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第二十八話 卵

その後、俺達は広間の奥に探索に向かう。


ゴブリンの住処なのであれば何かしらアイテムや素材なんかがあるかもしれない。


あまり期待はできないが現在地が分かる何かがある可能性も僅かながらにある。今はとにかく情報が必要だ。


2人で奥へと進むとこじんまりとした空間に辿り着く。


……かなり酷い匂いだ。

ゴミや死骸があちらこちらに転がっており中には食いカスらしきものも見受けられる。ここがゴブリン達の溜まり場なのだろう。


《主様……これって》


そう言ったエレアの視線へ目をやると


「……人の遺体だ」


おそらく冒険者だろう。装備を見る限り男か。身元のわかるものがないか探ってみるとプレートを見つけることができた。


ギルドカード。

冒険者が常に携帯しているギルドの認証。

これを提示することで自分の身分を証明できる。


……この遺体のものだろう。


名前はケヴィン•バウアー、歳は23。

おそらくだが、討伐依頼を受けて返り討ちにあったんだろう。彼の装備はボロボロになっており、顔が半分抉れている。


無念だったろうな……彼の冥福を祈りながら

傍にあった布をかけてやる。

埋葬してやりたいが、魔物のいる洞窟の中では火葬も土葬も危険だ。


俺にはこれくらいしかできないが……。


周りに目を向けると他にも冒険者の遺体がいくつも転がっていた。運が悪いとしか言いようがない。


だがこれが冒険者の現実なんだろう。

魔物と戦い、この世界で生きる以上どうしようもないことだ。


遺体に手を合わせ立ち去ろうとした時、住みの方に鎮座していたある物に目が留まった。それは古びた宝箱だった。


こんな所に宝箱?

ゴブリン達がどこからか持ってきたのか?


ふむ……一応中身を見ておくか。

その辺のゴミと同じように放置しておくのは勿体ない。

何の収穫も得られないと思っていたが嬉しい誤算だ。

俺は宝箱を開けようと手を伸ばしーーー


《主様!!!》


その瞬間。エレアが俺の腰に飛びつき後ろへ引っ張る。もつれ込んで後ろに倒れた直後……


宝箱は爆発した。


《大丈夫ですか!?主様》


突然の出来事に呆然としていた俺はエレアの言葉で我に返る。すぐさま彼女の無事を確認するが特に怪我はしていない。


俺の方も無事なようだ。エレアが助けてくれなければ……死にはしなくとも重症になっていただろう。


「……ありがとうエレア」


礼を言うとエレアは首を横に振る。


《私などよりも主様がご無事で何よりです》


「いや、エレアのおかげだ。助かったよ」


しかし何故気づく事ができたのだろう?もしかしたら罠探知のようなスキルでも持っているのか?


「何で分かったんだ?あれが罠だって」


そう尋ねるとエレアは口を濁して答えた。


《宝箱から嫌な感じがしたのです。主様にお伝えするのが遅くなってしまい申し訳ありません》


なるほど。つまり第六感的なやつか。


「気にするな。結果的には助かったんだ。俺こそ不用心だった」


そう言ってエレアの頭を撫でる。


《……///》


宝箱に目をやると爆発の影響で木製の枠組みが焼け焦げていたが、あまり損傷は無かった。


やけに頑丈な宝箱だな……その割には爆発なんていう罠が仕掛けられているなんて不自然だ。本来は宝を守るために設置される罠が破壊を目的としているとはいかがなものか。


気になった俺は慎重に宝箱の蓋部分を調べ始める。罠自体は他には無いようだ。

エレアも心配そうな顔をしているが、止めないあたり他に罠は無いらしい。


蓋をそっと持ち上げて中に手を入れると手応えがあった。


何か……硬いものがある……石?いや、この重さと手触りからして鉄か何かか?


取り出してみると、それは銀色に輝く鉄のような丸い鉱石だった。

鉄にしてはやけに丸みを帯びている。まるで何かの卵のような形状だ。


【鑑定】を使って確かめてみる。


結果は……【テュポーンの卵】?なんだこれは……俺が知らないだけでレアな鉱石か何かなのか?それとも本当に龍の卵とかか?


【テュポーンの卵】

孵るまでの過程で使用者の魔力を吸収し成長する。


テュポーンの卵?テュポーンなんて名前聞いた事もない。魔物の1種なのか?


手に持っている鉱石を眺めながら考える。


鑑定してみてもそれ以上の詳細な説明はない。ただ魔力を吸収して成長するという事だけは分かった。


とりあえず持っていて損はないだろう。テュポーンに関する情報があれば色々検討してもいいだろうが……

ひとまず卵を【アイテムボックス】に保管した。

どこかで落ち着いたら詳しく調べてみるか。


それにしても卵……卵か。

何故ゴブリンのねぐらにこんなものがあったんだろうか。ご丁寧に罠付きで。

……まぁ考えたところで分かる訳もなく。答えは出そうにもないが、ゴブリンがどこからか見つけて来て保管していたのは間違いない。


ひとまずこの場所でこれ以上得られそうなものは無い。

洞窟を出て街か人里を探そう。


「ここにはもう何も無さそうだ。外へ出て街を探すぞ」


《わかりました主様》


来た道を引き返し、洞窟の入り口を目指す。

帰りはゴブリン共も現れなかったので順調に出口まで辿り着くことが出来た。


「早めにどこか街を見つけたいな。その服も何とかしないとだしな」


入口付近に差し掛かったところでエレアに語りかける。


《服を……買っていただけるのですか?》


エレアは嬉しそうに聞いてくる。


「当たり前だろ?今のままじゃ可哀想だしな」


《ありがとうございます!主様!!》


エレアは両手を挙げて喜んでいた。

まるで子供のような喜びように思わず苦笑する。出会った場所が場所じゃなければ本当に小学生の女の子みたいだな。


たわいない会話を交わしながら外に出る。

途端に視界に入って来る鮮やかな青空と暖かい日差しに思わず目を細める。


薄暗い洞窟内に超直いた為に開放感に浸っているとーーー


《主様ッッッ!!》


エレアの悲鳴が俺の耳に響き渡った。


その声を聞いて咄嗟に振り返る。そこにあったのは巨大な影。


何かが突然上空から降り立ったのだ。

あまりの風圧と衝撃に砂埃が舞い上がり、辺り一帯が見えなくなる。


「……ッ!?」


俺は咄嗟に防御姿勢をとりながら砂埃を払いのけ視界を確保する。


《主様!撤退を!とても強い力を感じます!》


煙が晴れてゆき、視界が開けたそこに居たのは……


上半身が人間で下半身がヘビ、さらに肩からも無数のヘビが生えているという形相のおぞましい姿の巨大な怪物がいた。

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