第四話 砲雷長は忙しいのよbyエリカ
やっと出来た……。
ドイツ機動戦艦の撤退後、戦艦初瀬と播磨は先に離脱していた機動戦艦尾張と合流、傷ついた尾張を守るように左右を二隻が囲んで沖縄の琉球基地に帰還途中だった。
―――戦艦初瀬CIC―――
「御原、武器関係の残弾は?」
「は、主砲の徹甲弾七二○発。百二十七ミリ砲弾四○○○発。20ミリファランクス三○万発。対艦誘導弾三十発。後はアスロック等が少数です」
「そうか、ありがとう御原」
御原からの報告に将斗は頷く。
「やっぱ少ないな……」
「これは仕方ないです。ハワイ作戦後の帰還途中に巻き込まれましたから」
「……問題は俺らを向こうが受け入れるかやけど」
「それは多分大丈夫でしょう。二隻の戦艦が増えるのですし」
「まぁな……」
なんか歯切れが悪い将斗。
それを不審に思った御原が問いただしてみた。
「艦長?何か不安でも?」
「いやな……環境対策はバッチリなんかな―と思ってな」
『………(^_^;)』
御原と久音は苦笑してまう。
「艦長。被害報告纏まりました」
そこへ戦艦初瀬内務長の門宮志保中佐が被害報告のためCICに来た。
「おぅ、志保っちご苦労さん。どうやった?」
「はい、艦の損傷は認められませんでした。敵艦との砲撃時に数名が転んで医務室に行ったくらいです。後、志保っちは止めて下さい」
「そうか」
「艦長〜。報告に来たぞ」
そこへCICにまた誰かやってきた。
やってきたの女性で上はタンクトップ。
今、報告した門宮と大違いである。
ちなみに門宮は律儀に士官服を着ている。(将斗は上の士官服を脱いでる)
「はっきり言うと原子炉、ガス蒸気タービンは以上無し。プラズマエンジンもだ。だが、プラズマシールドは充電しないと無理だぞ」
「そうかご苦労や鈴音」
将斗は小林鈴音機関長を労う。
「敵は追撃してくるでしょうか?」
琴葉が将斗に問う。
「五分五分やな。将の播磨が敵の潜水空母に三式弾で飛行甲板を燃やしたゆうけど、鉄板しいたら直るしな。一応対空警戒はしといてくれ」
「了解です」
そして琴葉が対空警戒を発令しようとした時、レーダー員が叫んだ。
「敵機接近ッ!!後、三分で接触しますッ!!数は約六十ッ!!」
「対空射撃用意ッ!!機関全速ッ!!」
将斗はすぐさま命令を出す。
「御原ッ!!……三式荷電粒子弾を装填してくれ」
「ーーーッ!!……本気なの?」
「あぁ」
「分かったわ。三式荷電粒子弾装填急げッ!!」
御原の言葉に旧海軍の戦艦大和が搭載していた九一式徹甲弾に類似している砲弾が砲鞍に装填される。
『装填完了ッ!!』
「艦長。いつでも撃てるわ」
「よし、尾張を先に逃がす。取り舵一杯ッ!!」
「了解ッ!!とぉーりかぁーじッ!!」
初瀬の艦体がググゥと右に傾く。
「敵機編隊こちらに向かってきますッ!!」
「狙いは初瀬だけってことか……」
将斗が呟く。
「敵機距離一万メートルッ!!」
「ッ!!シースパロー発射ッ!!」
ドシュンと艦対空ミサイルである発展型シースパローが六十発、発射される。
「敵機、チャフ及びフレアを発射ッ!!シースパローの大半が撃墜失敗ッ!!撃墜は八機ッ!!」
「速射砲撃ち方始めッ!!」
ドンドンドンドンッ!!
両舷に搭載されている百二十七ミリ速射砲十二基が敵戦闘機であるメッサーシュミットに火を噴いた。
「敵機十九機撃墜ッ!!あ、敵機対艦誘導弾発射ッ!!距離七千ッ!!」
「ファランクス撃てェェェッ!!」
ダラララララララッ!!
近接防御の高性能二十ミリ多重身機関砲五十基がミサイルに火を噴く。
むろん速射砲もだ。
だが、全てを防御しきれなかった。
「右舷より二発の誘導弾来ますッ!!距離二千ッ!!」
「右舷にいる乗組員は左舷に退避やッ!!急げッ!!」
将斗が急いで命令を出すッ!!
ズガアァァァーーンッ!!
