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貞操逆転パラレル日本の比較文化記  作者: バンビロコン
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男性専用病棟

 水族館から帰ってきた後、吉田さんから言伝があった。どうも、早川君から電話があったらしく折り返してほしいとのことだ。たしか、彼は入院していたはずだが、また何かあっただろうか。そう思い急いで連絡を取ることにする。


『もしもし、早川君、何かあったの?』

『あっ学習院さん!!いや、前男性と繋がりを作る団体を作ろうという話をしたじゃないですか。その件でちょっと話というか、アイデアが欲しくて、色々準備したので病院に来てもらったりとかできないですか?できれば明日とか……』


 やはりまだ、病院に入院しているのか。まあもちろん、それに関しては問題はない。男性の団体はあった方が今後の展開として有利になることだろう。鴻池のような不幸な自体を避けられるはずだ。


『わかった、明日向かおうか。何か必要なものはあるの?』

『えっ明日来てくれるんですか。ありがとうございます。準備はあっスマホとかは持ってきてください。あと自分のスマホ直りました。スマホでも連絡とれます!』


 どうやらスマホが治ったらしい。それは良いことだが、どうやって直したのだろうか。というか壊れたことに鴻池にされたのでは……まあいいだろう。

『わかった。明日向かう。昼過ぎかな』

『はい昼過ぎでお願いします』


 電話後、吉田さんに明日、早川君のお見舞い兼相談に行くというと、見舞いの品を用意してくれるようだ。ちなみに、クリーム大福を用意してくれた。あまり華族の用意するお見舞いに思えないのはなぜだろうか。


 次の日、予定通り、早川君の入院している男性区の中にある男性専用病棟に行くことにする。

 病院の前は異様な雰囲気が漂っており、なぜか路上に正座をした女性たちが並んでいる、

「紅音、あれはなにかわかる?」

「ん……たぶん活動家……」


 活動家か……よく見てみると【日本人男性の皆さん大和女性がすいません】というような看板を持っている女性たちがいる。大和にもああいった輩もいるのか、果たしてどういった属性の人たちなのかは気になるところだが、たぶん看板を出すより、近づかない方が被害者のためになるような気がするが。


「あれは一般人なの?」

「ん……たぶん男性保護系の団体のなにか……前に言った表現規制系もあのタイプの人たち……」


 何かの保護を掲げる人は、大抵何かの排除を目論むことが多い。例えば子どもの保護のような大義を掲げるが、全く子どものことを考えないということがよくある。実体の子どもよりも理想の子ども像を追ってしまうからそうなる。


 怪しい活動家たちをスルーし、フロントで、早川君のお見舞いに来た旨を伝えると、「ご予約はされていますか」と3回ぐらい確認された。

 

 日本人男性ということで警戒しているのだろうか、それとも早川君が伝えていないのか、はたまたその両方なのか。紅音が「主は鴻池事件の解決した例の男性……」と小声で伝えると、即座に態度を変えて病院内に入ることができた。

 なぜそれで入れるのだろうか。まあ関係者であることがわかったからかな。というより、お見舞いの件を早川君は病院側に伝えてないのかね。頼むよ……


 病室に入ると、暇だったのだろうか。早川君がニコニコで出迎えてくれる。

「いやあ、学習院さんよく来てくれました!もう暇で暇で最悪ですよ」

「それは災難だったね早川君、それにしても、お見舞いがくることを病院側に伝えないと、止められて大変だったよ」

「えっそうなんですか?すいません。全然気づきませんでした!」


 まあ病院がここまで厳重なのは私も知らなかったので強くは言えない。

「まあいいんだけど、それで団体の件で話ということだったけど、何かあるの?」

「あっ、そうでした!えっと、あれから、充電器が壊れただけみたいで、日本大使館からケーブルをもらったら、スマホが復活して帰ってきたので、知っている人に連絡を取ってみたんですよ。そうしたら、やっぱりほかの男性も結構悩んでいるみたいで、明日病院に集まってくれることになったんです、5人ほど……それで急遽集めたのは良いんですけど、何をしようかと……」


