第十四話 ラビリントス
ーーーーーーーーー。
あれ……ここは……?
俺は確か裏路地で地面に沈んで…
生きてる、生きていた。よかった…とりあえず無事だ。
「ペッペッ」
ジャリジャリする、口の中に大量の砂が入っている。
体中が砂まみれだった。町中で砂?
砂場で遊んでいたわけでもないし、なんだ?
そこでようやく自分の置かれた状況を改めて認識する。
そうだ、確か悲鳴を聴いて裏路地に向かって…
その後地面に吸い込まれて…そこまでしか覚えてない。
砂を払い立ち上がる。
まず状況を確認しないと、ここはどこなんだ?
周囲を見回してみると、どうやら室内のようだ。一種の空間になっている。だが暗くてよく見えない、灯りを。
アイテムボックスから万が一の時の為に作っておいた松明棒を取り出す。いざって時の準備はしておくもんだな。
火魔法で火をつけ、松明にする。これで良し。
出来上がった松明で辺りを照らす。んん……?
「なんだここは…?」
照らし出された空間は確かに室内ではあった。
だが、周囲の壁が全て石造りの壁だったのだ。まるで遺跡やピラミッドの中のような石壁、どこなんだここは。
あの時地面に吸い込まれてここに落ちてきたってことなのか。しかし町の地下にこんな空間があって気づかないものなのか?建設中に気づくだろう普通。
だが、落ちつけ。
突然呑み込まれ、こんな場所に来てしまったのには多少驚いたが、なんのことはない。俺は生きているのだ。
まずは一つ一つ、状況の確認だ。
松明で辺りを照らしながら今いる場所を確認する。
小さめの部屋のような感じ、床と壁は石造りで砂だらけ。
奥をよく見ると木製の扉がある。助かった。
この場所には他は何もなさそうだ。一先ずここから出よう。
よし、まずはアイテムボックスを一通り確認する。
水、保存食、武器、防具、ポーション2種、後は…
魔力回復の指輪を取り出し装備する。
深夜に準備もせずに宿を飛び出してきたからな、装備は全てアイテムボックスの中にある。
依頼時のように武器と防具も装備、ステータスも確認する。怪我はなさそうだ、MP,HP共に減少はない。
現状は特に周囲に魔物や罠の気配は感じないが、この場所がどんな場所なのかまだ把握出来ていない。
なら、警戒を怠らない方が良いだろう。
準備を終え、扉に近づく。
松明を持っているので片手しか使えないのが不便だな。
普段なら影に持たせたりしているのだが今は危険だ。
この場所の脅威度が未知数な以上、無駄に魔力を消費して進むのは自殺行為だ。なるべく魔力は温存して進む。
扉に鍵がない、というか押すタイプの扉だ。
軽く押すが動かない、力一杯体重をかけて押す。
お…重い、扉の向こう側に何かあるみたいだ。
ある程度頑張ったら開いた。
向こう側の状況を確認してから先へ進む。足元に大量の砂があった。扉が重かった原因はこれだな。
さて、部屋を出れたはいいが参ったことになったな。
何故なら扉の先は出口ではなく、更に似たような造りの通路になっていたからだ。
この辺りも一面石の壁、床には大量の砂。そして細い通路で道が左右に分かれている。
先程の部屋からなんとなく想像していたが、これじゃまるでピラミッドの内部だ。
仮に大昔に作られた空間だとしても、こんな石造りの壁と砂だらけの場所は老朽化にしてもありえない。それこそ数千年単位で放置されたってこうはならない。
もしかしたらここはエレボスの町ではないのかも。
ここに来た時のように、地面に呑み込まれた時にワープのようにどこか知らない土地に転送されたのかもしれない。
いや、今は考えても仕方ない。
まずはここを脱出することが先決だ。そのあとのことは脱出したあとに考えればいい。
顔に張り手を入れ自分に喝を入れ探索を再開する。
まずはこの左右の道、情報がないからどっちに進んでも今の俺には大した違いはないが… もし罠なんかがあったら?
考えたくないが、魔物なんかに遭遇したら。この閉鎖空間じゃ、戦うしか選択肢がない。
逃げ場はない、助けもない、それを頭に入れて立ち回らないといけない。ストレスでおかしくなりそうだ。
そうだ、こういう時こそアレを使うべきかもしれない。
「『影男』〈シャドウマン〉」
こんな形でのお披露目は想定していなかったが、今ならこの魔法が役立つはずだ!!
目の前に影の分身が生まれる、MPを100も消費してしまうがこういう時こそ使うべきだ。
『影男』に俺の前を歩かせ探索させれば危険度はグッと減る。よし、この作戦で進むことにする。
どちらも変わらないだろうと左の道を進み、『影男』にもう一つ、松明を持たせて先行させる。
そして俺は『影男』の後ろから数メートル以上距離をとって進む。
俺も背後を警戒しながら『影男』に続けて進むが、驚く程に静かだ。
たまに砂が落ちる音が聞こえるくらい。
魔物を警戒していたがこの分なら案外あっさり出られるかもな。
正面にまた扉があった、影男に先に入らせ危険がないか確認する。大丈夫そうだ、後に続く。
扉の先は最初にいた部屋と同じような様式だ、似たような景色ばっかりで少し飽きてきたな。この状況で贅沢だな、少し余裕が出てきたのかもしれないな。
一応部屋も探索してみるが、何も無い。
この石造りの空間は誰がなんの為に創ったんだ?これだけ何も無いと疑問に思えてくる。
影男と共に部屋から出ようとしたその時、俺の背後から砂の落ちる音が聞こえた気がした。
最早聞き慣れた環境音だが念の為振り向いて確認する。
そこには驚くべき光景があった。
宙に大量の砂が浮かんでる、そしてまるで生き物のように動き出し何かを形成しているのだ。
俺は思わず口を開け呆然としていた。
そこに形作られたのは石の巨人…いや砂の巨人というべきか、名付けるならそう『ゴーレム』ってやつか。
見とれている場合じゃない!
急いで影男を前衛に立たせ、俺は後退しながらゴーレムの出方を伺う。
扉を背に向け後ずさりしているのを見て、ゴーレムが唸り声を上げる。どこからだしてるその声。
「嘘だろ……」
ゴーレムの周辺に石の礫のようなものが形成されていく。
マジかよ、こいつもあの兎みたいな魔法持ちか!!
くそっ!!戦うしかない!!
影男と共に戦闘体制をとる。
だがこんな狭い場所で戦うのは不利だ。まず部屋から脱出しなければ。




