表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

8/89

7話

 


 スタジオ『スターズ』に到着すると、そこには深宙の姿があった。道中出会った有栖さんを紹介しようと、深宙の名前を呼ぶ僕。しかし、この後に衝撃的展開が待っているとは露とも知らなかった。


「春くん!やっほー!......って、え?」


 その時、隣の有栖さんも小さく「え?」と洩らした。


「なんで、冬花ちゃんが春くんと?」

「......も、もしかして......あの性悪と知り合いなんですか?」

「え、性悪!?」

「......はい、これは彼女とのネット掲示板での出会いに遡ります......」


「まって、冬花ちゃん!その話はストップ!!」


 慌てる深宙。声を荒げるのは珍しい。しかし、となりの有栖さんはニタリと邪悪な笑みを浮かべて、話を続ける。


「あの人、ネット掲示板の住人ですよ。私のことめっちゃ叩いて悦に浸ってました」

「誰が!!あれは冬花ちゃんが喧嘩を売ってきたんでしょ!!へなちょこギタリストとか言って!」

「それは、私のコクトウくんを馬鹿にするから!」

「してないよ!『黒糖が好きだからベースの名前にコクトウって付けるのはおかしいかもね、お菓子だけにw』ってつっこんだだけだよ!」

「くっ......だって、好きなんだもんッ!仕方ないじゃないですかッ!!」


 ぐっ、と拳を握りしめ体をぐぐぐっと力を溜めるよう屈める有栖さん。しかし僕の袖は離さない!


 って、いやなんだこれ!?なんの話してんだよ、これ。てか、知り合いだったのか深宙と有栖さん。


「ま、まあまあ、二人共落ちついて」


 僕がそういうと、二人共ふぅーっと深い呼吸をし静かになる。

 ワンテンポおいて落ち着きを取り戻した深宙が話し出す。


「......えっと、どうして春くんは冬花ちゃんと一緒にいるの?」

「あ、ああ、それは」


 と、ナンパ男との戦いを語ろうとすると、未だ袖を掴み続けている有栖さんが得意げに口を開いた。


「......ふふん、この方は私を悪しき魔の手から救ってくれた騎士(ナイト)なんです......!」


 ちょうど深宙の後ろを通った若い女性二人組み。ちらっとこちらを一瞥し過ぎ去って行く。


「な、ナイト?」

「そう!騎士(ナイト)です!この人は、私の騎士(ナイト)ッ!!」


 声高に叫ぶ有栖さん。ああ、なるほど。さっきまでは人見知り全開だったから。身内のような深宙に対してはこうなのか。ていうかとりあえずさっさとスタジオ入ればよかったかも。さっきの通行人、「ナイトって、ぷっ」って笑ってるし。


「ちょ、ちょっと、有栖さん!ストップ!静かに!」


 目立ちたくない一心で、僕はつい有栖さんの口を塞いでしまう。


「んむっ!?」


 察してくれたのかコクコクと頷きこちらに視線を向けてくる有栖さん。塞いでいた手を離すと、「うるさくしてごめんなさい」と謝ってくれた。素直だな。


「てか、僕はナイトなんかじゃない。は、恥ずかしいからそれやめてくれるかな」

「......わかりました......」


 ふむ、と考える有栖さん。やがて頭上に電球が煌めき(イメージ)僕に素敵な笑顔をみせた。


「では、お兄様......!」

「えっ」


 いくら妹っぽいとは言っても、お兄様は......ナイトよりぎりぎり有りか?

 その時、深宙が有栖さんに口を開く。


「いや、冬花ちゃん、同い年だから。春くん」

「え、そうなの!?」「え、そうなんですか......!?」


 僕と有栖さんは顔を見合わせる。


「......ちなみに、今日集まってもらったバンドメンバー。ボーカルの春くん、そして、ベースの冬花ちゃんだよ」


 無言で見つめ合う僕ら二人。


 この銀髪少女が、僕らのバンドのベース。


「よ、よろしくね、有栖さん」


 そういうと彼女は驚いた表情のまま、「......あ、えっと、はい......こちらこそ、お兄様」とつぶやくように言った。


 その顔の真意はわかりかねるが、おそらく「あれ、女性メンバーじゃないの?」とかそんな胸中なのだろう。なぜか得意げな表情の深宙も謎だけど。


 と、その時。


「よお、秋乃」


 背後から女性の声がして、僕は振り向いた。そこには有栖さんとは対象的な僕より頭一つ分くらい高い、長身モデル体型の美人が立っていた。


「......ん、誰?」


 僕と目が合うと彼女は首を傾げる。


「夏希ちゃん、丁度良いところに!紹介するね。こちら、うちらのバンドのボーカル、佐藤春くん!で、そちらドラムの黒瀬(くろせ) 夏希(なつき)ちゃん!」


 先程と同じように僕と黒瀬さんと呼ばれる方が顔を見合わせる。心なしか驚いているように見えた。


(......なんか、有栖さんと同じ反応......)


 夏の熱気に焦がされたかのよう、深く黒色の美しい髪。それをポニーテールで括っている。美形な顔立ちで、少しあがっている目尻に気の強そうな印象をうける。


 服装はボーイッシュな感じで白のパーカーにデニムの短パン。スラリと伸びる健康的な色合いの脚が恐ろしく眩しく、そして美しい。


(身長差あって見下(みおろ)されてるせいか、圧がすごいな......)


 あまりの眼力に何も言えず視線をそらす僕。彼女は「は?男......?」と困惑した声を洩らした。

 これは顔合わせが失敗に終わるのではないでしょうか。僕を受け容れられないようなムードが漂い始めてる。気のせいでなければ。


 黒瀬さんが深宙に向き直り聞く。


「......なあ秋乃、マジで大丈夫なのか?」

「うん、勿論!最高のボーカルだよっ!!」


 またしても得意げな深宙さん。どこからその自信がくるの。

 どう見てもこの有栖さんと黒瀬さん二人共嫌そうじゃんさー。


「まーまー!立ち話も何だし、スタジオはいろーよ!詳しい事は演奏で!ね?」


 そう促され中に入る。振り向き見た空は雲が立ち込め、アスファルトに暗い影を一粒落とした。








【とても重要なお願い】

先が気になる!執筆頑張れ!と思われた方はブックマーク登録と広告の下にある

☆☆☆☆☆を★★★★★にし評価して頂けると嬉しいです!

執筆のモチベになり頑張れるので、よろしくお願いします!



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