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第二十一話 岩男

視界いっぱいに広がった爆風に思わず目を背ける。以前使用した時の何倍もの火力を叩き出した。これでおそらくは殲滅できただろう。

煙が晴れていき視界が明瞭になる。そこには予想通りの光景ーーキングホーンラビット達の死骸が転がっていた。


またしても死骸が消失をはじめた。消失していく兎達の死骸は霧状の靄となり、水晶に吸い込まれていく。先程同様靄を取り込んだ水晶の濁りが少しだけ払われていく。


ここまで同じ流れを繰り返されたらイヤでも理解する。

次の展開もだ。


現在位置から大きく距離をとり、回復魔法と魔力ポーションを体に注ぎ込み警戒態勢をとる。刹那、さっき俺が立っていた場所に光が差し込む。現れたのは……もう予測はついていたが、やはり『ゴーレムのコア』だった。


どういう原理かは知らないが、この場所では俺が過去に戦ったことのある魔物が現れている。『ゴブリン』『キングホーンラビット』……そして今『ゴーレム』が現れた。

一度に複数の種類は現れない。一種類殲滅するごとに次の魔物が出現する。そして倒した魔物はあの水晶に吸収されている。吸収毎に水晶の濁りが祓われているのを見る限り、おそらくは水晶の濁りを完全に祓えた時この地獄は終わるのだろう。


ゴーレムのコアを囲うように光が集まり、形を成していく。ここには砂はない、あのコアは周囲の素材で形を成す。つまり考えうる素材となり得るのは……石だ。


コア周辺の床が剥がれ集まり形を形成していく。『火球』や『水球』で阻害を試みるが砂とは硬度が違いすぎる。俺の魔法は全く通用せず確実にゴーレムが形成されていく。そこに形作られたのは以前戦った砂の個体とはまるで違う……名付けるなら『岩男』。


岩男は、以前戦ったゴーレムに比べると二回りは大きい。全長約四メートルほどか。岩の巨人といった出で立ちだ。だが大きさこそ違えど、その形は人のそれである。

体の周りからは腕が四本生えており、これだけでもかなり厄介なのだが、さらにそれぞれの手に武器を持っている。剣が二本に槍が一本、そして杖が一つだ。


俺はもう一度『水球』を放つ。しかし……やはり通用しない。命中こそするがまるで手応えを感じない。前回は相手の体が砂であったが故に通用したが、単純な岩を素材にされている為前回のように絡め手が通じない。

魔法が効かないならと俺は剣を抜く。が、こんなモノが通用するとは思えない。兎の時のようになにか突破口を見出さないと勝機はない。


俺が考え込んでいる隙に岩男が斬りかかってきた。なんとか剣で受けるが、岩男の力は凄まじく俺は後方へ弾き飛ばされた。

一撃が重すぎる、さっきもゴブリンに殴られたがあれの比じゃない。

俺は体勢を立て直そうとするが、岩男は再び追撃を仕掛けてくる。

追撃が速すぎる、繰り出された槍をなんとか躱し、反撃を試みるが……俺の剣は通らない。鈍い音を立てて弾き返されてしまう。

またも繰り出された剣と俺の剣がぶつかり合う。しかし力負けした俺は再び後方へ飛ばされる。

どうする、魔法は決定打にならない。物理に至ってはそれ以下だ。


この魔物の攻略方は既にわかっている。体内に隠れているコアを破壊すればいい、それだけなのだがそれが問題だ。


『復讐』で『火魔法』や『水魔法』の威力を底上げして、仮に外殻を破壊出来たとしてもすぐに再生されてしまう。先の戦いのようにはできない。どうする。

思考している間にも敵の追撃は続く。

俺は咄嗟に『火魔法』を放つが足止めにすらならない。

魔法も剣も岩男には通用しない。


どうする、どうする!考えろ、何か手立てはあるはずだ! 必死に打開策を考えていると、岩男は既に俺の目の前まで迫っていた。奴の放つ槍をなんとか剣で受け止めるが、バランスを崩した俺は尻餅をついてしまう。すかさず岩男が二本の剣を俺に振り下ろしてくる。咄嗟に後ろへ飛び退き回避したが、岩男は距離を詰めてさらに追撃を仕掛けてくる。

