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第98話『呪いの勇者と諸刃の剣の謎』


 「大丈夫だったのでしょうか。綾香さんを置いて行ってしまいましたけど……」


 「必ず連れ戻すに決まってんだろ。マリエルは心配しなくていい。皆んなはどうだ? 少しは休めたか?」


 その場で仕留めれなかったのが悔やまれるけど、体力的にも諸刃の剣が届かないってこともありやむを得ないよな。綾香が心配で仕方ねぇ。


 とりあえずは、どうやってあのハゲを倒すかなのだがそれについてはサッパリ分からん。先輩のもん勝手にパクリやがって、冗談も大概にしやがれってんだ。


 本当に先輩は、殺されたのか。


 ヒスイを造った張本人が先輩だった。


 その理由だって分からず仕舞いである。


 この事を予見していて、ヒスイに自分の前マスターの名を告げてはならないと、禁則事項を課していたんだな。どこで会ったって、彼女はブレない人だなとつくづく思う。


 どうせバレちまったんだから、ヒスイが色々と喋ってくれんだろう。何か俺は見落としを、重要なヒントを握っているかも知れんし、先輩と別れりまでに何があったかを事細かく聞くことにした。


 「あのヒュンレイ……。いえ、ハゲはカヤモリ様の部下だったものです。カヤモリ様のこの世界での役職は錬成師で、この国の研究機関から引っ張りだこだったのです」


 「何でハゲって言い直したんだよ。全く先輩には敵わねぇな。まさか同じ世界に来てしまっていたなんてよ。これも因果かね。錬成師ってにもたまげたよ。何でも創り放題じゃねぇか」


 創り放題って言葉よりむしろやりたい放題の方が言葉としては最適なのかもな。諸刃の剣なんて神器級の、そしてこんな馬鹿げた呪いの装備を俺に狙って受け渡したりするんだからな。


 先輩らしいっちゃ、先輩らしいな。


 元部下だったヒュンレイが何故、先輩を殺したのか。そんな想像など俺には簡単に分かるさ。きっと先輩が邪魔だったのだろう。


 ヒュンレイは、きっと誰よりも精霊のことに関しちゃ研究していたはずだ。フタを開けてみゃ、マッドサイエンティストだったのかも知れないが、いとも容易く『マギア・ドール』なんてのを創ってしまったことによる嫉妬だろうよ。


 あの人はそういう節があるからな。変に恨みを買いやすいっていうか、才能の塊過ぎて時々ついていけねぇんだよ。ハゲには、ご愁傷様としか言えねぇな。


 その推測をヒスイに語っていくと、これがドンピシャに的中していて逆に俺は、拍子抜けしてしまった。


 「流石、カヤモリ様の見込んだマスターです。知り過ぎていて引いてしまいました」


 「いいですかヒスイさん。世間ではあれを変態ストーカーというのですよ? そしてこの場で最も適した言葉は、引く、ではなくて、キモい、です!」


 「おいマリエル! 変なことを教えさせるな! ヒスイが覚えたらどうしてくれるんだ!」

 

 「流石、マリエル様の見込んだ変態です。知り過ぎていて逆にキモいです」


 「覚えちゃったじゃねぇーか! もう収集つかなくなっただろ! どう責任取りやがるんだー!」


 大体合っててくれて良かったよ。変態呼ばわりは尺だが、ヒュンレイの先輩に対しての恨みは尋常じゃない。ヒスイの破壊をもって、最後の復讐にでもしたいんだろうか。


 俺への対策まで用意していて、死角はないってか。


 こりゃ、詰んでるのかも知れないな。


 けど、そんなこと知ったこっちゃねぇ。


 あのハゲだけは、許しちゃいけねぇんだ。綾香が前線で何とか気張ってくれてるってのに、弱腰じゃ今まで助けて来た皆んなから笑われちまうよ。


 英雄になんか、ならなくていい。


 勇者にだってなる必要もない。


 俺は、俺の手に届く、大切な人全てを護り抜く為の剣であればよいのだから。


 「ところで、変……。マスター、恐らく何ですがその諸刃の剣、カヤモリ様の考えていた用途とは、全く違う使い方をしているのではないのですか?」


 「絶対に変態って言いかけてたよね。もういいよ、変態でも。ちょっと照れてんじゃねぇか。まぁ、あれだ。先輩の事だから、その可能性も充分にありそうなのが怖いところだよな」


 それに関しては、全く考えもつかなかったよ。てか、どうせ創るならもっと便利で強い武器が作れたろうに。この諸刃の剣には、まだまだ謎が残ってるのかもな。


 どうせ、あの精霊殺しに勝てる作戦など微塵も思いつきやしねぇんだ。賭けてみるか、この呪いの象徴である諸刃の剣に。


 あまり長居してもいられない。癒しの勇者である綾香だって、マナが切れちまえばそれまで何だからよ。絶対に助けるさ、あんな顔されたら助けねぇ訳にはいかねぇーよ!


 「カケル、みんなの回復は終わっているよ。どうする? 助けるの? 見捨てるの?」


 「エリィ、俺は約束はしねぇって言ったからな。別に行く必要もないんだよ。かと言ってあのハゲはいけ好かねぇ。綾香のパンツを覗くついでに、サクッと精霊殺しをブチのめしてやろうじゃねぇか!」


 仲間の手前、強がりを咄嗟に言ってしまった自分を恥ずかしく思います。素直に助けに行くって言えないのかよ俺はよ! 


 ただの変態に成り下がってんじゃねーか!


 だとしても、その強がりを分かってくれるのがエリクシア達だからな。呆れはしてるけど、俺の助けたいって気持ちが伝わってくれているのなら、あとは精霊殺しを始末するだけさ。


 ーーだから、俺の気持ちに応えてくれ諸刃の剣。

 

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