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第十七話 コアと迷路

「ああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁ!!!」


全身全霊で力を込め剣を振り抜く。振り切った剣は本体ごとコアを両断し、コアを失いただの砂となったゴーレムは崩れ落ちていった……



しばらくその場に立ち尽くし、ゴーレムの再生が完全に停止したことを確認した俺は深い溜息と共に床にへたりこんだ。

危なかった。もう少し気づくのが遅れていたら今頃死んでいたかもしれない。迂闊だった、今まで戦ってきた魔物は勿論だが、復活されるのは想定外だった。ここは今まで生きてきた世界とは違うのだ。常識に囚われていたらいつか痛い目を見る、今後は用心深く探索しなければ。


ひとまず部屋からは出ずに身体を休める。あのゴーレム1体倒すのに、かなりの体力と魔力を消費してしまったからな。

ポーションも無限じゃない、可能な限り自然回復と回復魔法で状態回復を図ることにする。


30分ほど休憩し、ある程度回復できた。できればここを動かずにいたいがそうも言ってられないので仕方なく立ち上がる。


回復魔法をかけ、魔力ポーションを1つ飲む。これでとりあえずは全快だ。

さて、探索を再開する訳だが……さしあたって問題が1つ。

あのゴーレムだ。幸い部屋に留まっていたからか、あれから遭遇はしていないがあの魔物はきわめて厄介だ。

さらに言うならまだゴーレムにしか遭遇していない。これが何を意味するのか、あのゴーレムですら全力を出し切ってやっと倒せたというのに更に未知数の魔物に出会う可能性があるということだ。


厳しい、流石に毎回全力の戦闘を続けるという訳にもいかない。そもそもあれだけ派手に戦って他の魔物に嗅ぎつけられなかったのは奇跡だ。この狭い空間で複数の魔物に囲まれたら逃げきれない。


改めて使える能力を確認するが……

『火魔法』『水魔法』『回復魔法』『影魔法』

そしてユニークスキル『復讐』の5つ。


『火魔法』と『水魔法』については強力な魔法ではあるが、この空間では若干使いづらい。

何故なら、この閉ざされた空間で仮に火を用いた攻撃をしようものなら閉鎖空間であるが故に一酸化炭素中毒になってしまう恐れがある。

水も同様だ。先程のように多少なら問題はないだろうが、やはり閉鎖空間というのが大きなデメリットだ。

地上の大草原のような場所なら問題はないが、動ける範囲に制限があるこの場所で足元を滑らすような事態は致命的な問題になる。


『影魔法』もそうだ。先のゴーレムには多少食い下がったが『影男』はあまり戦力にはならないことがわかった。せいぜい足止めか時間稼ぎにしかならない。人間相手ならまた違うかもしれないが、魔物相手となると『影男』は単純な力比べに勝てない。耐久力もそこまでなかった。


『影操作』『影移動』『影潜み』……これは使える能力だが魔力消費が激しすぎる。いざという時は『影潜み』で隠れるしかないが……

一時的に隠れられても魔力を無駄に消費するだけで根本的な解決にはならない。


探せば探すほど粗が出てくるな。

世の冒険者がパーティーを組む理由がわかった気がする。

こういう状況になっても仲間がいればなんとかなる。乗り越えられる。安心する。だから皆背中を任せて戦うんだ。

俺のように一人きりでは打開するのに苦労する。

生きて帰れたら仲間を探そう。その為にもまずはここから脱出する。


作戦を考えた。

先程のように一々戦っていたのでは埒があかない。

助けが望めない以上、体力も魔力も無駄に消費するのは極力避けるべきだ。

であればやることは1つ、隠密行動だ。


派手に動かず『鑑定』を使う。『鑑定』は魔力を消費せずに使える能力、基本は壁を背にしながら移動しつつ間を開けずに全方位にも『鑑定』を使い極力魔物との接敵を避けつつ進む。

