第十八話 深部
扉を開き室内へ入室する。
コアに見つからないよう扉を閉め、手斧を取り出し扉に固定する。万が一の保険だ。
さて、入ったはいいがどうしたものかな。部屋の中は見慣れた石壁の造り、あるのは壁と砂ばかり。
いい加減見飽きた部屋を見回すと奥に見慣れないものを見つけた。
その石壁の一部は他とは違い、まるで鏡のようになっていた。近づいて確認してみることにする。
その鏡にはなにやら文字のようなものが書かれていた。
「これは……日本語じゃないか」
そこには懐かしき生まれ故郷の文字で何かが書かれていた。この世界に来てから今まで日本語を目にしたことは無い。
少し期待が高まるが、こんな場所に残された文字なんてろくなもんじゃないだろう。
『止まない者』
鏡にはそう記されていた。
『止まない者』?どういう意味だ?意味がわからん。
室内には他に何も無い、困ったな。ここが終着点だと思っていたがどうやらアテが外れたようだ。流石にもう手詰まり、この部屋から出てもまたあての無い探索を延々と続けるだけ。
「こいつが鍵とかだったら楽なのにな」
唯一倒したコアの欠片を取り出し呟く。一応拾ってはきたものの使う用途はなさそうだ。町に戻れれば換金か魔道具の素材なんかにはできそうだけどな。
欠片を見つめぼんやりしていると、ふと違和感を感じ振り返る。が、そこには何もない。気のせいだろうか?しかし、この違和感は……。
次の瞬間、コアの欠片が鏡に引き寄せられ吸い込まれていった。
「なんだ……?」
俺は鏡に向き直り、恐る恐る鏡面に手を触れる。すると触れた部分から水面のように波紋が広がった。そして次の瞬間には俺の手は中へ吸い込まれていた。
「うお!?」
慌てて手を抜こうとするも抜けない。
やがて全身が飲み込まれ、室内は静寂に包まれた。
気がつくと、先ほどまでいた場所とは打って変わり周囲が濃い霧に覆われている場所にいた。
薄暗い空間ではあったが、辛うじて視界は効く。
そしてなによりも目を引くのが目の前に存在する大きな扉だ。その大きさはゆうに5メートルはあるだろうか?巨大な扉には細かい装飾が施されており明らかに先程までいた場所とは空気が違う。
他には何も無い。あの石壁の部屋には戻れなそうだ。
少し考える、だがどう考えてもわかりきっている。おそらくこの部屋はボス戦前のセーブ部屋のようなものだ。
あんなわかりやすい扉があれば誰だってわかる。
残念ながらこれはゲームじゃない。のでセーブはできないが、落ち着く時間くらいはくれるということなのだろう。
どうする、あの扉は単に出口という可能性だってある。
しかし罠という場合もある、考えたらキリがないが選べる状況でない以上最終的には進むしかない。もしこの扉が本当にただの出口だったとしたらこの場所を造った奴の俺を嘲笑う顔が目に浮かぶな。
さっきの部屋とは違い、この先にあるのは出口か戦いかの二択。魔力と体力を回復し最後の準備を整えた俺は意を決して扉に手をかけた。




