第十五話 vsゴーレム
影男を盾にしながらゴーレムから距離をとる。
今にも石の礫が飛んできそうな状況で、脂汗をかく。奴のあの礫の威力がわからない以上、影男の背にいても確実な安全は保証されない。
となれば先手を打つべきだ。
砂とはいえあのゴーレムには普通の魔法はあまり通用しないかもしれない。
影男に隠れつつ、水魔法の準備を開始。
水を球状に形成し、更に魔力を込めて巨大化させ質量を上げる。
砂・地面・土と言ったら弱点は水というのが真理。
自分の勘を信じて特大の水球を作り出す。
ゴーレムも俺の魔法に脅威を感じたのか、形成されていた石の礫が更に肥大化していく。
不味い、先手を取るどころではない。
もう少し魔力を込めたかったが……撃つ!
「『水球』〈ウォーターボール〉!!!」
俺が放つと同時にゴーレムも石の礫を放ってきた。
放つ瞬間だけ影男に避けさせてすぐに影男の背後に。
瞬間、俺の頬を礫が掠めた。
俺は見た。
質量をもった『水球』はゴーレムの礫と衝突、ぶつかり弾けたのだ。
正面から衝突し合った双方の魔法はおそらくほぼ同じ威力だったのだ。
その為、『水球』に弾かれなかった礫が俺を掠めたのだ。
影男も少し礫を受けたようで、両手が崩れかかっている。
だがまだ全身が崩れる程のダメージではない。影男は自分の影を使って作り出す分身だが、どうやら影へのダメージによる本体へのフィードバックも無いらしい。
よし、これならいける。
影男に残りの魔力の半分を込めて両手を再生させる。
逃げるつもりだったが変更だ。
全力ではない魔法で相殺、影男のダメージも想定以下だった。上手く立ち回れば倒せるはずだ。
それにたとえ今逃げられたとしても、この狭い通路で敵に背中を向けつつ探索するのは後々リスクになる。
ならば今倒してしまったほうがいい。
魔法が相殺されたからかゴーレムが直接向かってきた。
流石に直接殴り合いをするのは避けたい、影男に長剣を持たせ対峙させる。
戦闘指示を出し被弾は避けるよう命ずる。
ゴーレムの物理攻撃を見事に躱しながら剣で応戦する影男。
あれ、俺より動きいいな。影なのに。
感心している場合じゃない、迎撃の態勢を整えなければ。
まず魔力ポーションを数本飲みMPを全快する。
さらに回復魔法で先程のダメージを癒しておく。
そしてアイテムボックスから『苦痛のペンダント』を取り出し装備。
ペンダントを装備した瞬間、不快な痛みの感覚に襲われる。
この魔道具は装備した瞬間から常時身体が痛みに襲われる。という効果の用途不明のアイテムだ。
普通の人間ならこんな魔道具使う理由はないだろう。
用途があるとするなら、憎い相手に無理やり装備させるとか拷問用に使用する等だろう。
だが俺の場合は違う。
ユニークスキル『復讐』の効果は被ダメージの際に次の行動や攻撃を倍にできる。
『復讐』の効果に『外傷』の羅列はない。
つまりこのペンダントを装備している限り、俺のユニークスキル『復讐』は常時発動型スキルということになる!!!
俺の力が常時倍になる、『復讐』を持つ俺にとっては最強の魔道具だ。
欠点があるとするならそれは常に激痛に襲われるということ。被ダメージも常時倍になるので長く戦闘は出来ない。
短期決戦で決めなければならない。
今のHPは300。『苦痛のペンダント』と『復讐』の相乗効果で毎秒約2づつ減っていく。単純計算で現状2分を超える戦闘は出来ない。もしゴーレムからダメージを貰ったりしたらほぼ死んでしまうだろう。俺には回復魔法があるが、MPにもポーションにも限りがある。
速攻で終わらせなければ。
影男がゴーレムに押されてきている。
影が消滅する前にゴーレムを倒さなければと地を蹴り駆ける。
『復讐』の効果で俺の行動はいつもの倍だ、今の俺ならオリンピックで金メダルを獲得するのも容易いだろう。
ゴーレムの背後に回り込み背中に正拳を撃つ。
拳が多少めり込み放った箇所の砂が崩れ落ちた、が、すぐに砂で再生されていく。
やっぱり、最初に現れた時もそうだったがこのゴーレムは肉体をいくら傷つけても周囲の砂ですぐ再生されるようだ。
ならこの砂自体を再生できないようにすればいい。
「『水壁』〈ウォーターウォール〉!!!」
水魔法で水の壁を作り出しゴーレムを囲うように四方に水の壁を張る。
物理的な攻撃は意味が無い、なら意味をもたせればいい。
ゴーレムが壁を殴りつけてきた、魔力を込めていない水壁に穴が空く。
が、想定済みだ。直ぐに修復する。
さらに殴りつけたゴーレムの腕は水に触れたことで硬さを増し、泥のように崩れ落ちる。
思ったとおり、こいつは砂で肉体を形成することはできるが水分を含んだ砂は形成に使えない。
つまり全身を水で固めてやればいい。
影男に指示しゴーレムへと特攻させる。
続けて水壁の上からまるでシャワーのように水を降らせる、影男と組み合っているゴーレムの頭上に水が降り注いでいく。
砂の身体が泥へと変わっていき、濡れた箇所からボロボロ崩れ落ちていく。水分を含んだゴーレムはまるで錆びた機械のような動きをしながら俺の方へ向かってこようとする。
もうほぼ勝負はついた。
水壁を解除し、特大の『水球』を放つ。
水分を多分に含んだ泥の身体は、衝撃に耐えきれず崩れ落ちていく。
後に残ったのは泥の塊、砂のゴーレムは物言わぬ有機物となった。
ひとまずこれで安心だ。
影男を戻し、ペンダントを外してその場に座り込む。
とりあえず勝利だ。初めてほぼ無傷で魔物に勝つことができた。今までは何かしらの怪我を負っていたが今回はほとんど怪我らしい怪我はなし。
多少魔道具の効果で苦痛は残るが、それを加味しても大勝利と言えるだろう。
魔法の訓練が活きた。
今までは打ちのめされるだけだった魔物との戦いは、蓋を開けてみれば圧倒的有利に終わった。
これこそ俺が欲しかった強さだ。今後も慢心せずに訓練を続けることにしよう。
よし、少し休んだら探索再開だ。
早いとこここを抜け出して町に帰ろう。
各種ポーションで枯渇した体力や魔力を回復していた俺は、背後で砂を形成していた球体に気づかなかった。