『鑑定』に反応があった際や、些細な物音、気配を感じた場合は直ぐに『影潜み』で姿を隠す。


それが魔物であった場合ならやり過ごすことが可能だろうし、杞憂であったならそれはそれでいい。

大事なのはこの場所から一刻も早く抜け出すこと。

男としてはかなり情けない手段になるが仕方ない、命には替えられない。


覚悟を決めて部屋を出る。

『影男』は出せない。魔力を温存する為でもあるが、視界を増やす代わりに魔物に見つかる可能性が上がるからだ。


息を殺しながら壁伝いに移動する。

今の俺、まるで泥棒みたいだな。子供の頃、夜中に親に内緒で隠れてお菓子を食べていたことを思い出す。抜き足差し足忍び足で……なにも難しいことはない、昔と同じだ。

気配を殺しつつ出口を探すだけ。かくれんぼだと思え。


『鑑定』に反応があった。目前の曲がり角の先に小さなボールのような球体が浮遊している。

『鑑定』の表示には


【ゴーレムのコア】


特殊な術式が組み込まれたゴーレムのコア。

周囲の風景にあった素材をそ……『鑑定』にはついさっきみた内容が表示されている。


先のゴーレムのものと同じ。さっきはあの球体に視認されたことで戦闘になったのだろう。閉鎖空間だからなのかは分からないが、おそらく生物を見つけたらゴーレムを生成し襲ってくるのだろうな。


こっちに近づいてくる。

咄嗟に『影潜み』を使い影に隠れる。幸いにもコアは俺の影の上を通過していった。


影から上がり辺りを見回す。近くにいたのはアレだけだったみたいだ。部屋を出て直ぐに出くわすとはツイてない。




その後も『鑑定』を駆使しながら進んで行ったが……

結論から言うと、予想を遥かに上回る数だった。少し進むと通路の先にコアがいる。曲がった先に、部屋の中に、とにかく奴らはあちこちに存在していた。

俺はその度に影に隠れやり過ごしていたのだがいくらなんでも数が多すぎる。見つかっていないのが奇跡だ。


しかもこの場所、いくら歩き回っても出口らしきところが見当たらない。子供の頃に漫画で読んだ知識『迷路で迷ったら壁に手を付けて歩け』そうすればいずれ出口にたどり着くと、その知識を頼りに探索を続けていたが一向に出られる気配を感じられない。逆に同じ場所をグルグル回り続けている感覚だ。


安全を確認し部屋の一室に倒れ込む。分からない、どうすればここから出られる。ただの迷路空間でないことはわかった。だがどこにも出口らしき場所はない。

もしかして謎解き要素のようなものがあるのだろうか。

だとしたらお手上げ状態だ、自慢じゃないが俺はそういったものはサッパリだ。時間をかけてゴールにたどり着けるというのならいくらでもやれるが、ここまで探して無理ならどうしようもない。


体感時間では既に半日以上はさまよっただろう。

魔法で水の心配はないが、このまま出口を見つけられなければいずれはアイテムボックス内の保存食も尽きる。

こんなところで干からびて死にたくは無いな。

少し考えてみるがあまりにも判断材料が少なすぎる。

ここに来てから目にしたものはこの石壁とあのコアのみ。

これだけでなにをどう判断しろというのか。いっその事床や天井を破壊してみるか?崩落の危険があるが最終的にはその手段をとるしかないかもな。


いや、まてよ……?『コア』しかいない……?

もしかしたら……






ビンゴだ、どうやら当たりらしい。

あの後部屋を出た俺は近くにいたコアの影に潜り込んだ。

『影魔法』の練習をしていた時『人間相手に使えば相手の影に入ったまま、移動する。なんてこともできるかもしれない。』と考えた事がある。

思わぬ所で立証できたがまさか本当に他人……いや自分以外の影にも入れるとはな。


俺は考えた。この何も無い空間でこのコアはどこから生まれているのだろうと。自然発生するだけのものならばこの考えはそこで終わりだが、俺はおそらく違うと考えた。

こいつらにはゴーレムを生み出せる何かがある。知性とはまた違うかもしれないが、何か目的を持って生み出され、視認した外敵を排除しているのだと。無から生み出された野生の個体と言われればそれまでだが、奴らは魔物とは違うような気がした。おそらくこいつらを生み出している何者か、もしくは何かがある筈だと俺は考えた。

そしてこのコア達にその『何か』を与えている根源がある。

ならこのコアの影に潜みその場所まで案内してもらえばいい。考えてみれば単純な話だ。


そして今俺は何の変哲もない扉の前に立っている。

潜んでいたコアはこの場所で停止し、周囲からも集まってきたコアとは各々逆方向へ進んで行った。つまりこの扉の向こうにこいつらを動かしている『何か』がある。

覚悟を決めて扉を引く……が重い。

疑念は確信に変わった。俺が最初にここに来た時と同じだ。

あの時も最初の部屋から出る時扉は重かった。今もそうだ。浅はかな考えだが、あそこが入口でここがおそらく出口だ。もうここ以外にはない、頼む。


俺は重い扉を開き部屋の中へと入っていった。

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