 早川君はあれだね。行動は早いけど中身は考えてないタイプというか、言葉で先に人を安心させることを優先させるタイプなんだね。

 まあ破滅的な行動をとりがちなタイプと言われるんだけどね。


「そうだね。まず、私たちがやらなければならないことは、一つに大和の常識の擦り合わせだね。異文化理解と言っても良い。知らずに突っ込むと早川君みたいになるからね。次に連絡体制というか拠点も作った方がいいだろうね。困った時はここに連絡すればよいという場所が必要だろう。互助会なのだから。そして、男性の悩みをまとめておいて解決策も考えておいた方がいいだろうね」

「えっと、大和の知識と拠点と問題の解決策ですね。えっでも今ひとつもないですよ!」


 それを考えるのが早川君の役目なのではと思ったが、まあいい。

「知識と拠点はとりあえず後回しでいいだろう。早川君が聞いた男性が抱えてる問題、悩みはどんなのがあった?」

「あっそうでした。なんか、自分のしたいことができないとか、あの登山が趣味の人とかが異世界の山に登りたいらしいんですけど、部屋から出してもらえないとか、歓待を受けているのは良いけどなんか性に合わないとか。あとは、音楽性の違いとかですかね」


 ホームステイ先のミスマッチとでもいうべきことが起こってるのかな。山好きの人や、船で曲を鳴らしていたバンドマンみたいな人だとなかなか窮屈なことだろう。元々、自由を求めるタイプの人間だと保護されるというのは自由を奪い去っていると考えてもおかしくない。


「感覚の違いというのもあるが、ホームステイ先の人たちというのは、日本人男性と婚姻して残ってもらいたいと考えている。だから危ない所には連れて行きたくない。一方で私たちはやりたいことをやりに来ている側面が強い。そうした意識の違いが、ミスマッチを起こしているのだろうね」

「そうですよね。どうすれば良いんでしょう」


 手っ取り早いのは婚姻の約束をしてこちらが手綱を握ることだね。

「そうだね。早川君は、これから先どうするの?新しいホームステイ先を探すの?」

「ホームステイについては、なんか首相の家に泊まることになりました」


 何を言っているんだろうか早川君は……

「どういうことだ……」

「えっとなんか首相が謝罪に来たんですけど、安全なところでホームステイを続けたいといったら首相の実家に住むことになりました」


 鴻池事件は大きな事件になっているようで、ホームステイそのものにも揺らぎができたのだろう。それで動いたのかもしれない。

「首相のところはホームステイが来てなかったの?」

「あっそれ自分も思って聞いたんですけど、公平のために辞退していたらしいんです」


 民衆からの反発が怖かったのだろうか。民衆院は完全に普通選挙となっていて15歳以上の男女に選挙権がある。戦前の日本に比べると銀帝国の立憲君主制を参考にしているのか、天皇の権限はかなり抑えられているので、その分、首相の権限は強い。そのため、国民からの目は相当に厳しい。


「そうなると拠点に関してはなんとかなりそうだね。公民館とかでもいいし、オフィスを借りるのもある。ただオフィスにするとお金の問題が出てくる。金が絡むと女性の権力が入ってきてしまうから、めんどうだね」


 金を出資してもらうと、そこの力が強くなるからなるべく避けたいところだ。しばらくは政府の出す補助金などを申請してやり過ごしてもいいが、内容的に社会的に利益の高いものだからね。


「拠点はなんとかなるかなって勝手に思ってました!」

「拠点は最悪、私のところを貸してもらうけどまずは他から考えようか。あと早川君がもし大和に残るなら婚姻相手が必要だね。簡単に断れるとはいえ、日本男性的な感覚では大切に選びたくなるよね」

