お見合いパーティー1
早くもこの日が来てしまった。お見合い大会とでもいうべき日である。私個人としての目標は権力的なバランスとりであるが、他の人たちにはまた別の目標があるので変な方向に持ってかれないように注意したいところだ。
ちなみに、個人的に1人はほぼ確定である。華族家の分家の子だ。年は25と私と1つ違いで身長も145cmである。分家なので爵位はないが本家とまだ近いというより、当主の姪っ子にあたるので問題ないだろう。あまり考えたくはないが、最悪長宗我部家が暴走しても抑えとして期待できる。抑えというのは置いておくだけで効果があるものなので、これで二凧とその子でバランスが取れることだろう。
「本日は皆様よろしくお願いします」
「は!私剣持が今回の警備隊長を任されております。お任せください!」
剣持さんが今回も引き続き対応してくれる。たぶん、担当が彼女になっているんだろうね。
さて私が呼んだのは3人、1人は確定として、他にも2人招待状を出したが、1人はアルバイトで生計を立てているということで来ることができるのかすら不明だ。目が隠れていて顔は見えなかったが、暗い感じの子であった。ご飯をあまり食べてないのか痩せすぎである。おそらく、小さいと好まれないということから、あまり良い人生を送れていないのかもしれない。良いとは言えないが同情というやつも含まれるし、完全な一般人がどういうものかを見たかったというのもある。
フリーターというと、バブル期以前ぐらいは、積極的なフリーターがあり所謂、自由な働き方みたいなイメージもあった。現代でも夢追人のような人はフリーターをしながら、好きなことをして生きている人もいる。そういう積極的な人もいれば、他に何もできずフリーターをしている人もいる。彼女がどちらなのかはわからないが面白い話が聞けることだろう。
最も本人が困っていた場合、中途半端に手を伸ばしたものが1番恨まれるという法則があるので悩んだが、一般の人からもという可能性を見せたかったので入れた。今回は3人であるので最悪なんとでもなる。
最後の子はなんというか、うん、個人的興味から呼んだ。身長が133cmという応募者の中でもっとも小柄であったが、そこだけよりよさらに目立つ要素があった。アルビノでもある。真っ白な髪に真っ白な肌、真っ赤な瞳である。
アルビノという生まれつき色素が少ない状態であり、程度にもよるがこの子は完全な真っ白で目も血管が透けてて赤なので、色素が全くないと言っていっただろう。一見、綺麗で可愛いだけで得しかないように見えるが、目の色素もないので弱視の可能性が高く、意外と生きるのが大変でもある。
早めに会場に入り最後の打ち合わせをする。今回の司会は私と早川君と途中で音楽を披露する音居さんだ。音居さんは20人呼んでいるがバンド仲間として楽器を弾いて選ぶらしい。念のため、男性省には男性警護官を多数配置してもらっているし、紅音のところの忍者の男性警護官も一部雇って配置している。過剰なように見えるが、昨今の不審者、男報教の件や鴻池事件での信用失墜なんかも踏まえた措置なのだろう。
参加者の受付を私と早川君で行っている。もちろん男性が受付をするということ自体がそこまでないようだ。そこまでというのは、日本で受付に美人な女性にやってもらうように、男性にしておくと揉め事が少ないのでそこにいてもらうということがあるらしい。置物かな。
思い思いの服を着て覚悟を決めた女性たちが受付で度肝を抜かれたのか、こちらの顔を見るたびに驚いている。たまに三度見ぐらいされるので面白いね。ここまでいくと流石に襲ってくる人はいなかったが、鼻息荒くなっている女性はいた。興奮により心拍数が上がり、呼吸が乱れるのは脳からの正常な刺激だから仕方ないことだろう。まあ慣れだよ。
多くの人が一般人ということで鴻池パーティーのように服装がゴテゴテということもなく、借りてきたのだろうドレスをきている。緊張しているのか借りてきた猫みたいになっている人も多い。特にガタイの良い筋肉ムキムキの女性なんかがしおらしくしているのはなんとも奇妙な光景だ。
招待状に私服での参加可とかいたのだが、流石に私服で来る人はいないかったようだ。私服可にしたのは、経済的状況を考慮して服装が用意できないから来られないということを避けたかったのである。実際に服装が私服だからといって、こちらが何かをするということもないが、1人だけ私服とかだと浮いてしまうのはやむを得ない。
そう思っていると、小さい背丈で目隠れの女の子、茸木希乃子さんである。黒っぽいガチガチの私服を着ている。たしかに1番、経済状況が悪そうだった。いや、山小屋の姉ちゃんみたいなのを檜山さんは呼んでいたからそこと良い勝負だろう。
「うひっ、ひぃ、あの…茸木 希乃子……」
半分過呼吸になりかけている。
「落ち着いて茸木さん、深呼吸、吐いてから吸うんだよ」
「うひっひっ、ひぃ、はぁはぁはぁ」
とりあえず受付を早川君に任せて席に連れて行った。茸木さんには苦しい場所だったようだ。二凧が心配していたのはこういうことかもしれないね。
受付に戻って、5分もしないうちに小さな天使が舞い降りた。天使は全身が真っ白でドレスも白であった。見た瞬間につい固まってしまった。写真とは異なり、実物で見るとあまりにも白く美しく可愛らしかったからだ。天使や妖精といった言葉がこれほど似合うことはないだろう。自分にこのような感情があったことに驚愕である。
