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6.夜明けなんていらない
あの日
あなたがどうして泣いていたのか
その理由は訊ねられなかった
訊いてはいけないことだと、察していたから
波が交差するように、感情が錯誤した
あなたを失うことは
私にとってただ、恐ろしく
そのことを受け入れるくらいならば
夜明けのこない闇夜の中に長い間 居たかった
だけど、どんな時でも夜明けは来てしまうのだ
驚くほどに年齢を重ねてしまって
あなたに逢いたいと考える回数が減ってしまった
今を夜明けだというのならば 夜明けなんていらない
失ったことを受け入れるくらいならば
夜明けのこない闇夜の中に もうすこしだけ 居たかった