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25話

 

 ――ついにこの日が来た。


 学祭一日目。各クラスで出店しているクレープやベビーカステラなどの甘い匂い、ソース焼きそばやたこ焼きなどの香ばしい香りがそこら中に漂っている。


 僕らのクラスは赤名の提案で、映えスポットという物になった。教室に花やオブジェを配置し作られた物で、錆びた剣とかも刺さってあって、そこで撮影するとまるで異世界ファンタジーの世界へ迷い込んだ転生者だ。


 まあ大体これ作ったのは美術部の連中で赤名達は提案するだけして作業は何もしていなかったが。俺たちは接客係だからとかなんとか。


 まあ、実態は――


 客が案内され教室へ来る。教室の扉前に受付がいて、中に待機する僕ら説明役が二人いる。今は僕と赤名だ。赤名は僕にただ居るだけで良いと言ったが、その意味を理解するのにさほど時間は要しなかった。


 客は女性二人、おそらくは他校の女子高生だろうか。赤名が陽気な声色で近づいていく。


「こんにちはー!ようこそいらっしゃいました!さあこちらへ!」


「うわあ、すごい!」「綺麗ー!」


 スタジオを見渡し興奮気味の女性二人。かなりのクオリティだからな。まるで本物にみえる草木、錆びて朽ちた剣、瓦礫。ウチの美術部の力はすげえ。


「でしょでしょ!頑張って作ったんだぜ?俺らの努力みてってよ」


 僕は普通に、毎回思うんだけど恥ずかしくないのかこれ。なにもしてない、小道具一個だって製作していないのに、さも自分が作りました的なこの物言い。


「ええー!!」「すごいプロじゃん!」


 キャッキャと盛り上がる三人。僕は言われた通りただただその光景を眺め複雑な気持ちになる。努力した人間の成果を容易く奪うその姿に。


「それじゃあ撮影してください!もしご入用でしたら僕らも参加しますよ〜」

「えーっ、お兄さんが!」「まじで!?」

「まじっすよ、これでも僕WouTuberでバンドボーカルだったりするんすよ?このあとバンドで歌うんすから!」

「えー!」「すごい!!」


 赤名はこれが目的だった。女性客と会話し撮影に加わり仲良くなる。そう、僕は引き立て役で......要するにこの会場は赤名のナンパスポットなのだ。


 セット作った美術部の、朝のげっそりした顔......あれを思うと、こんな目的の為に頑張らされたのかと悲しみをこえ怒りにさえなってくる。......君たちの仇は僕が、必ずとってやるからな。と謎の使命感を抱く。


 赤名を含め、僕を除く三人の撮影が終わる。


「ありがとうね〜!バンドもみてってよ!」

「みるみるー!」「楽しみー!あ、これPwitterにあげてもいい?」

「いいぜ!俺のチャンネル登録もよろしくな!」


 赤名がチラッと僕を見る。


「あー、ちなみにこっちのメガネもバンドでるんだ。見てやってよ......俺とは別バンドでクオリティは低いと思うけど、一生懸命やるからさ!な、えーっと、地味男!」


 どっと笑いが起きる。


「バンドとかできるの?あはは」「何するんですかお兄さんは」

「ああ、こいつね。こいつもボーカルなんだよ」

「「えーっ!?」」


 すげえな。この場を支配する能力はすげえわ。まあ面倒だから黙っとくけど。


「おにーさんホントに歌とか歌えるの??」「ぷふふ、ダメだよそんなこといっちゃ」


「まあまあ、メインはこの俺、赤名様だからさ!楽しみにおいでよ!」


「「はーいっ!」」

「またね、美しいお二人さん!」


 こんなやりとりがもう十数件おこなわれていて僕の精神力ゲージがごりごり減っていってる。しかし、たまに不思議な事が起こる。


「いらっしゃいー!あ、ここ僕とも撮影できるから......って、ん?」


 入ってきた女性客は赤名を見ず、僕に注視する。


「あの、あなたって......」

「えっと、はい?」

「あ、いえ......人違い?かな。......あの、よければ、あなたと撮影しても良いですか。記念に、一枚」


「......ええ、わかりました」


 こういう人もいた。この場合赤名が一気に不機嫌になるから勘弁してほしかったけど。でもお客様の望みなので僕は一緒に撮影をする。


(なんなんだろう。人の顔をじろじろと......どこかで会ったかな?)


 彼女が立ち去った後、赤名は舌打ちをした。


「意味わかんねーよな。サトーと撮りたいなんてよ。地味女だから地味男の方が釣り合い取れてて良いってことか?はは。陰気な眼鏡女だったしな」


 特に陰気でもなかったような気もするが、ここで反論すればまためんどくさい事になる。おくちにチャックしとこう。


「お、もうこんな時間か。ちょっくらリハ行ってくるわ」


 赤名が教室から出ていき、代わりの人間が入ってきた。そして僕はげんなりする。その交代してきた人間が僕の苦手とする女子の一人、姫前だったからだ。


「よー、サトー。私と一緒の係になれたこと幸せに思えよ〜」


 ......なんで?思わないよ?


 それよりも気になる事がある。赤名が今出ていったことだ。リハにしたって予定よりも早すぎる。


 ちなみに個人の出し物順は、漫才やマジック、それら3組が終わって昼休憩を挟み、午後からバンド2組の演奏が行われる。


 僕らのバンドが前座で、赤名達がトリ。


 僕らがあたえられたリハの予定時間は12:30からで12:45から赤名達。でも今の時刻は12:03分。


(どういう事だ?リハの順入れ替えられてるのか?)


 その時。


 赤名達の演奏が聴こえてきた。


(......これ、リハじゃない......本番?)


 演奏の音とともに観客らしき声援も聞こえてくる。もしかして、これ......。嫌な予感がして携帯を開くと、メッセージが来ていた。


『春くんどこ?リハ始まっちゃうよ〜!』


 深宙。係の仕事があるので携帯の電源を切っていた(携帯をみると赤名がうるさい)から気が付かなかった。着信は11:15にあったことを示す。隣の姫前がにやにやしながらこう言う。


「あー、なんかあ、バンドのリハって全体的に早まったみたいだよ?あ、知らなかったけい??」


 知らなかったけいだよ!!くそっ!!やられた!!


 僕は飛び出すように教室を出た。後ろから「おい仕事放棄すんなよー!!」と声がしたがもう気にしない。そうだ、姫前は僕の見張り、あわよくば僕らのライブ自体を潰す気だったんだ。


 ――僕は赤名達の演奏と盛り上がる歓声が聴こえる廊下の中、皆がまつ控室へ向かった。





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― 新着の感想 ―
[一言] うわ下衆い。 そこまでして妨害したかったか。 赤名の致命傷、期待してます。
[一言] 小説とはいえ、勘違い野郎共にここまで胸糞悪い思いをさせたのだから、特大の『ザマァ』をみせてスカッとさせて下さいねw
[一言] 赤名君は、なんつーか、セコい これもし実力が自分より高くてもスカスカすぎて勝利宣言できないやつだし、負けたら負けたで普通に負けたときよりピエロになるというのに…
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