46話
と、言うわけでいつもの練習場。僕と八種先輩が共に現れると、心なしか空気がピリついていた。皆、真剣な表情。いい感じだ。
そんな中、物怖じせず八種先輩が口を開いた。
「えっと、あの。......八種鳴子と言います。学校祭のライブではお世話になりました。あの時の皆さんの演奏に凄く感動して、それで加入させて頂きたく今日は来ました。お時間の無い中、申し訳ありません......ですが、精一杯がんばりますので、よろしくお願いします」
皆の口元が微かに緩んでいる。褒められたのが嬉しかったのか、満更でもなさそうだ。
「こちらこそよろしくお願いします。あたしはギターの秋乃深宙です」
「俺はドラムの黒瀬夏希。よろしく」
「......私は有栖冬花......ベース。よろしくお願いします」
冬花がやはりというか少しぎこち無い。
「えっと、それじゃあ早速合わせてみようか。八種先輩、曲は何が出来ますか?うちらのオリジナル曲じゃなくても大丈夫ですよ。なんでも良いんで......ちゃんと合わせますから」
「なんでも、って......え?」
キョトンとした顔でこちらを見ている。え、あれ?演奏みるんだよな?僕、何か勘違いしたか?
「あ、えっと......ごめん」
「?」と、四人が顔を見合わせた。
「それじゃあ、explosionを。......練習してきたので」
深宙が「おっけー!」と頷き、皆が楽器を用意し始める。そして準備が完了し皆が向き合う形になり、夏希が「んじゃ、いくぞ〜」とカウント開始。
爆発する音の粒子。流れ出した5人でのexplosion。キーボードのメロディが四人を更に彩る――
(......なんだ、これ)
――ハズだった。
(音がズレる。リズムの波がおかしい。夏希はしっかり刻んでいるのに......いつもと全然違う)
しかし理解はしていた。始めての合わせであるこの一曲目。多少のズレは仕方のないことだと思っていた。しかし、やってみて解る。多少どころではなく、根本的な......。
(おそらくは技術力の差......八種先輩は決して下手ではない......けど、深宙、冬花、夏希の高次元のレベルにはついていけないんだ)
深宙はそれを察するとすぐにカバーに回ろうと立ち回る。しかし夏希はそれを良しとはしない。メンバーが入ることによりレベルが下がることは本末転倒、上を目指しキーボードを加入するという話が、意味のない増員になることを嫌がっているんだ......多分。
(それか、もしかすると......)
冬花は戸惑っている。いつものリラックスした演奏が、今は僅かにも無い。強張る指先で生み出される音は硬く、不自然なメロディラインをなぞる。
八種先輩の表情が険しい。次第にミスが連続し、そして不協和音を奏で始める。指が、心がついていかない......そんな風に見て取れた。
そして、explosionが終わる。
「ご、ごめんなさい......」
「いやいや、謝ることないですよ八種さん」
深宙がフォローに回ると、夏希が口を挟んだ。
「この曲は、どれくらい練習したんだ?」
「学祭の日から毎日、一時間......とか」
ここで僕の中に違和感が生まれた。いや、違和感というよりは、ズレというものかもしれない。
(......一時間?たったそれだけ?)
「......なるほど、そうですか......」
冬花がふむ、と顎に手を当てた。
「そうか。......秋乃、お前一日の練習時間はどんくらいだ?」
「む、あたし?んー、まあ、平日なら四時間とかかな......もっとしたいけど、色々あるしね」
「有栖は?」
「......私は学校行ってないので......だいたい八時間〜十時間?というより、暇があれば触っているのでわかりませんね」
八種先輩は驚いた顔をしている。想像以上だったのだろう。まあ、「いやいつ勉強しとんねん!」というツッコミの表情にも見て取れるけども。
「......そう、ですか」
八種先輩がそう呟くように言った。
「圧倒的にスキルが足りない。そういう事ですよね......」
「まあ上手いとは思うよ。けど俺らのバンドじゃ難しいかもな......てか実際ついてこれないだろ?」
「......はい」
頷く八種先輩。さみしげに前髪がさらりと落ちる。
「実際に、加わって演奏をしてみるとわかりました。外側から見た華やかで美しい演奏も、ハイレベルなスキルにより絶妙なバランスで成り立っていたんですね......」
絶妙なバランスか。確かに......僕も常々考えている事だが、このバンドメンバーは誰一人替えが利かない。多分、誰かが抜けることになればたちまち瓦解するだろう。
「ちょっと、色々と考えてみます。このままでは間違いなく足を引っ張ってしまうので......」
同じレベルの人間が四人集まったこのバンド......ここまでなんの問題もなく上手くいっていたから、気が付かなかったけど、本来であればこういう技術や気持ちの問題は結成当初にあったはずなんだ。
冬花や夏希、彼女らは深宙が集めた実力者ってのもあるけど、本来バンドを組むということはこういう事なんだろう。
(難しい問題だな......モチベやスキルって)
そんなことを考えていると八種先輩が口を開く。
「......あの、バンドメンバーが無理なのはわかりました。であれば、サポートはどうでしょう?皆さんのライブのお手伝い、させてほしいです」
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