岩男の繰り出す斬撃は凄まじく速く、回避しきれない。防ぐだけで精一杯だ。

このままではいずれ押し切られてしまう。


何か、何か方法はないか。攻撃を必死に捌きながら思考を巡らせるが何も思いつかない。このままではジリ貧だ。

岩男の振るう二本の剣を防ぐことしか出来ずにいると、一本の剣が俺の肩を掠めた。痛みに顔を歪めながらも必死に思考を巡らせていると、何かが響く音が聴こえた。

…なんだ?およそこの場には似つかわしくない妙な音。

謎の音に一瞬気を取られた瞬間、槍による突きが飛んでくる。

すんでのところでそれを躱し、距離をとる為槍を持つ手を『復讐』を発動した蹴りで大きく蹴り出す。蹴りの威力を倍にしても腕の外殻は剥がれもしなかったが、岩男は槍を落とし仰け反った。


岩男が仰け反り、奴が背中を見せた一瞬、俺は妙な音の正体に気づいた。

骨だ。奴の背中の一部分が床に散乱していた人骨と一体化している。よく見ると骨が一体化している部分は石の体が形成されていない。その部分のみ骨で造られている。

『ゴーレムのコア』は周囲の物質を素材にしてゴーレムを形作る。おそらくは形成の際に人骨も巻き込まれてあの形になったのだろう。あの音は欠けた骨同士がぶつかった音だったのだ。



…これは賭けになるしリスクも高い。だがやるしかない。


俺は覚悟を決めると岩男から距離を取り、剣を地面に突き刺した。そして両手を突き出して魔法を発動する。

両手から水が噴出され、魔力を込めて小さな水の刃を形作っていく。一つではなく同時に複数の刃を。

『火魔法』では駄目だ、この賭けには『水魔法』でなければならない。『火魔法』では爆炎や爆風で失敗する恐れがある。

俺はさらに魔力を込め、水の刃の数を徐々に増していく。ついには俺の周囲を埋め尽くす程の密度の刃が多数完成した。


名付けて『水刃』〈ウォーターカッター〉だ。


俺は『水刃』を岩男に向けて一斉に射出する。無数の刃が岩男へと襲い掛かった。

全ての刃が直撃すると思われたその時、岩男は目にも止まらぬ速度で腕を振るい、その攻撃を全て弾き飛ばす。

本当に大したヤツだ、だがな。詰めが甘い!


「こっちだ木偶の坊!!!」

俺は岩男の背後から叫ぶ。奴が振り返るがもう遅い。

岩男の背に飛び移り骨の部分へと狙いを定める。


何故俺が瞬間的に背後をとれたのか。

『水刃』は単なる陽動にすぎない。刃を放った瞬間俺は剣の影に潜り、すぐさま無数の刃の影の一つへと『影移動』を行った。

その後刃が奴に弾かれる瞬間、奴の影に更に移ったという訳だ。

だが、この作戦には致命的なリスクがある。

『水刃』そして『影潜み』と『影移動』の乱発による魔力切れを起こしてしまうこと。実際、今俺は魔力を限界以上に使用した弊害により意識が朦朧としている。いつもより更に酷い。

だが魔力がなくても俺には『復讐』がある。砂のゴーレムと戦った経験から、今回『復讐』は蹴り以外で使っていない。

つまり、何度も打ちのめされた分の任意で使える『復讐』がある!

岩男は俺を引き剥がそうと激しくもがき出す。


「暴れんじゃねぇよこの野郎!!!!!」

『復讐』で握力を強化して振り落とされぬように堪える。

いつまでも持たない、早急にケリをつけなければ。眼前の人骨の背に向けて拳を叩きつける。

顔も知らない他人だが許してくれ。俺があんた達の仇をとるから。

そのまま骨を何度も何度も殴りつけ破壊していく。

人骨の外殻を破壊すると、『鑑定』を発動する必要もなくコアが見つかった。俺はそのままコアを鷲掴みにして、残りの『復讐』の力全てを注ぎ込みコアを握り砕いた……



コアを砕かれた岩男は糸の切れた操り人形のように崩れ落ちた。

俺は背中から飛び降りて、地面に着地する。岩男の体が靄となって消失していく…

勝ったのだ。ギリギリだったが勝つことが出来た。疲労と安堵感から足元がおぼつかない。

俺はそのまま前のめりに倒れこんでしまった。

過去に戦った魔物は今ので全て倒せたはず……

魔力切れと疲労でもう動けない。だが、これでやっと……。

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