報告
お見合いパーティーの翌々日、早川君と黒色の電話で話し合った結果、テレビでの報告は早い方がいいよねということになり、今日の夕方にすることになった。
もはや、準備とかよいのだろうか。ほかのお見合い参加男性たちとも連絡をとってみたが、それぞれうまくいっているようだ。音居さんとか、楽器の製造をしている会社の家の娘さんと住み始めたらしいし、檜山さんは山小屋へと旅立っていったし、荷背負さんは大和交通公社のような旅行会社に携わる華族家の人と九州に遊びに行ったらしい。
ただ相当に忙しいらしく、しばらくは動けなさそうである。なお、山田君は普通に暇そうだったが、誘ったら断られた。音居さんとかバンドを立ち上げて盛り上がっているからね。
紅音の頭を撫でながら移動しているとあっという間に、テレビ局に到着である。以前来た時よりも厳重な警備になっており、警備員のような人たちが睨みをきかせている。私を見ると驚いたような顔をしているので普段男性を見るようなことはないのだろう。
お見合いパーティーとその事件については、テレビでも報道されている。ただお見合いパーティーの会場を映すわけにはいかなかったので、結果暴徒とかした野次馬たちの話がたくさん報道されてしまったというわけだ。
そのせいで、例の過激派組織たちはその扇動をしていたということで相当なヘイトが向いているようだ。また以前の男奉教信者の暴走も過激派組織によるものだとして報道されている。街頭インタビューなんかも過激派組織に批判的なものを取り上げていることから、そういう方向にもっていきたいのだろう。インターネットのない世界だとこうしたテレビやラジオなどのメディアは国民全体に非常に強い印象を与えることになる。
逆にインターネットがあると誹謗中傷の嵐になって炎上していて、私たちにも飛び火があったことを考えると、面倒なくてよかったという説もある。
「あっ、学習院さんお疲れ様です」
「早川君、今度は大丈夫そうだね」
既に三回目となってしまったので早川君との集合場所も慣れたものである。以前はたしかお見合いパーティーをすることを発表したんだったか。あの時は今思うと早川君も体調が悪かったのだろうな。今と雰囲気が異なっている。
「はい!焦らずに時間をかけた交際を心がけています」
「急激に増やさなければ大丈夫だからね」
であって即合体が悪いとはもちろん言わないが、女性の方が積極的かつ力を持つ社会では注意が必要なのは言うまでもない。
「とりあえず、お見合いパーティーはうまくいきました的な感じでアピールでいいですよね」
「まあ、そうだね。そこができればいいでしょう」
そんな打ち合わせをしながら、2人で入るのも既に3回目である。
「そういえば剣持さんがまたいるけど、早川君の専属にでもしてもらっているの?」
「あっそうなんですよ。なんか色々ルールがあるらしくて自分が出るときはついてきてくれるようになりました」
早川君が嬉しそうに話しており、剣持さんは少し恥ずかしそうにしているのが印象的である。身長が190cm程度ある剣持さんが照れていると少し迫力があるな。
世間話をしながら待機しているとあっという間に時間になったようだ。お偉方がやってきて、打ち合わせという名のおべっか祭りを適当に終わらせ本番に望む。
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有名なアナウンサーなのだろうか。毎回この人が担当している気がするね。聞き取りやすいが、感情の乗らない声の人だ。
『日本男性の会のお二人にまたもや起こしいただきました。大和中が注目する中で行われたお見合いパーティーについての結果報告を行っていただけるとのことです。それではよろしくお願いいたします』
私の見えている範囲で紅音がいるようだ。どうも、前の不審者事件から警備体制が変わったようだね。
『大和のみなさんこんにちは日本男性の会の代表の早川です。皆様のご協力のおかげで、多数の婚姻関係が成立しました。日本男性の会にとっても気になる女性を自分たちからお話できて良かったですし、身分とかに関係なく色々な女性にチャンスがあったという意味で、大和の人にとっても価値があるものになってくれれば幸いです。いくつか質問が来ていたので、そちらの返答の方を副代表の学習院さんにお願いしたいと思います』
だいぶ役割が分かれてきたね。質疑応答対応が私でそれ以外が早川君ということだね。
『はい、学習院です。いくつか質問を返していきたいと思います。一つ目【本当に一般女性とも婚姻したのですか】これがまたたくさん来ておりました。よほど信じられない出来事なのだろうなと思います。実際に、私も今回のお見合いを通じて2名の女性と婚姻しましたが、片方は一般女性ですね。信じる信じないはその人の自由ではありますが、過激な手段にでるのは禁止行為なのでしてはいけませんよ。関連して過激派組織がお見合いパーティーを中止させようとしたようですが、男性警護官によって鎮圧されました。暴力によって社会を変えてはいけません。暴力を使用する時点で残念ながら、理想があったとしても手段のせいでせっかくの理想も疑問視されることを覚えていってほしいですね。ぜひ正当なやり方でお待ちしております』
これは過激派組織に対する牽制である。日本の暴力団排除条例に近い法律が大和でも制定されるようなので、犯罪行為をした過激派は法律に則って一掃されそうかな。
『次の質問にいきます。【日本の友人に大和はおすすめできますか】というものですね。おすすめするとたくさん来てしまい日本が滅びてしまいそうなので、おすすめはなるべくしないようにしようかなと思います』
男性にとって条件は非常に良いからね。質問を見てみると、少し政治に影響しそうなものが多い。男性が回答するということ自体が珍しいからなのだろう。ただ男性を代表してしまうと問題があるのでその辺りは上手に回避していく。
