表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
71/89

70話

 



 ――彼女と初めて出会ったのは、近所の公園。当時、小学一年生だった僕は彼女に一目惚れをした。


 一人ブランコを漕ぐ、小さなお姫様。綺麗な茜色のワンピースと、黄金の麦わら。映画の中から飛び出してきたかのようなその少女はぼんやりと地面を見ていた。


「あの、何してるの......?」


 どきどきしながら、僕は話しかけた。突如現れたお姫様。だからここで声をかけておかなければ、もう二度と会えない......そんな気がして思わず声をかけていた。


 突然話しかけられ、驚いたのか彼女の体がびくりと跳ねる。そして、まるで天使のような微笑みと共に可愛らしい声で、一言こう言った。


「気安く話しかけないで?」


 ニコニコとした顔とは正反対の拒絶。僕は生まれて初めての、はっきりとした拒絶だった。僕はこう返す。


「うん!......でさあ、ブランコって楽しいよね!君もすきなの?というか君の名前は?どこの子なの?」


「えぇ......」


 どんびきされた。


 僕はこの頃空気を読めなかったのだ。いや、空気は読むことができるのだが、それよりも気になることがあるとそちらへ集中してしまう質だった。まあ、そんなこんなで後にクラスでハブられてしまうわけで、けれど一人遊びが大好きだった僕には特に問題なかった。けれど彼女はそうもいかない。じろりと睨みつける彼女。


「......!」

「話しかけないでって、言ってるでしょ?聞こえないのかなぁ」


 苛つく彼女。けれど僕は少し不思議だった。なぜなら彼女の表情を読むにそうは思えなかったからだ。


「でも寂しそうにしてたよ」


「......え」


 険しい顔が一変し、彼女は目を見開く。僕はこの時思う。この子はどんな顔をしていても美人さんなんだな、と。


「べ、べつに寂しくない。なんでそんな事いうの」


 プイッとそっぽを向く彼女。僕は隣のブランコへ座る。


「えー、そうかなあ。まあどっちでも良いんだけど」

「えぇ......」

「君さ、WouTubeとかってみる?僕は好きなチャンネルがたくさんあるんだけどね、最近はアニメを見てるんだよねえ」

「......」


 相変わらず不機嫌そうな彼女。しかし立ち去らないということは嫌われてもいない。そう僕は判断し、どんどん話を進めていく。


「その中でも最近のブームは、バンドアニメ!四人でバンドを組んでライブするんだ」

「......バンドアニメ......」


 彼女が反応した。


「そう、バンドアニメ。みたことあるかなあ」

「......ひょっとして、【孤独のロッカー】?」

「そう!わあ、君も知ってるんだあ!」

「わ、わたしも好きだから......」


 アニメ、【孤独のロッカー】は女性四人がロックバンドを結成し、絆を深め成長していく物語だ。僕は小さいながら、彼女らの弾く楽器と歌声に惹かれ、なんども繰り返しアニメを観ていた。


「すっごくカッコいいよね!君は誰が好き?僕はねえ、あのギターの子が好きなんだよねえ」


 ギター担当、『藤後はてら』という女性キャラは一言で表すならギャル。一人称はあたしで髪は茶髪にウェーブがかかっている。


「わたしも、そのこ好き」

「おお、おんなじだね!ギターカッコいいよね!」

「......うん」


 ほんの少し、雰囲気が和らぐ。彼女の微かに見せた笑みは僕の心を完全に奪っていた。


「いいねえ、ギター!あんなふうにカッコよく弾けたら凄いよねえー!」

「でも絶対難しいよ......みても何やってるか全然わからないもん」

「まあねえ。確かに......うーん、でもやってみないとわからなくない?とりあえず触ってみる?」


「え?」


 キョトンとする彼女。


「僕のお父さんギター沢山持ってるからさ、ひとつ持ってこようか?多分、いっぱいあるから無くなっても気が付かない」

「それは、流石に気づくでしょ。絶対、怒られるよ」

「そっかあ」

「.......うん」


 会話が終わる。そして僕が次に発した言葉は。


「じゃ、ここで待っててね!ギターパクってくる!」

「うん。......は!?」


 ブランコから勢いよく飛び降り、そのまま走り出す。この時は......いや、今もか。ただただ、彼女の事が気になって、どうすれば仲良くできるかに集中していた。


 だから、ギターを勝手に持ち出し父さんにしかられる事なんて、僕も分かっていたけど、そんなのは二の次。彼女と遊ぶ事だけを考えていた。


 それからすぐにギターを手にした僕が公園につく。彼女は相変わらずブランコに揺られていた。僕が彼女に近づくと、こちらに気が付きパアッと表情が明るくなった。


 その表情を見れただけでもギターをパクリ、お父さんの怒りを受けてもお釣りが来るくらいのものだなと思った。


 ケースからギターを取り出し、彼女へと見せる。


「じゃじゃーん!ギター!」

「わあ、綺麗......!」


 深く青い色をしたギター。彼女の抱いた見た感想は、カッコいいでも可愛いでもなく、綺麗だった。奇しくも僕が最初にこのギターを見て、父さんに言った感想と同じだった。


「はい!どーぞ」

「え、え、どーぞって......触ってもいいの」

「そりゃ勿論!君の為に持ってきたんだから。めっちゃ重たかったけどね!」


 肩をくるくる回す僕。すると彼女はクスクスと笑っていた。


「ありがとう」

「へへ」


「......深宙」

「?、そら......?」


「わたしの名前、秋乃深宙っていうの.......よろしく」

「!、深宙ちゃんかあ〜!僕の名前は、佐藤春だよ!よろしくね!!」


「春くん、か......」



 これが深宙との出会いだった。





【とても重要なお願い!】


先が気になる!執筆頑張れ!と思われた方はブックマーク登録と広告の下にある

☆☆☆☆☆を★★★★★にし評価して頂けると嬉しいです!


執筆のモチベになってめっちゃ頑張れますので、もしまだ「評価入れてないよー」って読者様がいましたらお願いします!


ブックマークひとつ、評価ひとつがとても励みになり毎日の更新をがんばることができています!なので、よろしければお願いします!!m(_ _)m


カクヨムさんにも転載し始めました!



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] 69話のケツの1文見落とて、急に回想に入ったので、幕間かなって思ってたら意外と長く続くので、70話の頭に「少し昔の話ですよ」とか、僕は昔の事を思い出しながらゆっくり口を開いた的な何かが…
[一言] ホントにいい名前だよなぁ
2023/04/02 02:16 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