41話
刹那がベッド下から這い出してきて僕のPCをいじりだした時(いや勝手に使うなよ)僕の携帯にメッセージが入る。
それは深宙からで、いま僕らが抱えている問題についての相談だった。とあるレーベルからのお誘い。僕らをスカウトしたいと一週間前に僕の学校へ二人の大人が現れた。そして――
〜約一週間前〜
眼鏡の女性と、短髪の男性。二人共スーツを着ていていかにもデキる感じの社会人という印象。そして、女性が下校しようとしていた僕に声をかけた。
「あの、こんにちは」
僕はその時、まさか僕が声をかけられたなんて思わず、会釈しその横を通り過ぎる。
「え!?ちょ、ちょっとまって!ねえ!」
「!?え、ぼ、僕ですか!?」
「そーよ、あなたです!まさか、あんなに目ががっつり合ったのにスルーされるとは......!」
「先輩の眼力がヤバすぎたんすね、これは」
驚く眼鏡女性に短髪男性がぼそっと言った。ギロッと彼を睨む眼鏡女性。眼力やべーな。
「えっと、何かようですか?」
「あ、すみません。私、こういう者です」
そういって差し出された名刺。そこには『【BreakMusic】水無瀬 舞子』とかかれていた。記憶の片隅にこの名がひっかかる。
(え、なんか見たような......あ、そうだ。これ、インディーズの音楽レーベルだ。って、え?)
「これ、ほんとに僕ですか?相手、間違えてませんか......?」
「ふふ」
不敵に笑う水無瀬さん。そしてすぐに横の短髪男性に耳打ちをする。
(え、この子が例のなのよね?なんか雰囲気ちがうけど)
(そーっすよ、あれライブでテンションあがっちゃってたから。これが素だと思います)
いや、聞こえてますが!?ライブって、あれか学祭の......うーわ、めっちゃ恥ずかしい。
「えっと、あなた佐藤春さんですよね。あの、名前の無いバンドの」
「あ、まあ、はい」
「今日は少しお話させて欲しくて来ました。ちょっとお時間いただけませんか?」
「......えっと、それって」
「先輩、この場でハッキリ伝えた方が。佐藤さん高校生ですから、ひょいひょい知らない人間についてくのはマズイかと」
「あ、それもそうね。......気が回らなくてすみません」
「あ、いえ」
「では単刀直入、手短に。あなた方のバンドにウチのレーベルへ所属してほしいんです。あなた達のバンドの力は凄まじい。その力を是非、我がBreakMusicにお貸し頂けないでしょうか!」
その言葉を聞いた瞬間、体が揺らいだ。心臓が大きく打ったような......息苦しくなり呼吸に意識を向けるよう努めた。
ぼ、僕らに......レーベルからスカウトが?これは夢か?
「あ、あの......すみません、こういうの初めてで」
僕が動揺している事を理解してくれたのか、水無瀬さんは微笑みこう言った。
「この場で決めてほしいという話ではないので安心してください。バンドメンバーの皆さんとも話し合ってからの返答になると思いますので、ゆっくりで大丈夫です。......急ですみませんでした。話を聞いてくれてありがとう」
頭を下げる水無瀬さん。
「わ、わかりました......皆に伝えておきます」
「よろしくお願いします。あなた達のバンドは......他のアーティストに無い、唯一無二の魅力がある。多くの人にその魅力を知ってもらいたいんです。......ご連絡お待ちしております」
そうして二人が立ち去り、残された僕と手渡された名刺。WouTubeで多くに実力を認められ始めたのも嬉しいが、こうしてリアルで直接的に、言葉で聞くと実感が湧く。
(レーベルにスカウトされたっていうのは現実味がないけど......)
けど、かなり嬉しい。早く皆にこの事を伝えないと。
「へえ、BreakMusicね。ふーん」
ふと横を見れば、白のキャスケット帽を被った人が僕の名刺を覗き込んでいた。
「誰っ!?」
「ん、誰って......あ、そか」
声からして女性なのはわかるが、帽子とサングラスで顔がよく見えない。だが、うちの学校の制服を着ていない事から生徒ではない事がわかる。かと言って、声からして冬花や夏希、深宙でもない。
「初めまして佐藤春!わたしはシェリアクレーベル所属、【神域ノ女神】四人の歌姫がひとり、紅 伊織!よろしくね!」
「......は?」
シェリアクレーベルって、あの......三大レコード会社の?つーか、【神域ノ女神】って、歌唱力お化けで有名な......女性ボーカル四人組の、か?
伝説的オカロPであった【白万銃P】自身が結成し参加する最高峰のボーカルグループ。
アップした動画全てが300万再生をこえるという遥か天上のアーティスト。まさに神域に歌う女神達。
その一人が......ここに?
(......いや、まさか......そんな)
いやいやいや、流石に嘘だろ。こんな次から次へと。だってフツーに有名人中の有名人だぞ。
黙り込む僕に、彼女は微笑んだ。
「あら?驚きすぎて一言も発せないようね......まあ、無理もないわ!まずは落ち着きなさい!ほら、ゆっくりと深呼吸するのよ!」
(けど、この特徴的な声色......そして、このふてぶてしい態度は)
「......ほ、ホンモノ?マジで?」
「勿論」
両腰に手を当て、えっへんとポーズをとる。そして彼女は帽子とサングラスを外しその姿を晒した。
――うわああ、と後方の学校から雄叫びが聞こえた。それは男子女子どちら共の歓喜の悲鳴。僕は以前これに似た事があったような......と、その記憶を思い返す。
(......あ、これヤバいわ)
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