表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/89

38話

 


 授業中、ふとさっきの記憶が蘇る。触れられた頭がいまだ温かく感じ不思議と心地良い。


 今まで僕は赤名関係の事を人に話したことが無かった。それは話しても意味がないし、その事で聞いた相手の気分を悪くしかねないから、口にしなかった。


 けれど今日初めて、八種先輩に胸の内を吐露してしまった。流れで口にしてしまったというのもあるけど、嫌がる素振りもせず共感してくれた彼女。それが、ダメな僕を受け入れてくれたようで嬉しかった。


(......同じ境遇の理解者、か)


 って、そんな事考えている場合じゃないな。うちのバンドにキーボードか......確かにそれがあれば作れる曲の幅も広がるし、音に厚みも増す。彼女が加わればまた更に完成度の高いバンドに成れる。


(......けど、なんだろう。もやもやするな......)


 不安、というか。妙な感覚だ。八種先輩をバンドの皆に紹介するのは全然良い。けど上手く行かない気がする......理由はわからない。けど、僕の勘がそう告げている。


 帰り際、廊下をあるいていると多くの生徒に「あ、サトーくんさよならー!」「バイバイ佐藤くん」「サトーばいばーい!」と挨拶をされる。これももう普通になりつつあるが、未だに慣れない。まるで先生にでもなった気分だ。


(学祭の影響が凄すぎて吐きそうだ。吐かないけど)


 ちなみにあれから頻繁に連絡先を聞かれる事が多くなった。特に女子生徒に。告白されること十数回を越え、心臓がもたないかと思い一時は不登校になりそうな勢いだった。もう慣れたけども。


 まあ、深宙がいるから全部断っているけど......てか、僕の事歌以外なにも知らないのによく告白なんて出来るよな。いや、違うか......よく知らないから付き合うのか?理解を深めるために?


(んー、わからん)


 ずっと深宙と一緒で他を考えたこと無かったから、恋愛的な事は全然わからない。


 人の群れに流され下駄箱から靴を出す。靴紐が解けている事に気が付いた。


 ......昔から深宙の事ばかり考えていたからな。歌は、彼女が喜んでくれるから練習したんだし。と、その時。校門を出たところで肩をトンとつつかれた。


「よっ」


「!?」


 振り向けば赤のパーカーを着てフードを深く被った人がいた。スカートを履いていることから女子と言うことがわかる。いや、女子っていうかこの人......


「......深宙?」

「にひひ、あったりー」


 フードを摘み顔を見せる彼女。とことこと、こちらへ寄ってきた。


「やほやほ」

「......どうしたの急に」

「急に来たらダメですか?......春くんの事考えてたら、会いたくなっちゃったんすよ」


 それは仕方がないっすね。


「いや、ダメじゃないよ。僕も深宙の事考えてたし」

「え、ホント?嬉しいなあ、えへへ」


 するりと手をつなぐ深宙。人目について恥ずかしいけど、嬉しいの比重が大きく僕はなすがままになっていた。


「春くん」

「ん?」


「すーきぃ」

「......す、好きだよ」


 じーっと横目で見えてくる深宙。ふわりと香水のようないい匂いがする。

 なにかを求めているその視線。僕はこれかな?と彼女の頭を撫でた。


「むふふふーっ、くるしゅうないぞ」

「ははーっ」


 当たりだったか。気持ちよさそうに目を細める。これは可愛すぎて直視出来ないな。......ホント、二人きりだとめちゃくちゃ甘えてくるな深宙は。


 でも、思えばそうだ。昔から彼女は変わらない。ずっと僕の側で甘え、幸せそうに笑っていた。


 ......幼なじみだから、か。


「深宙って......イケメンに興味ないの?」

「......んん?え、どゆこと」


 唐突に、なんの脈絡もなく聞いてしまう僕。ふと気になっちゃって。ずっと一緒で付き合いやすいから僕は選ばれたのかなとか。だったら仮に気の合うイケメンが現れたら僕じゃなかったのかな?って。


 何がいいたいかというと......もし彼女好みのイケメンが現れたら、そいつにとられるかもしれないという。そんな不安と恐怖心を感じ始めていた。


(いや、気持ち悪いな僕は......妙な妄想で変な空気にして)


 けど、僕には勿体無いくらいの可愛い幼なじみ。そういう可能性を考えずにはいられない。


 妙な空気の中、深宙が答えた。


「あるよ。イケメン」

「......あ、やっぱ?どんなのがタイプ?」


「え、どんなのがって......こんなの」


 深宙が僕を指差す。


「......そ、それは、イケメンじゃないでしょう」

「そ?みんなイケメンだって言ってるけど。まあ、イケメンじゃなくてもあたしは春くんが好きだからね。春くん限定のイケメン好きだよ」


「あー、あ。えーと、ありがとうございます」


 小っ恥ずかしさで挙動不審になる僕。


「なにそれ、ふふっ」


 僕限定なのかよ。まじかよ。


「でもどーしたのさ。春くんは、なにか不安でもあるの?」

「え」

「だって、そんな事聞くってことは、あたしが誰かのところに行くって想像したって事じゃん。......他のイケメンに行きそうにみえた?」


 ドキリとした。不安を明確に見透かされ、当てられた。これが付き合いの長い幼なじみの成せる技か。


「なんでもお見通しだな、深宙は」


「ふふん。そりゃあそうだよ。だってずっと好きだったからね」

「......そっか」


「ま、安心してよ。あたし、春くん以外好きになることなんて無いし。てか、離してあげないんだから」


 不安が霧散してしまうような、明るい微笑み。深宙に照らされ心が温かくなる。


「それは、僕のセリフだよ」


 そう言って僕も笑い返した。


「あ、てか失礼じゃない?他の男に行きそうって思われてたとか......あたし信用ないんだねえ?」

「......ごめんなさい。許してください」


「いーよ!」

「軽っ」


「「あはははっ」」




【とても重要なお願い】


先が気になる!執筆頑張れ!と思われた方はブックマーク登録と広告の下にある

☆☆☆☆☆を★★★★★にし評価して頂けると嬉しいです!


執筆のモチベになってめっちゃ頑張れますので、もしまだ「評価入れてないよー」って読者様がいましたらお願いします!ブックマークもとーっても嬉しいのでよければ!よろしくお願いします!!(人∀・)



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] 読んで記憶ある今までの情報は画像の春の目がきれい 前髪あげたらカッコいいだったか? 春の認識は弱そうな女顔だからイケメンじゃないって感じか?
[一言] ただでさえ難攻不落な深宙さんがいるのにこれ以上増えたら堪らんからな
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