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第二十四話 脱出

一人の少女が浮かんでいた。

白く長い髪に赤い瞳をした少女。その美しさはこの世の物とは思えないほどだった。少女は俺の眼前に降り立つと、ゆっくりと瞳を開き俺を見つめる。そして少女は俺の目をじっと見ると、柔らかい微笑みを向けてきた。

その笑顔を見た瞬間、俺の心臓は大きく跳ねた。今まで感じたことのない感情が胸に渦巻く。

なんだこれは……俺は一体どうしてしまったんだ? 混乱している俺に少女は話しかけてきた。


《初めまして主様》


少女の声はまるで鈴の音のように美しく、俺の耳に心地よく響いた。


《私は貴方様の剣となり盾となる存在です》


少女の言葉の意味を理解するのに数秒かかったが、すぐに理解した。

この少女の言葉には感情が感じられない。まるで機械か人形と話している気分だ。一瞬この場所に迷い込んだ不運な一般人かと頭をよぎったがおそらく違う。

これは予測だが…この少女はこの空間を制覇した報酬なのではないかと思う。急に光から現れ俺を《主》と呼ぶ。

だが腑に落ちない点がある、まずそれをハッキリさせる。


この場所を制覇した報酬が少女。

つまりこの少女はこの空間について何かを知っている可能性がある。

俺は少女に話しかける、あくまで慎重に。


「お前は何者だ」


すると少女は少し考えるような仕草を見せた後答えた。


《私は貴方様の剣となり盾となる存在です》


またそれか……しかし、この少女からは俺に対する敵意は感じない。むしろ好意的に見える。だが、それが逆に不気味に思えた。


「俺の剣となり盾となる?今初めて知り合ったのにか?」


《はい。その通りです》


即答だった。

まるで俺の疑問など全てお見通しのような反応だ。


《私は貴方様の為だけに生まれた存在です。貴方様が望むことは何でも叶えます》


そう言うと、少女は俺に手を差し伸べてきた。俺は恐る恐るその手に触れる。すると少女は優しく微笑んだ後、俺の手を握りしめた。その瞬間、俺の身体を電流が流れるような感覚が襲った。それは痛みではなく快楽に近い感覚だったと思う。


《これからよろしくお願いしますね主様》


少女の言葉を聞きながら俺は意識を失った……




……目を覚ます。また意識を失っていたようだ。

俺は身体を起こすと自分の身体を確認する。特に変わりはないようだ。ほっと胸を撫で下ろす。

あれは夢だったのか?そう思った時、ふと脳裏に浮かんだものがあった。それはあの少女の笑顔だった。その笑顔を思いだすだけで胸が熱くなるのを感じた。

上手く言葉にできないがこの感情はなんなのだろうか。


《おはようございます主様》


「うわぁっ!」


俺は思わず仰け反り返った。突然真横から声をかけられ死ぬほど驚いた。


《大丈夫ですか?》


夢ではなかったようだ…

目の前には俺を心配そうに見つめる少女が不安そうな顔をしている。そんな表情もできるんだな…年頃の少女みたいだ。機械や人形とか思ったのは失礼だったかもしれない。


《主様?》


「ああ、大丈夫だ」


少女は心配そうに俺を見つめている。この目は本気で心配しているようだったので答える。


「本当に大丈夫だ。ありがとな」


そう言うと少女は笑顔を見せた。未だこの娘のことを何も知らないが優しい子だなと感じた。


そうだ先程のあれはなんだったのか


「そういえばさっき手を握られた時、何か電流が流れるような感覚があったんだけどあれは何?」


《あれは主従契約です》


「主従契約?」


《はい。主様は私の契約石を所持していらっしゃいます》


《その石は私の魂と繋がっています。つまり主様と私の魂が繋がっているということです》


契約石とはおそらく水晶から出てきた紅い石のことだろう。

なるほどそういうことだったのか……ってちょっと待て。今とんでもないことを言わなかったか?この娘も俺の魂と繋がっているだと?


《はい。私は主様のものになります》


俺のもの……ということは


「俺は君の主人…君は俺の所有物…ってことか」


《はい》


またしても即答だ。

どうやら本当らしい。一方的に押し売り契約させられた気分だ。クーリングオフとかは効くのだろうか。


「ちなみにクーリングオフとかって…」


《くーりんぐおふ?ですか?》


「あーいや、なんでもない」


言ってみたが日本の言葉が通じるはずがない。それにこの少女は無害そうだし問題は無さそうだ。…この空間の報酬的な扱いであったので何かしらの力は持っていそうだが。加えて言うならこんな幼気な少女をこの場に残していくのは流石に気がひける。しばらくは好きにしてもらっても構わないだろう。


「わかった。よろしく頼むよ」


《はい!よろしくお願い致します!主様!》


少女は花が咲いたような笑顔で俺に微笑む。ちょっと調子狂うな、なにかドギマギする。


「と、とりあえずまずここから抜け出したいんだが。なにかアイディアはあるか?」


気持ちの整理の為強引に話題を変える。とはいえここから抜け出す方法がないのも本当だ。彼女はこの空間での報酬。何かしらの脱出方法を知っているかと聞いてみたのだが…


《お任せください》


え?彼女からは二つ返事が返ってきた。お任せください?


《主様。お手数ですが私を抱きしめてくださいますか?》


「え」


突然の抱擁要求、推定年齢12.3歳の少女に抱きつく28歳男性…いやいやマズイ。


「べ…別の方法があるなら…」


《ありません》


言いきられた。ぐぬ…

結局俺は仕方なく、仕方なく少女を抱き寄せた。


「これでいいのか?」


《ありがとうございます…》


顔を赤らめるな顔を。こっちの方が恥ずかしいんだぞ。


《ではいきます。しっかり掴まっていてください主様》


は?捕まるって何を…


《転移》


少女がそう呟いた瞬間2人の身体は空間から消滅した。

静けさを取り戻した空間からは、徐々にその灯りが消えていき元の静寂に包まれた。

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