「はい!自分は大和に残る気満々なんですけど、流石に前みたいに良いようにされるのは嫌ですからね……」


 日本は恋愛結婚が強く、既に家同士の結婚のような政略結婚はほぼなくなったが、大和ではむしろ政略結婚が普通である。

「となると、全然違う家柄の女性2人と婚姻しておくのが良いだろうね。片方がやりたい放題できなくなるからね」

「そうですよね。でも女性と知り合う機会とかって、そうかパーティをすれば良いんですね!」


 早川君が勝手に結論に辿り着いたようだ。ミスマッチがあるというのであれば、マッチングをすれば良いだけのことではある。マッチングアプリのようなものが日本にはあるが、結局互いが求める条件の問題である。日本では結婚意欲が下がってきているので、上手くマッチングできるとは限らないが、男女比が歪なおかげで入れ食い状態であるため、募集さえできれば、こちらの要望は通りやすい。


 これは他の男性の悩みとも共通だろう。もっとも日本に帰りたい男性には関係ないことだけどね。


「お見合いパーティというやつかな。他の男性の悩みとも共通して解決方法になりそうだね。例えば幅広くジャンル問わず、呼びかけるのであれば、テレビなどを通じて公的に募集をかけて、そこから履歴書みたいなのでも送ってもらい、選んだ人にだけ招待状を送るということをしてもいい」

「テレビで募集してそんなくるもんなんですかね」


 大和でのテレビの普及率は95%である。大和政府の統計調査なので概ね間違いないだろう。

「むしろ、集まりすぎるかもしれないね。まあそれは置いておいて、この団体の活動の第一弾ということでどうかな」

「お見合い団体と思われそうですけど、でも今やるべきことは女性関係ですもんね」

「厄介な世界だよ。女性が多くて男性がマイノリティということはね。男性がイニシアチブをとるにはこうやって社会を揺らしてあげるしかないと思うね」

「わかりました。とりあえず明日は男性の話を聞いて、とりあえずお見合いパーティに誘えば良いですよね。でもその前に、学習院さんになぜそれが必要かとか常識の違いとかをみんなにレクチャーして欲しいです!自分そういうの下手なんで!」


 司会役が早川君は得意なのだろう。説明するには荷が重いと思っていそうだが、そんなこともないと思う……

「それでいいよ。では司会をよろしく。明日、お見舞いというなの集まりをするなら病院に報告をしてついでに場所も貸してもらおうか」

「そうですよね。それはやっておきます」


 そんな話をしているとちょうど、コンコンとノック音が聞こえる。早川君がどうぞと答えると、和服の女性が入ってきた。どこかで見覚えのある顔だ。

「あっ犬養首相!」


 犬養首相?五・一五事件で暗殺されそうな名前だ。記憶を探ると、たしか大和国に着いた時に港にいた女性だと思い出す。犬養ということはあの暗殺された犬養毅と関係があるのだろうか。まあ単に政治家の家系というだけかもしれない。


「早川さん、お元気そうでなによりです。少し外で話を聞かせていただきました」


 部屋の外で首相が盗み聞きというのは外聞が悪いのではないか。

「学習院さんの公募でお見合いをかけるのは良い案ではあると思いますが、大いに混乱が見込まれます。どうでしょう、一度お二方で先ほどの経緯をテレビで説明してから、募集をかけるという方がいいと思いますよ」


 普通の募集だとそこまで混乱するのか。そのあたりは今までもおこなっていそうなものだけどね。

「ということは、お見合いの公募は今までにないと?」

「ありません。一般的に男性は女性と婚姻するのを嫌がりますから、基本的に婚姻というのは資産的に裕福な女性とするものです」


 この人も政治家なのにオブラートという言葉がないタイプのひとだな。そういえば侯爵もそうだったね。しかし、嘘でないのはわかる。

「それはわかりますが、日本から来た男性というのは大半が一般男性なのですから、一般女性の方が感覚的には合うという場合もありますよね。私はたまたま長宗我部家が感覚的に合う家でしたが、他の日本男性も皆そうだとは限りません。ミスマッチは互いの不幸でしょう」

