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3話

 


「はーるーくんっ!」

「うあっ!?」


 カラオケ店に近づくと後をつける気配に気がついた。その正体がこれ、深宙。彼女は毎回僕を見つけるとこうして僕の胸に飛び込んでくる。人目が無いとはいえ、万が一彼女の好きな人に知られれば大変だ。


「ちょ、やめてよ深宙......誰かに見られたら困るだろ!」

「ええっ、困るの?なんで!」

「いや僕は困らないけど、深宙がさ!クラスの子とかに見られたら不味いでしょ」

「? なんで?困らないよ、あたし」


 不思議そうに首を傾げる深宙。


 あれえ?意味わかんない。なんで?......あ、そうか。僕は幼なじみだから、男として見てないのか。それなら納得。

 ......いや、出来ないよ!


「と、とにかく、離れて」

「え、え、なんで?あたし悪いことしたかな?」

「いやいや、そーじゃなくて.......えーと、あ!ほら、深宙の制服シワになるから!」

「あ、ホントだ」


 ハッとする深宙。驚いた表情も可愛い。


 空色のギターケースを背負う彼女。身長は僕より少し高い163。肩にかからないくらいの髪は、綺麗な栗色をしていて陽の当たり方によっては秋の紅葉のように美しい朱に輝く。そして柔らかく白い絹のような肌。


 瞳はくりくりと魅力的に輝き、深みのある藍色。幼さの残るあどけなさと、美人がもつ気高さ。全てを有しているのがこの秋乃(あきの) 深宙(みそら)という女子だ。


(それに......)


 そう、僕がハグされるのを困る理由は他にもあった。それは彼女の制服越しでも強烈に主張してくるその膨らみにある。あれを押し付けられる辛さは......脈の無い男には辛すぎる。気が狂いそうになる。ガチで。


「春くん?どしたの、ぼーっと......あっ!さては、胸みてたな!?」


 ぎくっ!


「い、あ......すみません」

「もー、えっち!まあ、春くんだから良いけどね。えへへ」


 言葉とは裏腹に照れくさそうに言う深宙。目を合わせられなくなり、誤魔化すように髪をくるくると指先で遊ばせる。


 何だこれ。これほど可愛い幼なじみを憎む瞬間はない。でも幼なじみでこれほど得する男もいないだろうけど。どっちが幸せなんだろうか。


 見ていられずに向いた明後日の方。ふと目に映った夕陽が日の出と見紛うくらいに美しく見えた。


「と、とりあえず、カラオケ入ろう。時間勿体無いしさ」

「あ、だね!はいろはいろー」


 受付を済ませ、部屋に案内される。ここにはもう何回通ったかも覚えてないほど来ている。だから、店員さんとも仲良しだ。深宙が。


「今日も可愛っすね深宙さん!」

「ありがとうございます!嬉しいなあ」

「深宙さんを眺めているだけでここにバイト入れた甲斐ありましたよ、ホント」


 このバイトさんは、えっと名前忘れたけど深宙のファンらしい。そして、彼の後ろに音もなく忍び寄っているメガネの男性が店長さん。


「バイトくん。楽しそうな雑談ですね?遊んでいるぶんは勿論賃金は発生しませんがよろしいので?」

「て、てて、店長!すみません、掃除してきます!」


 まるでアニメ映画のようにピューッと逃げていくバイトくん。


「毎度すみません、春さん、秋乃さん」

「あ、いえ」

「大丈夫ですよ。ふふっ、彼面白いですよね」


 にこにこと笑う彼女はホントに天使の生まれ変わりかと思うくらいに神々しい。もしくは女神か。


「お詫びです。今日はお代は無料ということで」

「「!?」」

「そんな、悪いですよ!ちゃんと払います!」

「いえいえ、いつもお二人には当店をご愛顧頂いていますので......と、いうのも有りますが、本音は別にありまして」


「「え?」」


「私はお二人の演奏を聴いているうちにファンになってしまいまして。盗み聞きのような真似して申し訳ないのですが」


 すみません、と手を合わせる。

 この店長さんホントに紳士的というか。落ち着いていてカッコいいというか。あれ、まさか深宙の好きな人って......。


「私も昔はバンドをしていましてね」

「......!」

「え、そうなんですか!?」

「はい。まあ、大したことないバンドでしたから、特に鳴かず飛ばずでしたが。けれど、だからこそわかりますよ」


「......?」


 わかる?その時店長の眼鏡の奥、瞳が鋭くなったような気がした。


「君たちは、上手い。それも個々のレベルはプロと遜色ないくらいに」


 どくん、と胸が鳴った。いや、プロって、プロ?


「......」

「あ、ありがとうございます」


 深宙も顔が赤い。俺ら褒められ慣れてないからな。小学生の頃からずっと二人でやってきたから。いや、深宙は知らないけど。もしかしたら他でバンド組んでたって不思議じゃない。


 店長も言っていた通り、彼女のギターの腕はプロのレベルと遜色ない。


「そう、だからお願いです」


「「?」」


「あなた方がもし有名バンドになった際には、ウチを宣伝して頂けないでしょうか!?」


「「!?」」


 宣伝、って......いやまず有名バンドだって?無理無理。目立つのなんて嫌だし。

 そもそも二人だからバンドなんて組めないから。あと僕、人見知りだし。


 そんな僕の思いも露知らず、深宙が応える。


「勿論!日本で一番の有名カラオケ店にしちゃいますよ!!」


 めちゃくちゃいいキメ顔で深宙さんは親指を立てていた。.......えっと、深宙さん?


「ありがとうございます!では後々、店で飾るようにサインを.......」

「あ、え、は、はい......」

「はいっ!!」





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