日常と転生
拙い文章ですのでお手柔らかにどうぞ、
「ねえ放課後どこ行く?」
「ごめんあたしバイト」
「なあジャン負けで告れよ」
「嫌だよ!俺しか損しねえじゃねえか」
「ねえ筆箱どこー?」
昼休み。教室が騒がしい。
夏休み直前といったこともあり、クラス全体が浮き足立っている。
そんな僕の席の周りには誰もいない。僕から話しかけに行くような相手もいないので、気配を消してスマホと財布だけ持って学食へ移動する。なんでこんなにこそこそと過ごさなきゃいけないんだ、と思うのはもうとっくの昔に辞めている。そんなこと考えるだけで無駄だ。誰かがこの役回りを全うしなければ、高校生活というのは回っていかない。
教室の後ろの方を肩を縮めて歩いていると、丸めた課題のプリントでキャッチボールをしていたクラスメイトとぶつかった。
ドスッ
「あ、悪い」
「いや、全然…」
「あれ、みずたまりじゃん」
謝りモードだった男子の表情が一転して、人を嘲るような目に変わった。
「うーわ、謝って損した」
「それ酷くね?」
「あははは!」
爆音で笑い声が響く。これがクラスの中での僕の立ち位置。皆田という名前と、雨の日に傘が壊れてびしょ濡れで学校に来たことからみずたまりと呼ばれている。僕は急いで財布からこぼれた小銭を拾い集めながら心の中で悪態を突く。
よく見てみろよ、クラスの壁の方にいる奴らとか迷惑そうな顔してるぞ。自分でモテるグループだとか思ってるらしいけど実際ぜんぜんそんなこと無いし。お前がイケメンなわけねえだろ。
実際に口に出して言う勇気も無いのに、心の中では止まらない。こんな自分が心底嫌になる。
どうせなら、死んでしまってもいいかもしれない。こいつらにひと泡吹かせてやりたい。でも、そんな勇気も結局無くて、小さい声で「すみません、すみません…」と呟きながら小銭を拾う。
そんなときだった。教室が、廊下が、白い光に包まれた。校舎全体を囲むほど大きな魔方陣。
「なによこれ!」
「写真撮らなきゃ!」
「転生?転生か!」
「馬鹿!何かの撮影だろ!」
「なんの!」
どうやらこの光が見えているのは僕たち二年三組の生徒だけらしい。
「何言ってんのお前ら」
「ついに壊れたか」
「違えよ、本当に…」
その瞬間、僕の意識はふっと途絶えた。