「申し訳ありませんが受付はこちらでしょうか?私、白椛百合と申します。招待状をいただいたのですが、間違ってはないのでしょうか。本当に私がこのようなパーティに来て大丈夫なのでしょうか……」
「受付はこちらであってますよ。あなたを呼んだのは私ですので間違いありませんよ」
あまりにも美しく眩しい女性であった。小さく子どものようであるが、二凧のようにしっかりしている。可愛さと美しさの同居と言っても良いだろう。正直に言って自分の感情がここまで揺さぶられることに驚いている。
しかし、落ち着いて対処しなければならない。コントロールできない感情などないのだから。
「え、男性の方ですか、す、すみませんでした。私は目が少し弱くて大変申し訳ございません」
頭を地面につけるかのように下げてしまう。この子も随分と自己肯定感が低いようだ。この美しさでこの自己肯定感の低さ……男性に選ばれるかどうかで差別をするのは本当に良くないと思うね。そのような立派なことが言えるほど差別をしていないのか言われれば全くそんなことはないが、少なくとも目の前の困っている人に声をかける程度はできるようになりたいものだ。
「そんなに頭を下げる必要はありませんよ。アルビノの方は弱視の方が多いそうですね。眼鏡をかけても視力が上がらないのだとか」
「はい……よくご存知ですね。お声と見た目からもし間違っていたらすみません。学習院様ですか?」
「その通り。学習院学だよ。よろしくね」
固すぎるので敬語をとる。少し緊張が崩れてくれるといいが……
「あ、あのテレビで拝見しました。今日はお目見えできるのを楽しみにしておりました。誠に嬉しい……です」
そういうと涙をポロポロとこぼし出す。アルビノの方は紫外線に弱く少し外を歩いただけでも紫外線で目が刺激され涙が出てくるという。
「大丈夫?外の紫外線にやられたかな?あと会場が眩しすぎたらサングラスとかしてね。申し訳ないけどこれ以上照明の光度が下げられなくてね。暗いと危険だからということで男性省からNGが出たんだ」
「白子症のことをよくお調べになられているのですね。今のはお会いできて嬉しくて涙が出てしまったのです」
嬉し涙だったか。赤い瞳から流れる涙もまた美しい。はぁ、欲しい。
いやこのような考え方は良くないだろう。相手は独立した個人である。私のものではない。所有欲みたいなものを否定するつもりはないが、基本的に人に向けるものではない。もし向けるのだとしたら十分に自覚的にあるべきだろう。
「それは読み違いだった。申し訳ないね。テーブルは2番なんだけど、そこまで案内しよう」
「お気遣い感謝します……」
テーブルの数字が見えなかったのだろう。視力は思ったよりも低い。0.05ないぐらいかもしれない。
白椛百合さんの登場で動揺してしまった心を鎮めるように、無心で受付をしていると、あらかた揃ってきたようだ。各テーブルに人が並び終わる。私のところのテーブルだけ身長感が完全に小学校なのだが全く気にするつもりはない。既に男性組にはカミングアウト済みだ。
周りを見渡すと荷背負さんのところだけ学校のような、配置になっているし、音居さんのところは楽器が並んでおりどうみてもオーディション会場である。檜山さんのところは普通なように見えて、なぜか山の写真が大量に置いてある。早川君のところは、うんでかいね。女性が大きいんだよね。そして、特徴がないのは山田君のところである。安心ができる。
最初の司会は、早川君である。受付を終えて、私が席につくと、ボーイッシュな女の子が二凧と話している。今回は婚姻相手を隣に置いておくという方針にしてある。
「学さん、なかなか個性的な方々を集めましたね」
汎用個性の人って面白くないからね。
「私の趣味が尖りすぎてたかもしれないね。あっ後で確認するけど、政府がお見合いの様子を事業をやった証として写真に収めるんだけど、どこかの冊子に乗るかもしれないから、もし写りたくない人は言っておいてくれ」
反応はないと。茸木さんはフリーズ、白椛さんは大丈夫というように首を振っている。そして最後、あの最上家の分家にあたる子のようだ。
「俺は大丈夫だぜ!やばっ、大丈夫です」
「最上響さんだね。敬語じゃなくていいよ。私も既に敬語は解いたからね」
「いやぁ助かるぜ。こんなことならちゃんとした挨拶練習しておけばよかったぜ」
どうやら二凧と同じく背が小さいのでもはや婚姻諦めて好きなことをして来たらしい。ということで俺っ子の男言葉である。最も、大和の男性はこんな言葉を使わないようなので、荒っぽい女性言葉というニュアンスらしい。
最上家に関しては調べたところ日本だと江戸時代で改易され小さくなってしまい、明治維新後も華族になれなかったが、大和ではどうやら違うらしく山形の長として現代でも力をもつ華族のようだ。本家は伯爵家のようで最上伯爵といえば地元で負けなしだろう。長宗我部家とは特に関わりがないこともわかっておりその点からも問題はない。こちらも有名な家なので、教育をきっちり受けた堅苦しいのが出てきたらどうしようかと思ったら、フランクなようでラッキーだ。
華族家の親族と天使と一般人からなるお見合いパーティーの幕開けである。




