相討ち
床に散らばる、ふたり分の鈍い赤。
……さむい。
もう力も入らないし、どこにも感覚がなかった。
わたし、しぬんだ、なぁ。
他人事みたいにそう思いながら、斜めになった視界をぼんやり見渡した。
同じく床に倒れ込んだまま動かない、先に逝ったあいつを確認する。
よかった。よかったよ、わたしはちゃんとやれた。
後悔なんてどこにもなかった。
だけどね、もし贅沢を言うのなら、言ってもいいのなら、褒めてほしいかな。
よくがんばったねって、えらいねって、頭をなでて、たくさんたくさん、ほめてほしい。
そして、おやすみのキスをもらうの。
子供のころみたいに。
そしたら本当に、わたしは笑って去れそうな気がしたんだ。この世界を。
もう感覚がないのに、自分が泣いていることが不思議と理解できた。
自分が泣きながら死んでいくなんて、想像もしていなかったな。
そんなことを考えながら、だけどそれってなんとも人間らしいことじゃないかって、すこしだけ、ほんのすこしだけ――笑って死ねる気も、した。
ふふふ、