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第三十一話 記憶の扉

暗い……とても暗い闇の中を私は漂っていました。


何も見えず、何も聞こえない真っ暗な空間をただ漂い続けていました。どれだけの時間そうしていたのかすらもう覚えてはいません。時間の概念すら感じられない世界……その空間をただひたすらに彷徨っていた私は、不意に誰かに呼ばれたような気がしました。


それが誰なのかは思い出せないけれど……その声にはひどく懐かしさを覚えました。


だけどおそらくその声の主は私にとってとても大切な人で……


だからこそ思い出さなければならない。


そんなことをぼんやりと考えていると


『目覚めたようですね』


突如として聞こえてくる女性の声。辺りを見渡しても誰もいません。視界に映るのは相変わらず暗い空間だけ。ですが確かに声が聞こえました。


《貴方は一体……》


私は困惑しながらも問いかけます。するとまたしても闇の中から声が聞こえてきます。


『私はあなた。あなたは私』


意味の分からない台詞に私は思わず首を傾げます。


《それは一体どういうことでしょうか?》


私が声にそう聞き返すと、声の主はクスクスと笑い出しました。


『まだ思い出せませんか?』


声はさも楽しげに話しかけてきますが、私にはなんのことか全く理解できません。そんな私の様子を察したのか、声は続けて言いました。


『ではヒントを与えましょう。それはかつてあなたが封じた想い。閉ざした記憶』


私が封じた……それは間違いなく私の過去に関わるものでしょう。


『そろそろ頃合いです。私はずっと待っていました。いつかまたこうしてあなたと会える日を』


《私と会う機会を?》


『えぇそうです』


《なぜ?》


『それはもちろん……』


そこで言葉を切り、再び彼女は言いました。


『私が知りたいからですよ』


何を言っているのか意味がよく分かりません。私を弄んでいるのでしょうか。しかし不思議と声の主からは悪意を感じません。どちらかといえば慈愛のようなものを感じます。


『あの時と同じように。あなたが真実に辿り着けるか。私達が再び希望を持つことが出来るのか……未来を知る為に。そして未来を変える為に』


……あの時?


『思い出してください。全てを。そしてあなたが成すべきことを』


その言葉を最後に私の意識はゆっくりと沈んでゆく感覚に襲われます。


《待ってください!あなたは一体……!?》


必死に叫びますが声は既に届かないようで、私の意識は再び闇の中へと落ちていきました。


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