第七話 装備品と調合スキル
ギルドを出た俺は武器調達の為に武器屋にやって来た。
武器屋というだけあってなかなか圧巻だ。
RPGゲームで見たことがあるような剣や盾が壁一面にズラリと並んでいる。
男心がくすぐられるな。
さて、武器の購入に来たのはいいが慎重に選ばなければならない。
装備品という物は、使い方一つで生死を分ける。
素手の相手に丸腰で戦う馬鹿はいない。
生き残るためならばより質のいい得物を求め少しでも生存率を上げるべき。
刃物や拳銃を持った強盗に素手で立ち向かう警官はいないってことだ。
今日は兎狩りだが、今後依頼をこなしていくことを考えたら、なるべく質が良く耐久性があるものがいい。
予算銀貨2枚以内でだ。
とりあえず武具を眺め、吟味していく。
ここに来てからまともに使った武器は、短剣と竹。
先程までは剣がまともに使えるとは思わないと考えていたが、やはり刃渡りの長い剣の方が良いだろう。
短剣だとわざわざ相手の間合いギリギリまで詰めて攻撃しなければならない。
リーチの長い剣ならばその弱点も無くせるし殺傷能力も高い。
今後も竹で戦うってわけにはいかないしな。
おっ、これなんかどうだ。
そこそこ長めの剣。お値段銀貨1枚。
軽く振ってみる。
少し重いが振れないほどじゃない、コレにしよう。
即断即決。
すぐさま店主らしき人物に声をかけ、購入する。
店主は俺に防具はどうするのかと聞いてきた。
防具か、考えてなかったな。武器のことで頭がいっぱいだった。
俺の振る舞いを見ていたらしく、明らかな素人だと思っていたらしい。
店主は素人は武器より防具が大事だと教えてくれた。
どいつもこいつも上等な武器を欲しがるが、大枚はたいて買うならまず命を守る防具に金をかけるべきだと。
なるほどな。最もな意見だ、死んだら元も子もない。
俺は素直に店主の意見を聞き入れ、銀貨1枚の胸当てを購入する。
そして更衣室でそのまま装備。うん、悪くない。
腰には鞘に収めた長剣。
胴体には胸当て。
の下は、未だ着ている部屋着……
いい加減服も購入した方がいいかもしれないな。
今後も冒険者を続けるなら確実に目立ってしまう。
いや、もう町の人間にはかなり見られているし今更か。
依頼報酬が入ったらまた買い物に行こう。
店主に礼を言って武器屋を後にした。
いい買い物ができた。これで武器と防具は揃った、いざホーンラビット討伐!…とはいかない。
その前にやっておかなければならないことがある。
少し歩いて人気のない場所を見つけた。ここならいいだろう。
やっておかなければならないこと。
それは一昨日取得した『火魔法』のスキルについて。
そして所持品の整理と確認だ。
まずは『火魔法』についてだ。
火魔法なんてネーミングからして火を操る魔法だろうからな。
この世界での俺のスキルや魔法とやらを他の人間も扱えるかどうかはわからない。
今後の為にどんな力かを確認しておかなければならないが、万が一、この力が一般的に流通していない場合も考えたら人目のつかない場所で試してみるしかない。
まずは詠唱してみる。
「火魔法」
手のひらから火が出た。不思議と熱くはない。
火傷なんかの心配はなさそうだが…
色々考えているうちに火が消えてしまった。
ある程度時間が経つと消滅するようだ。
もう一度発動して今度は振りかぶって投げてみる。
あのゴブリンがやっていた真似だ。
投げられはしたが、奴がやっていたような球体の火球ではないからかヒョロヒョロの火が少し宙を浮き、弾けて消えてしまった。
やり方が違うのか?しかし、何度か試してみるものの結果は同じだった。
もっと練習が必要なのか、なにか条件があるのか。
定かではないが何にせよ今はできそうにないな。
今度時間がある時にもっと試してみることにしよう。
現状、道具などを使わずに自力で火を使える手段が増えたと考えておけば良いだろう。
火魔法についてはこれでとりあえずいいとして。
次は所持品の整理と確認をしなければならない。
実は町に到着してからはほとんどアイテムボックスは開いていない。緊急時等に生死をわけるかもしれない道具の確認はしておかなければ。
とりあえず、今ボックスに入っていたのは
【アイテムボックス】
小石×1
薬草×50
干し肉×8
毒消し草×3
火の秘薬×8
竹の水筒(竹水300ml)×2
竹の水筒(空)×1
布×1
竹×5
木材×10
短剣×3
棍棒×2
手斧×3
とりあえず所持品はこんなところか。
野営の際に襲撃してきたゴブリン共から回収した物資はあの時は片っ端からボックスに入れたからな。
とりあえず薬草や干し肉、秘薬の数が少し増えて。
棍棒や短剣、手斧なんかも奪ったんだったな。
特にめぼしい物もないが…使わないという程いらないわけでもないからな。
まだこのボックスの大きさも把握していない。どれだけ入るかの検証も必要なので、要らない道具は処分すべきだが。
よく考えたら火の秘薬はもう必要ないか?
火魔法があればいちいち秘薬を火種にせずとも焚き火を起こせるわけだし。
とりあえず火の秘薬は処分対象として、考えておこう。
……ん?
今まで気にとめていなかったが1部のアイテム欄の表示に+の表示がある。
薬草欄の横にある+をタッチしてみる。
【薬草を調合可能です】
↓
【調合しますか?】
↓
【YES】or【NO】
YESを選択してみる。
【ポーション(小)を生成しました】
おお、こいつは便利だ。俺のアイテムボックスにこんな付与効果があったのか。
薬草の数が5個減っている。
つまり薬草×5=ポーション×1ってことか。
試しに右手の火傷の傷にかけてみる。
傷が塞がり出した。痛みもかなりひいた気がする。
薬草の効果はまだ試していなかったがこれなら今後はポーションを使用する方がいいかもしれないな。
残りの薬草もポーション9個に調合しておく。
思わぬ収穫を得た。アイテムボックスにこんな機能があるなら依頼の度に薬草を集めておこう。
今度この調合も色々試してみることにする。
よし。スキルと道具の確認は済んだ。
いよいよ討伐依頼に向かうとしよう。
まずは今日の宿代を稼ぐのだ。夜は屋根のある場所で休みたいしな。
まずは城門へと向かうことにする。