身体が裂かれ握り潰されるのを見ながらケラケラと笑っていた。