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67話

 


 夏希を家まで送った帰り道。僕は再度またゲーセンに来ていた。目的はそのゲーセンではなく下、アニムイトである。差し上げると喜ぶと言われた『ほっぷんぽっぷん』ほぷ子のビッグサイズぬいぐるみ。


「......やるか」


 こういうクレーンゲームはあまりやったことが無いけど、まあ千円もあれば取れるでしょ。ワンプレイ二百円......五回以内だ。このクレーンゲームの見た感じ普通のやつよりも、鉤爪みたいなの......アームっていうのか?これ大きくてパワーありそうだし。なんなら一発でとれるまであるな。


 ビッグサイズぬいぐるみがたったの二百円。こういうのって普通は五千円以上したりするんじゃないの?あの子の笑顔が二百円で見られるとかプライスレス通り越してもうレスだよな。何かが。


 と、訳の分からない事を考えながら通貨を二枚入れた。そして光るボタンを押す。ウイイーンと移動するアーム。筐体から鳴る『ほっぷんぽっぷん』のOP曲がとても可愛らしく「これすきっ」と脳内で呟く。


「よし、よし......!」


 位置が定まりクレーンが降りていく。ぴったりとほぷ子の胴の部分にフィットする。これは貰ったな......そう思い、僕はほぷ子に指をさしニヤリと笑う。


 しかしその笑みは次の瞬間に消失する。僅かに持ちが上がったビッグサイズぬいぐるみほぷ子はするりと落ちてしまった。


「嘘だろお前!?」


 持ち上げただけなのに。こういうのって普通は移動時に落ちたりするんじゃないのか?持ち上げることすら困難なのか......。くそ、僕のせいだ......この戦場を甘く見ているから二百円の命が犠牲となった。


 そうだ、これは遊びじゃない。いやそりゃそうだよ。そんな簡単にほいほい二百円でぬいぐるみを持っていかれたらリーズナブルくんも真っ青。顔真っ赤の赤字になっちゃうよ。


(真剣に、やる......ひとつひとつ、一手を大事に)


 ベストな位置でとらえたほぷ子ぬいぐるみが、いとも容易く重力に負け落ちる様が脳裏に焼き付いている。こんなん無理だろ、と頭の片隅で葛藤する自分を見て見ぬふりし、あの人の笑顔を想像し、僕は二枚の百円玉をぶちこんだ。


(神様も味方に付けとくか......)


 お辞儀し、手を合わせる。感謝。そして震えるゆびでボタンをおし、またもやベストの位置でほぷ子をとらえることに成功した。


「っし!」


 ぐっ、とガッツポーズする僕。持ち上がるほぷ子。しかしその時、持ち上がったところまでは良かったのだが、上がりきった時の「ガッ」という衝撃でまたもやほぷ子は元の位置に戻ってしまった。


「......な、なんでや」


 ここまでに掛かった金額、四百円。まじでプライスレス。クレーンゲームのボタンを微かに、悲しく撫でなが思考する僕。どうすればコイツを捕獲できるんだ......捕獲レベル8はあるぞ、このビッグサイズほぷ子。


「ふ、ふふっ」


 背後から笑い声が聞こえた。見るとそこには女の子が立っている。紫のパーカー、黒縁眼鏡。ボサボサの寝癖頭とそばかす。背負うカバンからはポスターが突き出ている。


「あ、こいつは失礼......」


 ぺこりと頭をさげ謝る眼鏡女子。


「いえ、てかこれプレイしたいですよね。ごめんなさい」


 もしかしてずっと待っていたのか?と、急いで場所をあける。


「いえ、ちがうっす。楽しそうに遊んでるなあって、ついつい君のプレイに魅入ってただけなんで。どーぞ、お続けになってください」

「あ、そうですか......」


 楽しそうに?そう?


「ところで、君......ガチ勢すか?」

「え?ガチ勢、って?」

「ふむ、その反応。ガチ勢ではないか......では、もしよければ自分がこの機体の攻略法をお教えしましょうか?」

「攻略法......!?そんなのあるんですか?」

「あるっす。では、まず第一ステップ。耳を澄ませるっすよ......機体の声、つまり音を聴くんす。この子の癖を掴む......まずは相手を知ることが重要!」


 え、音を?マジで?真剣に聞いていたが途中からこれからかわれてね?と困惑に変わり表情の固まる僕。彼女は耳に手を当てクレーンゲームの筐体の声を聴くように目を瞑る。そして僕に、君もやるっすとクイクイ指を動かした。


「あ、はい」


 ......。


 聞こえてくる、わけもなくどちらかというと爆音で流れているBGMにしか耳がいかない。筐体の音なんて分からないよ。二人で目をつむりクレーンゲームの音に耳を澄ませる。なにこれ?


「『ほっぷんぽっぷん』は」


 眼鏡女子が口を開いた。


「原作が四年前に始まり、当初はその独特で癖のありすぎる世界観であまり人気がなかった......しかし、堅実に直向きにコツコツと打ち切りにならないラインを歩みながらファンを獲得していき、ついにはアニメ化を果たしたっす」


 ジッとほぷ子を見据える彼女。


「ステップ、二。百円を二枚いれるっす」


 言われるがままチャリンチャリンと二枚いれる僕。再び『ほっぷんぽっぷん』のOPが鳴り始める。


「ではステップその三。自分がコールするのでそこで止めてくださいっす」


 頷く僕。ニッと、笑う眼鏡女子。彼女の指示通りクレーンを移動させる。そして最後の一打を押したとき。


「んー、もうちょい」


 僕の手に彼女の手が重なる。そこで気がついた。これ、ボタン長押しでアーム回転するんだ、と。


 そして胴を掴むアーム。ゆっくりと上がっていく。しかし案の定、途中でポプ子は落ちてしまう――


「え?」


 ――と、思われたが、しかし。思わぬことが起きた。なんとぬいぐるみについているタグの輪にアームの一部がひっかかり宙釣り状態になったのだ。


「す、すごい」

「にひひ、これが我が極意。肉を切らせて骨を断つ!」


 なんか違うだろ、と思ったけどすごいし助けられたからここは黙っておく。しかしこんな手があったなんて......いや、あの小さなタグの輪にアームを引っ掛けるなんて普通できるか?この人、すごいな。


 ガコン、と取り出し口に現れたビッグサイズほぷ子ぬいぐるみを取り出す。彼女の方をみると満面の笑みで手を上げていて、僕は思わずハイタッチした。


「ミッションコンプリートっす!」「ありがとう!」


 けど、攻略第一ステップ。あれの効果がどうにもわからない。






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