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第二十話 鮮血の記憶

あの時と同じ様に、驚愕に引きつる俺の表情とは対照的に、兎達は変わらない表情で俺を見つめていた。


何故ここにコイツらが、そんな事を考えている余裕はなかった。

静寂は一瞬ーーあの時同様風の鎌鼬が俺に放たれた。

距離が近すぎる、かわせない!!


「『水壁ッッッッ!!!!』」

咄嗟に水魔法で水の壁を展開し鎌鼬を防ぐ。だが咄嗟の発動では相応の魔力は込められず、威力を多少殺すのが精一杯だ。

『水壁』を突き抜け多数の風の刃が俺に飛来する。

全身に風の刃が叩きつけられ、服が裂かれ鮮血が飛び散る。痛みを堪えながら俺は距離を取った。

分が悪すぎる。ゴブリンとは訳が違う、みたところ数こそだいたい同じだが、今全ての兎が魔法を使用した。

つまり全ての個体が『キングホーンラビット』……。


冗談だろ、夢なら覚めてくれ。

それにゴブリン戦で減った体力と魔力もまだ回復できていない。この数を相手にするなら素の身体能力ではとても太刀打ちできない為『苦痛のペンダント』を外す訳にもいかない。撤退できるならそれが一番だが生憎逃げ道は無い。

この数の上位種の魔物を相手にする魔法を放つなら魔力を込めて発動しなければならない。剣で戦おうにもこの数では焼け石に水だろう。そもそも物理攻撃を加えようにも近づくことすらできない。


考えている間にも風の刃が飛んでくる。俺は文字通り脱兎のごとく駆出し回避に専念する。幸い広大な空間のおかげで回避だけなら問題は無い。

先程の刃のダメージと『苦痛のペンダント』の効果で『復讐』の発動は可能だが、魔力も体力も無い今の状況では発動にかなりのリスクを伴う。この魔力が切れかかっている状況で上位種相手に魔法を放つのは無謀だ。だから今、俺が取れる選択肢は一つだ。

それは、 回復まで逃げる事。それしかない。


なんとか逃げ回りながら回復魔法と魔力ポーションで態勢を整えて反撃を試みる。

だが問題が一つ、魔法を放つ隙がない。風の刃を回避する為に走り続けることで体力自体が奪われ消耗していく。しかし、このまま逃げ続けても体力がいずれ持たなくなり魔法も放てなくなる。

なら、 覚悟を決めるしかない。俺が動けるうちに勝負を決めなければならない。

やるしかない。


俺は兎達を中心に円状に走り隙を伺う。見たところ奴らは風の刃を放ってきてはいるが、常時撃ってきているわけじゃない。必ず層の薄くなる瞬間がある、そこを狙う。

だが攻撃の手は中々緩まない。さらに先程から多少ではあるが被弾回数が徐々に増えてきている。ゴブリンからの連戦で俺の体力も限界に近づいている。しかし、焦ったら負ける。それは死を意味する。限界ギリギリまでチャンスを待つ、耐え抜くんだ。死んでたまるか…


そして、その時は来た。

俺が回避の為に横へ跳んだ時、俺の体は風の刃の射線上に入ったのだ。俺はその一瞬を逃さない。

刹那のその一瞬を逃さずに『火球』を放った。

放たれた魔法は風の刃に衝突し、相殺した。魔力を込めずとも、思考できれば『復讐』で蓄積している効果で数倍程度には威力の調整は可能だ!


「オマケにくれてやるッッッッ!!」

アイテムボックスから取り出した火の秘薬に『火魔法』で着火し反対の手で前方の二匹目掛けて投擲する。もちろん『復讐』を付与。単に二倍の効果でも、今の俺の球速は軽く200km越えの肩になる。プロ野球選手も真っ青の正に『死球』となり得る!!過去にコイツらを炙り出すために使用した『ミニファイヤーボール』の応用だ。存分に味わえ。

豪速球を超えた速度で放たれた火の秘薬は、兎に着弾した瞬間に小さな爆発を起こした。普段使用している『火球』と比べたら小さい爆発だが、投擲物は小さい為逆に兎の身体を確実に削り取るにはむしろこちらの方が殺傷力はある。

結果、二匹の兎の胸付近に小さな穴を開け絶命に至らしめることに成功した。


よし、二匹仕留められた。これで回避が格段に楽になる。

だが他の兎達はそんな仲間の死には目もくれず、ひたすら俺目掛けて風の刃を繰り出し続けてくる。

今の俺はさっきまでの比じゃないくらいに落ち着いている。二匹倒せた余裕からか。多少の余裕が出来たので魔力草を口に詰め込み再び反撃に転じる。


今度は『水球』を放つ。狙いは先ほど爆破した兎二匹の死骸、その二匹に命中するように秘薬を再び投擲する。死骸に炸裂した秘薬は小さな爆発を起こし、その肉片と血飛沫が周囲に飛び散った。

そして、その攻撃に驚いたのか残りの兎達の動きが一瞬だけ止まり、死骸の肉片と『水球』によって濡れた床で数匹の兎がバランスを崩しながら倒れ込み、コントロールを失った刃が他の兎を切り刻んだ。


「ざまぁみやがれ」

俺はそう吐き捨て、即座に距離を詰める。確かにあの風魔法は厄介だが、奴らは今仲間の死骸に埋もれ自身の魔法で同士討ちになり軽いパニック状態にある。このチャンスを逃す手はない。数匹は肉片にまみれ攻撃どころではない状態、残りは俺に狙いを定め直しているが以前とは違い『復讐』の効果で数匹程度の刃なら躱すのは難しくない。


接近しながら『火魔法』に残りの魔力を込め『復讐』を掛け合わせる。今ならまとめて排除できる。

私怨たっぷりだがお前らにはやはりこの魔法で決めさせてもらう。


飛来する刃を躱しながら『火魔法』を発動する。


膨れ上がり、巨大な『火球』と化した俺の火魔法。

突風が渦巻き 業火となったそれは 俺の視界を埋めつくし

やがて爆炎となり 爆発的な衝撃と共に拡散する。


以前使用した”ソレ”に更に魔力と『復讐』を注ぎ込み憎しみを込めて放つ。


「焼き尽くせ……『真紅の火炎』〈クリムゾンフレア〉」

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