第二話 それが運命やby将斗
―――トロンベCIC―――
「……ロ…ローレライ…爆沈です…」
モニターを見ていた部下が驚愕の表情をしながらベルンハルトに報告する。
「……………」
ベルンハルトも驚きを隠せなかった。
「そ…そんな…アテナが…」
ベルンハルトの隣で震えるながらトロンベの艦魂ラキアが呟く。
いつも強気な彼女も流石にローレライの爆沈には強気どころではなかった。
「……尾張の砲撃は中止だッ!!照準を不明艦二隻に合わせろッ!!」
ベルンハルトの命令により、今まで尾張を狙っていた前部三連装砲がゆっくりと先頭の初瀬に狙いをつけた。
「撃てェェェーーーッ!!」
ズドオオォォォーーンッ!!
六発の砲弾が初瀬に降り注ごうとしていた。
―――初瀬CIC―――
「敵艦発砲ッ!!」
「プラズマシールド展開やッ!!」
バチチッ!!
初瀬と播磨の周囲に青白い光りが現れ、砲弾が光りに触れた瞬間、爆発した。
ズガアァァァーーンッ!!
ズガアァァァーーンッ!!
「??。砲弾が不明艦に当たる寸前に爆発しました」
「どういう事だ?」
ベルンハルトは首を傾げる。
「ベルンハルト。こうなったら航空攻撃で不明艦……いいえ、敵艦の戦力を低下よ」
ラキアは不明艦ではなく敵艦と呼ぶ。
「…いや待て。通信士、あの先頭の艦に通信を入れてみてくれないか?ついでに尾張にも通信を入れろ。奴らめ、機動戦艦は四隻だけではなかったのか?」
―――初瀬CIC―――
「椎名艦長。敵の旗艦らしき艦と日本の戦艦らしき艦から通信が入っています」
通信長が将斗に報告する。
「出たるか。モニターに繋ぐんや」
将斗のモニターにドイツの艦長らしき青年と東洋人で日本海軍の士官服らしきものを着ている老人が現れた。
「貴艦らの所属と艦名を答えろ」
『なら、先に貴艦から言うんだな』
ドイツの艦長らしき青年が言う。
「それもそうやな。我々は日本国海軍連合艦隊所属戦艦初瀬艦長兼パイロットの椎名将斗海軍少将で空軍中将だ」
『同じく戦艦播磨艦長兼パイロットの土方将海軍少将で空軍少将だ』
将斗と土方の挨拶に尾張の椎名は首を傾げる。
『(こんな奴らいただろうか?)日本独立機動艦隊の機動戦艦尾張艦長の椎名浩介だ」
『ドイツ海軍機動戦艦トロンベ艦長のベルンハルトだ。挨拶はもういいだろう。貴様達は何者だ?日本の機動戦艦は四隻しかいないはずだ』
ジロリとベルンハルトが椎名(尾張)を睨む。
だが、椎名(尾張)も肩をすくめた。
『私もこの二隻は知らんよ。むろん未来でも見なかったな』
二人の話しに将斗が口を挟む。
「俺らもお前らなんか知らんで。一つ聞くけど今何年や?」
『今は1943年だが……』
椎名(尾張)が答える。
「1943年やて?ほな俺らはタイムスリップでもしたんかいな?」
将斗がわざとには見えないように首を傾げる。
『タイムスリップだと?』
椎名(尾張)の声が緊張している。
『もし、タイムスリップしたなら君達は何年の世界から来たのかね?』
将斗が椎名(尾張)に尋ねられた。
「俺らは2045年やったな。確かハワイから日本に帰還中に雷雨に襲われてな。雷に当たったらここにいたな」
土方が説明した。
『ということは完全なタイムスリップだな。悪いが貴様らの世界の話しが聞きたいのだが?』
ベルンハルトが将斗に尋ねる。
「分かった」
そして、将斗が話し始めた。
日本の再軍備、中国と北朝鮮との戦争、そしてアメリカとの第二次太平洋戦争、アメリカとの講話後、暴走したアメリカが各世界都市に核ミサイルを放った事等。
「とまぁこんなとこやな」
『ふむ……』
ベルンハルトが考える仕草をしている。
『なら…我等と手を組まないか?』
『なァッ!!』
ベルンハルトの勧誘に椎名(尾張)が驚いた。
『君の話しでは随分とアメリカやイギリスに怨みを持っていると言える。なに、私からフレドリクに言えば大丈夫だ。だから我等と世界の覇者になろうではないか?』
『いかんッ!!椎名君やめるんだッ!!彼等がやっていることは虐殺だッ!!誘いに乗っては駄目だッ!!』