ズガアァァァーーンッ!!
初瀬の艦体が揺れる。
「ガハアァッ!!ハァ…ハァ…ゴフゥッ!!」
艦魂である初瀬はミサイルが命中した瞬間、吐血した。
その後、もう一回吐いた。
初瀬の周りからは一面、血の池が現れた。
よく見ると、左の脇腹からも血が流れ出ている。
「損害報告ッ!!」
将斗が初瀬の左脇腹から流れ出る血を抑えながら叫ぶ。
『誘導弾は右舷の喫水線に命中ッ!!破損箇所から海水が浸水中ッ!!』
「反対舷に注水ッ!!命中付近の隔壁閉鎖やッ!!」
将斗達の日本海軍の戦艦は魚雷防御にゴムとスポンジの二重防御になっている。
しかし、流石にミサイルには無理であり、命中した箇所から膨大な量の海水が入ってきた。
「敵攻撃隊、左舷距離三万で反転ッ!!向かってきますッ!!」
敵攻撃隊は右舷から初瀬を攻撃後、一旦余裕を持って初瀬から距離三万で反転し、今度は左舷から迫る。
『艦長ッ!!浸水で速度二十三ノットまで低下ッ!!』
「艦長ッ!!撃ちましょうッ!!砲搭は既に左舷に向いて照準完了ですッ!!」
御原が叫んだ。
「敵機接近ッ!!距離一万五千ッ!!」
「……しゃあない……御原ッ!!三式荷電粒子弾ッ!!全砲門撃ェェェーーーッ!!!」
「発射ァァァーーーッ!!」
ズドオォォォーーンッ!!
距離一万で初瀬の主砲である五十六センチ砲九門が火を噴いた。
三式荷電粒子弾はメッサーシュミットとの距離二百で砲弾がパカッと割れ、中から何百もの大量のエネルギー光線が出てきた。
「ギャアァァッ!!」
エネルギー光線がコクピットに命中したパイロットはエネルギー光線で焼かれ、残ったのは黒く炭化した人間の塊だった。
また、主翼がエネルギー光線にもぎ取られる機もあった。
三式荷電粒子弾の攻撃から逃れたのはわずか八機だけだった。
残りは全て海面に部品を撒き散らしながら叩き落とされた。
「敵機残存八機。撤退していきます」
「何とか乗り切ったな……。門宮、被害報告を纏めろ」
「了解」
十五分後、被害報告が纏まり門宮が将斗に報告した。
「負傷者十一名、死者無しです。二発の対艦誘導弾が右舷の喫水線に命中。隔壁の閉鎖等により何とか浸水は防ぎましたが、今、初瀬が出せる速達は二十四ノットです」
「分かった。なら速度二十四ノットで沖縄に帰還や。千垣、反転百八十」
「了解ッ!!反転百八十ッ!!」
こうして何とか敵攻撃隊の猛攻を凌いだ戦艦初瀬は沖縄に帰還した。
―――機動戦艦トロンベ―――
「エネルギー光線だと?」
ベルンハルトは思わず副官に聞き返した。
「はい、多分レーザーの一種だと思います。砲弾の中に仕込んだレーザーで機体を破壊したと思います」
「………(本当にレーザーの一種なのか?)」
だがベルンハルトも分からなかった。
「やむを得ない。攻撃が失敗したならさっさと帰還して報告しよう。出しうる速度で帰還だ」
「了解ッ!!」
乗組員達の動きを見ながらベルンハルトは考え込んだ。
「(厄介な事になったもんだ……我等の世界とはまた違う世界の日本人。恐らく技術力は我々と同様のはずだ。だが、何だこの感じは?……何か嫌な予感がするような感じだ。だが、一、二隻増えただけで我等が旗艦に敵うわけない)」
今はまだドイツの軍巷にいる旗艦フリードリッヒ・デア・グロッセを思い浮かべたが、ベルンハルトは感じた『何か』を拭い去る事は出来なかった。
―――オマケ―――
『三式荷電粒子弾』
砲弾の中身が荷電粒子であり空中で砲弾が割れると何百とエネルギー光線が枝分かれのように、砲弾の周囲を飛行している航空機に襲い掛かる。
また、艦隊戦にも使える。
さらに『荷電粒子弾』なるものがあり、徹甲榴弾のように、弾頭が目標の装甲を貫徹したのちに内部で炸薬たる荷電粒子が解放されるのが特徴である。
元ネタは宇宙戦艦ヤマトの波動カートリッジ弾。
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