第99話『呪いの勇者と勇者、最後の審判』
「どうして……こんな……智治くん!?」
「裏切り者には、粛清だ。綾香には悪いがここで死んでもらう」
打倒、精霊殺しの待つ現場まで駆けつけた俺達だったけど、その状況は、まるで地獄絵図同然だった。智治が綾香にトドメを刺す寸前だったんだ。
ーーーーポタッ、ポタッ……。
何度も殴られたり、斬りつけられたに違いない。綾香は、一人前線に立ち、マナ切れで回復魔法すら使えない状況だったのだろう。血みどろになりながらも、智治の攻撃を必死に耐えていた。
駆けつけるのが遅すぎるんだよ俺はよ。約束はしないって言ったけどよ、これはあんまりじゃねぇーか。仲間同士だったはずだろ、何で智治が仲間の綾香を傷つけてやがるんだ!
智治がトドメの斬撃を綾香に浴びせようとする絶体絶命のピンチに、迎えにくるのが遅くなった後悔の気持ちを乗せて、俺はその斬撃に諸刃の剣を刺し込んで妨害する。
ーーーーガキンッ!!
思わぬ俺の登場で智治が咄嗟に後退りして、牽制してみせていたんだけど、やっぱりコイツの頭はイカれてやがる。
ニヤリと笑っていやがったんだ。
待ってましたと言わんばかりの不吉な笑みを俺に向けてやがる。現場に精霊殺しがいないのも気になるが、そんなこたぁ、今はどうでも良さそうだ。
「気持ちわりぃ、薄ら笑いしやがって。テメェ、今何したのか分かってんのかよ」
「いやいや、カケルも回復は万全のようだね。俺様もヒュンレイさんに、高純度ポーションを貰ったから体調は万全だよ」
「人の話し聞いてんのかクソ野郎が! 綾香に何をしたって聞いてんだよ!」
「粛清だよ。反逆者であるカケル達をみすみす逃しておいて、ヒュンレイさんを冒涜した大罪人を始末しない訳ないだろう」
「そんなくだらねぇ理由で、自分の仲間に手ェ出したんだなお前はよ……」
お前にとって仲間って奴は、大切なもんじゃねぇのかよ。
とてもじゃねぇけど、俺にはそんな真似出来やしねぇ。
綾香は、血だらけになりながらも、お前のやってる事に対して、間違っているとずっと訴えかけていたんじゃないのか。
痛いのだって我慢してよ、ずっと耐えて語りかけていたんじゃねぇーのかよ。そんな彼女を弄びやがって、仕舞いには殺すだと?
冗談じゃない……。
冗談じゃない!!
そんなことあっていいはずもない。だったら俺が、何度だって智治をブチのめしてやるだけさ。
「か、カケルくん!? ごめんね、また助けて貰っちゃって。もう私、立てないところだったんだ」
「だろうな、その怪我じゃ殺されていたろうよ。精霊殺しはどうしたんだ?」
「準備があるって言って消えていったよ。無理矢理に智治を起こして……。変な薬を飲まされてたんだけど、今までとは比べものにならないぐらい、智治が強くなってたんだ。そしたら私を襲ってきたの」
高純度ポーションとやらか。ただの回復薬じゃなかったんだろうな。まぁ、いいさ。どうあったって、俺が智治を倒す事には変わらねぇんだから。
こんなクソ野郎なんざさっさと始末して、精霊殺しを片付けなくちゃならん。このやり場のない怒りを全てぶつけてやる為にな。
「お前が邪魔だ、カケル。何度、負けたって倒されたってそれは変わらない。俺はさっきまでの俺とは違う。今度こと貴様を殺してやるさ」
「やれるもんならやってみな。ただし、もう魔法無しってハンデはやらねぇからな。全力で潰させて貰う」
「勿論、大丈夫さ。全力で来い!」
本気でやってもいいのだろうか。いや、いいだろう。智治だって覚悟出来てるんだ。もう、恨みっこ無しだぜ。俺はもう甘えない。
ーー綾香だって、俺の大事なもんの中にもう入っちまってんらだからよ。
「立てないだろ。おぶってやるよ」
「ちょ、カケルくん!? 何でお姫様だっこなのよ! てかパンツ見えるじゃない!」
「大丈夫だ。黒いレースなんてこれっぽっちも見えちゃいない!」
「バッチリ見えてるじゃない! もう、おーろーしーてーよぉー!」
エリクシア達がいる安全圏に、綾香を預けて俺は智治と対峙した。お互いに覚悟は決まったんだ。これで、本当に最後にしよう。こんなくだらねぇ戦い、最速で終わらせてやる。
「お前だけが臨界出来ると思うなよ」
「まさか、智治!?」
「あぁ、そうさ。擬似的だが、俺も出来るようになったのさ! 始めるぜ、臨界!」
ーーバチチチッ!!
「雷の……鎧……!?」
轟轟しく、荒々しい。誰も寄せ付けることすら許されない程の鎧を身に纏う智治に、俺は一瞬怯んだのだけど、よく見たら何かが違っていた。
その何かとは、絶対的な強力性をその鎧に感じなかった事にある。不完全って言葉が正しいんだと思うが、電気の流れが曖昧で鎧というには、出来が悪すぎだ。
あんな隙だらけの鎧で臨界してるってのも不思議だよな。あからさまに、付け焼き刃でやりやがったんだろう。その努力を、ちったぁ人の心に向けられないもんかね……。
あれで、臨界した気になってんならそれでいいさ。
俺はそれすら超えていく!!
「本気らしいな。なら、俺も臨界しておくぜ。現れよ、聖なる衣!」
「ふん、まるで道化だな。ピエロのように踊るつもりか?」
「踊り狂うのは、智治だけで充分さ。楽に逝けると思うんじゃねぇーぞ。綾香を裏切ったのは、テメェだろうが。俺がその粛清とらをしてやるよ」
今回ばかりは、お互いに本気での戦いとなる。人をゴミ同然の感覚で始末する、そんな野郎なんかには絶対に負けらんねぇ。
多分一生、智治とは上手くやれないんだろう。まぁ、仲良くする気なんか微塵もないがな。それでも、許せねぇもんは許せねぇ。
今までの罪を償う機会ぐらいは、くれてやるとするか。
「ライトニング・ソード!!」
「マリエル、詠唱開始ぃー!!」
ーーこの一太刀で、もう終わりにしよう。諸刃の剣よ、智治の邪悪な心を打ち破ってくれ。
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