「えぇ、まさにその旨を発信していただければ、国民も納得することでしょう。日本男性から公に説明があるということは、鴻池事件の解決にも必要なのです」


 なるほど、話題に話題を被せたいのか。

「そういえば鴻池事件ってどうなりましたか?」

「そうでした。今日はその件について早川さんにご提案があったのです」

「え?なんですか?」


 沈黙を保っていた早川君が突然振られて驚いたようにしている。話を聞いていてくれ。

「まず鴻池薫子については男性保護法違反など複数の罪で逮捕されました。起訴されて懲役刑は確定でしょう。鴻池家当主は責任をとって代替わり、新当主は被害者に謝罪を込めて屋敷を渡すといっています」

「屋敷ってなんのですか?」

「早川さんが住んでいた屋敷です」


 早川君が住んでいた屋敷ってあれか、監禁種馬部屋のことか。不良物件を押し付けられているだけだね。

「え?いいんですか?」

「いやいや早川君、どう見ても事件のあった曰くつきの物件を売れもしないから押し付けられているだけでしょう」

「え?そうなんですか?」

「まあ、そもそも受け取ってもらえないだろうと思っていっている節はあるでしょうね。被害のあった場所とか見るのも嫌と考えるでしょうから」


 性被害にあったのニュアンスがかなり重く捉えているようだしね。

「あの屋敷デカくて良かったですよ。別に金で売られたのが不満なだけで、性被害っていうんですか?それはそこまでですからね」


 美人な女性に迫られて断れなかっただけだからね彼は……

「首相、鴻池としては名誉回復を狙っている感じですか?」

「まあそうでしょうね。お金で提示してこないのは鴻池財閥の関係会社の株価が急暴落していてお金が出せないからだと思いますよ」


 お金で解決しようとした方が早川君怒りそうだけどね。

「まあ、先日、日本大使館でも聞きましたが、日本でも報道されて大和のイメージ悪化は避けられませんしね。ハーレム作ったとか、女性たくさんあてがわれましたとかは全く揉めないと思いますが、お金で売られたというのだけは間違いなく過剰に反応すると思いますよ。しかも本人が知らないところでというのは印象悪いですね」


 日本では、おそらくお金で知らずに売られたが一番反応するところだろう。人身売買に対しては厳しい国民性である。

「はぁ……国民は暴動寸前ですよ。言い方悪いですが日本人男性は女性の希望なので……そういう意味では、お見合いの件は非常にありがたいものです」

「とは言っても明日の話し合い次第ですけどね。早川君良かったじゃないか。鴻池から屋敷もらえれば拠点が手に入るよ。男性が売られた場所で男性の主張を発表する団体の場所にするのはある意味縁起がいい」

「あれですね。物語があるってやつですね。いやあ世の中うまくいくようにできているもんですね」


 何をやるにしても建前というのは必要である。

「貰うということで手続きしておきますよ」

「お見合いパーティするなら、明日には話をまとめておかないといけないね。全く面倒な」


 そこからの話し合いで、首相がバックアップというか、大和政府が団体の活動を支援してくれることになった。なにやら国際社会向けのアピールポイントとして、男性活動支援みたいな枠組みがあるらしく、その枠組みを使ってもらえるらしい。


 大和政府であれば、国民へのリークという必殺技があるので、無法なことはできないだろう。

 それにしても、税金でお見合いするってことですかね。まあ、男女比がおかしいから税金でお見合いぐらいさせるか……男性関係は経済への刺激が大きそうだし、税金投入もわからなくはない。

 首相としてはいくら規模が大きくても問題がないと考えそうだし、早川君もそのあたりは無頓着だ。規模に関しては私が調整するしかないだろう。はあ面倒なことだ。


 二凧に相談するしかないか。

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