両者からの言葉に将斗は、「は?」と答えた。
「椎名艦長。我々はドイツなんかに行きませんよ?そら確かにアメリカとかは怨んでますけど……。てゆーかフレドリクやったけ?そいつ自己チューか?」
『な、何だとッ!!貴様もう一回言ってみろッ!!』
ベルンハルトが怒号を放つ。
「あぁ?聞こえんかったか?フレドリクは自己チューやて言うたんや。何やねんソ連の虐殺て?まぁスターリンを殺したんはええけど、民間人も殺すってどないやねんッ!!むっちゃソ連に恨みを持ってるとしか言いようがないやん」
将斗の言葉にベルンハルトは言葉を詰まらした。
フレドリクがソ連を恨みのは恋人であったシンシアがソ連に殺されたからだ。
そのためにフレドリクは計画に賛成して、地球を統一するべく活躍しているのである。
「やっぱり恋人絡みかいな」
将斗がはぁとため息をつく。
将斗の言葉にベルンハルトは驚いた。
「何で知っているのだという顔やな。……俺もアメリカに恋人を殺されたからや」
そして、将斗が語り出した。
2044年7月7日、ハワイ作戦のため出撃した翡翠と昴が落とされ、たまたま防空戦で捕虜にした将校が二人を兵士達のレイプ相手……言わば凌辱している事知った将斗と信一が二機だけでハワイホイラー飛行場に強行着陸し、斬り込み突撃をして二人を救助したが将斗を助けるために凶弾に倒れた。
「……二人は俺に言った『私(俺)達の分まで生きて、幸せになってほしい』とな。だが、最初俺はそんなのは耳に入ってなかった。そして、二人を凌辱したハワイの兵士全員を俺が一人で処刑した」
『ーーーッ!!!』
将斗の言葉にベルンハルトや椎名(尾張)はもちろんのこと、両艦のCICにいた全員が驚愕の表情で将斗を見た。もちろんラキアと明もだ。
「俺は全員を処刑した後に気付いた。あの糞どもを殺しても二人は帰ってこないとな。その時俺は二人が最期に残した言葉を思い出した。やから俺は誓った。俺は二人が悔しがる程幸せに生きてやるとな」
『……それで何が言いたいんだ?』
「よーするに俺は恋人の死を乗り切った男で、フレドリクは恋人の死を乗り切れない馬鹿な男やってことや」
『……言いたい事はそれだけか?』
ベルンハルトは怒りの表情になっている。
「へぇ。俺らをどうかするんか?」
『しれたことだ。貴様らは全員沈めてやるッ!!』
ブチィッとベルンハルトは通信を切った。
『…さぁてやるか』
ニヤリッと土方が笑う。
「将に潜水空母任すわ。こっちはあの敵旗艦をするから」
『あいよ〜』
将がニヤケながら通信を切った。
そして、将斗はまだ通信が繋がっている椎名(尾張)に告げる。
「椎名艦長。我々から離れて下さい。尾張はほぼ戦闘不能のはずです」
『……分かった。後方に下がろう。武運を祈る』
椎名は将斗に敬礼して通信を切った。
「目標、敵二番艦照準急げッ!!」
将斗は通信が終わると同時に指令する。
「照準完了ッ!!いつでも撃てるわよッ!!」
御原砲雷長が将斗に報告する。
「艦長。敵二番艦から航空機が発艦しています」
「何?」
レーダー員からの報告に将斗がピクッと動いた。
「……艦長?」
琴葉が怪しげな将斗に問い掛ける。
「……久音副長。艦の指揮を頼む」
「えッ??」
「俺は戦闘機に乗るぞッ!!零戦隊発艦準備急げッ!!」
将斗は走って艦橋を降りた。
「か、艦長ッ!?待って下さいッ!!」
久音は制しするが、既にいない。
「頑張れ副長」
初瀬が、久音の肩をぽんと手を乗せる。
「…もう慣れました…」
はぁと久音はため息をついた。
将斗は初瀬後部の格納庫にいた。
「零戦隊出撃すんでッ!!」
「マジすか艦長?我々の出番はないはずですが……」
パイロットの坂井三郎が答える。
「敵の二番艦が戦闘機上げてるんや。全機叩き落とすで」
「無理ですよ坂井さん。こうなった艦長は初瀬とあの二人しか止めれんぞ」
西沢弘義が坂井を慰める。
「さっさと行って叩き落とすか…」
管野直の言葉に五人のパイロットは愛機に駆け寄る。
チンチンチンチンッ!!