『最後ですかね。【地方に遊びに来る可能性はありますか】これは男性の会としてももちろんあり得ます。お見合いパーティーに参加した人の中には行きたい場所があったからという男性もいたぐらいですからね。個人的には土佐に行きたいですね。早川君は行きたいところある?』
『自分ですか?自分は鹿児島ですかね』
鹿児島というと、島津公爵家地盤になるからかな。島津さんのところの女性と婚姻していたものね。婚姻相手の地元に行ってみたいのは一緒かな。
『あぁ桜島とかあるからね。一度行ってみたいところだね。回答としては、団体としてどこに行くかはまだ特に決めていないですね。治安なども考えながらということになると思います』
この質問はテレビ局側が選んだものだが、先ほどの質問は特に政治的な配慮がありそうだな。地方創生総合戦略などといって、男性が地方でも暮らせるようにと政府が大々的にバラマキをかつて行い、それを使って男性用施設なんかを作ったという経緯がある。
例えば前にいった水族館のように、男性が行きやすい配慮構造みたいなのが流行った時期もあったようだ。もちろん引きこもり気味の男性がわざわざ地方に行くはずもなく、大半の施設は利用されないということで腐っていたようだね。そして、その維持費に税金が投入されているということで、現在、政府が野党から突っ込まれているのを踏まえた質問だろう。政治的な駆け引きは面倒だからあまり入れてほしくないのだが、そうもいってはいられないようである。ちなみに、テレビ出演はギャラがあったらしく、おかしな金額が振り込まれていたのを確認した。具体的には茸木さんを8年ほど雇えそうなほどの金額である。たぶん不審者の件の迷惑料もあるのだろう。
『それでは質問の回答を終わりにしたいと思います。ありがとうございました』
いつも通り、早川君がお話をして終わりだね。今回は特に何事もなく終わったので良かった。というより前回の件があったから、新聞のテレビ欄に出演を伝えずに出る羽目になったんだよね。
「ん……主お疲れ様……」
「紅音、見ててくれていたけど、問題あるところはなかった?」
「ん……素晴らしかった……全国の女性が惚れたと思う……」
「それは困るね。影響力があるのは悪いことではないけど、なんでも多すぎるのは良いことではないからね」
早く日本と正式な国交でも結んでほしいものだ。
「ん……異常女性の危険度上がる……申し訳ない……」
「なにか自衛手段も持っていた方がいいかな」
「ん……スタンガンがおすすめ……大抵の男性は怖がって使えないけど主なら使える……」
男性もう少し頑張ってくれ。
「学習院様!ご歓談中申し訳ありません!お話が聞こえてしまいましたので、失礼いたします。ただしま男性省の方で男性向けスタンガンのピーアールをしておりまして、少しでも外に出る恐怖心をやわらげればと、もし使っていただけるのであれば男性省の方から送らさせていただきます!」
軍人のような声が聞こえたと思ったら剣持さんであった。今、早川君はお偉方のお相手をしているので暇になったのだろう。
「なるほど、紅音どう思う?もらうことで問題はある?」
「ん……性能がわからない……男性省のPRに使われる可能性もある……」
「いえ!もちろんPRという側面もありますが、男性でも持ちやすいように軍用や男性警護官用と異なり約200gと軽くしてあります。しかし威力は問題ない62万ボルト出ますので、相手は間違いなくひるみます」
今軍用とか聞こえたけど、そうか市販用のものがないのか。ほぼ女性だけの社会だから女性がもつということがあまりないし、男性は男性警護官がついているからかな。男性がビビって持てないというのもなんとなくわかる。そういえば紅音が持っているのも以前見せてもらったところ、棒のタイプだったけど電気はおまけといってたしね。
「ん……威力は十分……紅音と万が一離れても威嚇だけでも時間を稼げる……主なら当てることもできる……逃げるのに有用……」
男性省のPRとしてスタンガンはどうなのかとは思うが、まあ現状男性を襲う場合男性警護官をなるべく排除して無防備な男性を狙うわけだから、男性が抵抗できるとなるとまたリスクを上げることができて、犯罪抑止にも繋がるだろう。
「わかりました。剣持さん、いただいてもよろしいですか?使用の感想が必要でしたら、その程度は送らせていただきますよ」
「ありがとうございます!男性省としても助かります!」
男性がいなさすぎるからね。これは困るわけだよね。
「そういえば、早川君とはどうですか?」
「は、早川様でしょうか!ど、どうとはなんでございましょう!」
途端に慌て始める剣持さん。早川君のこと相当気に入ってそうだな。早川君も剣持さんの胸をちらちら見ている。気づいてないのだろうか。
「いや、早川君は手が早いから気を付けてと言おうと思っただけだよ。あまり言うと大和だとまずいことになりそうだからやめるけどね」
大和だと手が早いの意味は、仕事が早いかすぐ殴るのどちらかである。日本みたいに女性に手を出す男性という意味はない。
「ちょっと学習院さん、聞こえましたよ。前のあれはたまたまですよ。普通はそんなことしませんって」
「どうだろうね。男性警護官は自分からというのは職務上言えないらしいからね。日本ではどうだったの?」
「そ、そうなんですか。日本ではそれは彼女がいたときもありましたけど、でもこう相性ってあるじゃないですか」
早川君が日本で彼女がいたというと、どこからともなくまたお偉方が現れて根掘り葉掘りと聞かれ始めた。まあ、時間の問題だろうな。ただ鴻池の時のように単独じゃないから犯罪行為をされることはないだろう。
お世辞を投げるのが仕事になっているテレビ局のお偉方や早川君の好きそうな胸部装甲の厚い女性を相手にする早川君を適当にあしらいつつ紅音と先に帰ることになった。早川君は一人で楽しそうにしていた。




