44話
部屋に残された四人。ふと疑問に思った僕が口を開く。
「来てくれてありがとう皆......でも、なんでここに僕がいるってわかったの?」
「それは春くんが連れ去られた現場にいた刹那ちゃんから連絡もらったからだよ。『お兄ちゃんを迎えに来たらどっか連れてかれちゃった』ってメッセージ着てたから」
迎えに?未だかつてあいつが迎えに来たことなんてただの一度もないぞ。もしや野外でのストーキングにまで手を出し始めたのか!?だが今回はグッジョブ!
「そっか、なるほど」
「つーかあいつヤバいな」
夏希が言う。いやヤバイよね。狂戦士だもん。
「部屋入る前に歌、聴いたがかなりの歌唱力だったよな」
あ、そっちか。
「......確かに凄かったですね。春ちゃんのが上手だとはいえ、かなりのレベルでした」
「そうだね。彼女達は四人のグループ......他にあのレベルのアーティストが三人もいることを考えると、勝負に持ち込んだは良いけど中々厳しい戦いになるよね」
......そうだ。確かにそれ以外の選択肢は無かった。他にとれる方法は僕が【神域ノ女神】に入ることだけ。あそこで深宙が勝負を受けると宣言してくれなかったら、僕は......。
「けどよ、春が【神域ノ女神】の5人目とはなあ、くく」
「......春ちゃんの女装はちょっと見てみたいですね」
「え、春くんの女装!?......悪く、ないかも」
「オイオイ」
「一時的な女性四人ロックバンド......これは再生数上がるわね」
深宙がぶつぶつ独り言を言っている。怖い。内容が特に。
「てか、まあやることは決まったな」
「やること?」
「......足りないのは私達です。ならそれを補うしかありません。つまり」
深宙が言う。
「練習、ね」
深宙、冬花、夏希が頷く。確かに、練習は必要だ。皆は僕の歌唱力を高くみてくれているが、さっきの歌は僕が聴く限りでは負けだと感じた。だから、僕も......皆と一緒にレベルを上げないといけない。
(皆とずっと、一緒にいるために)
「あと、それに関係してなんだけど、実戦......つまりライブをもっと経験したほうがいいと思うの。ほら、サマーフェスティバルってかなりの人が観に来るでしょ。少しでもなれとかないとヤバいかなって」
深宙がいうと夏希も「たしかにな」と同意する。
「場数踏まねえとヤバイよな。おそらく今回もアウェーになるだろうし」
「......です、ね」
冬花が暗い顔してる。そりゃそうか。この間の学祭とは比にならないレベルの観客が集まるわけだから、緊張するよな。しかも僕らは無名バンド。って......
「あ!」
僕以外の三人がビクッとなる。
「そうだった!深宙、ってか皆!これみて」
僕は伊織との一件の前に貰った【BreakMusic】の名刺を出した。
「「おおお!?」」
「......お?」
驚く三人。一人反応が鈍いな。まあいいか。
「学校から帰ろうとしたら、呼び止められてこれ渡されたんだよ」
「すげー!スカウトかよ!」
「びっくりね、これは!」
「......ですね、確かに」
「返事は急がないって言ってたよ」
「それは有り難いね。すごいなあ......けどとりあえずは紅さんの件をどうにかすることが先決ね。負けたらこの話も受けること出来ないし」
「......確かに。春ちゃんがいなくなったら意味がありませんよね」
......あれ、なんだろう。レーベルの話以外にも何かしないといけない話があったような。
「あ!!」
ビクッとする三人。
「いやまたかよ!」「......ど、どうしたんですか?」「どうしたの春くん?」
「えっと、三人が覚えているかわからないけど、ウチの先輩に八種って人がいるんだ。あ、ほら、赤名のバンドにいたキーボードの女の子なんだけど」
「あー、あれか。いたなあ」
「その人がどうかしたの?」
「いやなんかバンドに入れてほしいって相談されてさ。一応伝えなきゃって」
「......キーボード、ですか。ふむ」
「んー、キーボードねえ。学祭での印象がねえからな......んー」
「でもキーボードあったら曲の幅が広がるよ。春くん、とりあえずみてみたいなその子の演奏」
びっくりした。速攻で断られるかと思ったから。
(......!)
けど、その目を見て理解した。そうか、全力で......可能性を探る。あの化物に勝つ為に、使えるものは全部つかう。そういう事か。
「わかった。今度、スタジオにでも誘うよ」
「......レベルにもよりますが、使えればかなりいい感じになりますね」
「まあ、技術があってもバンド自体との相性もあるだろうけど......キーボードが入れば春の歌もより映えるか」
「よし、いいね!前に進んでいる感じ!」
ぐっ、と拳を握りしめる深宙。
「あとはライブ!探さなきゃね」
「それなんだけどよ。一つアテがある」
夏希が手を上げた。
「家の方の町内で小さい夏祭りやるんだよ。それでバンドやるやつらが数組いるんだ......多分参加したいって言ったら、枠に入れてくれるぜ」
それを聞いた三人は顔を見合わせ、頷く。
「出よう、その夏祭り」
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