エレベーターで五機の零戦と呼ばれる機体と零戦とよく似た戦闘機一機が後部主砲の前に並べられ、そのうちの二機の零戦は整備員達によって二基の電磁カタパルトに載せられる。(初瀬は戦艦大和型をモチーフにしています。もちろん播磨もです)
バチチチッ!!
バシュウゥンッ!!
二機の零戦は勢いよく飛び出し、大空に向かう。
整備員達は急いで二機の零戦を電磁カタパルトに装着させ、再びカタパルトは電気を発しながら零戦を発艦させた。
「さぁて行くか」
将斗は愛機である特別戦闘機蒼零の風防を閉めて、酸素マスクやヘルメットを装着する。
その間に蒼零は電磁カタパルトに載せられる。
将斗はエンジンのスイッチを押す。
バチチチッ……キイィィーーンッ!!
噴射口で青白い光りを出すとエンジンが唸りを上げ始める。
バシュウゥンッ!!
将斗は強烈なGを感じながら大空に舞う。
「全機集合や」
将斗の問い掛けに五機の零戦が集まる。
「ええか?目標はただ一つや。敵戦闘機を叩き落とす事だけや」
『了解ッ!!』
坂井達が意気揚々と意気込む。
その時、アースガルドの艦載機であるメッサーシュミット1000二十機が襲いかかってきた。
「全機散開やッ!!思いっきり暴れろッ!!」
『了解ッ!!』
五機は散開した。
「ケッ!!日本野郎め。叩き落としてやるよ」
メッサーシュミットゼロのコクピットの中でドイツ飛行兵がニヤリッと笑う。
ミサイルの発射ボタンを押そうとした時、信じられない出来事が起きた。
「何だとォォォーーーッ!!」
先程まで追い詰めていた敵機――蒼零が信じられない程の超加速したのだ。
蒼零はそのまま旋回をする。
「ウッ!!」
蒼零を目で追うドイツ飛行兵は強烈な光りに目をつむる。
たまたま太陽の光りが飛行兵に当たったからだ。
その一瞬の隙を将斗は見逃さない。
将斗は旋回して、メッサーシュミット1000の後方に回り、三十ミリバルカン機関砲のボタンを押した。
ドガガガガガガッ!!
両翼の付根前縁から放たれた弾丸はメッサーシュミット1000の操縦席に吸い込まれた。
パイロットの身体は撃ち抜かれ、風防はパイロットの血で染まった。
「ば…ばか…な…」
パイロットはそう呟くと事切れてメッサーシュミット1000は爆発四散をする。
メッサーシュミット1000の性能は悪くない。核パルスエンジンを搭載しているし、速度もマッハ七以上である。
しかし、将斗の蒼零と坂井達の零戦も、とあるエンジンを搭載している。
だが、核パルスエンジンではない。
将斗の未来の日本が開発した航空機用電気推進機関―――こう言えばいいだろう。プラズマエンジンを搭載しているのである。
プラズマエンジンは完全にご都合主義なのであまり追求しないで下さい。f^_^;