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第93話『呪いの勇者の劣等上等』


 「随分、ご乱心じゃねぇーかよ。勇者? だからなんだ。お前みたいな奴が、勇者を語る資格はねぇぜ。智治、お前はこの世界に来て誰かを救ったことはあるか?」


 「誰かを救う……だって!?」


 ある訳無いよな。智治はいつだって、自分の手柄のことしか考えちゃいないんだから。こいつの行動のせいで、傷ついた者達がいるっていうのによ。


 ブレッドを半殺しにした挙句、馬鹿にするかのように黒竜を討伐したとギルドで言いふらしていた事もある。ギルド酒場でマリエルに手を出してきたことだって忘れちゃいねぇ。


 そんな馬鹿な奴にも関わらず、首狩りの時や冥界の時だって、綾香は全身全霊で仲間を見捨てずに立ち向かってたんだ。


 それなのに、智治はまるで感謝するどころか、綾香を罵倒する始末である。本当に救いようの無いクソ野郎だよ。


 その全てを俺は、許さない。なんとしてでも、俺は智治に勝たなきゃならいんだ! 俺の質問に怯んでいる隙を突き、俺は諸刃の剣に想いを乗せて刀身を振り下ろした。


 「ガラ空きなんだよ、自己中やろうがぁー!」


 ーーブンッ!!


 「は、はぁ!? 何だよ今の斬撃? まさか、倒すつもりで振り下ろしたのか? 違うよな、だとしたら笑いもんだぜ!」


 諸刃の剣の一閃は、確実に決まっていた。智治の様子から察するに、空を切ったが正しいのだけれどね。マリエルの補助が無い今では、大したことなさ遅すぎる剣筋だった。


 それだけなら、まだいいんだけどね。それだけで終わってくれないのがこの諸刃の剣だ。代償により、体中から大量の出血が始まってしまい、俺は今にでも倒れる寸前である。


 「グハァ……。くっ……」


 「ぷ、ノロマ過ぎるだろ。完全に油断してたけど、流石にそれくらい避けられるぞ。可哀想だよなカケルはよ。道具にも力にも恵まれてないし、仲間は劣等種族ばっかりだ。あ! カケルも劣等者だったね。お前は、本当に哀れだよ呪いの勇者様だっけ? ダサいよな」


 優勢に転がったと分かり、俺を見下し智治は盛大に笑い転げていた。俺のことなら、何と言われたって構わないさ。


 ーーーー劣等種族? 冗談じゃない! 


 懲りずに俺の大切な仲間に向かって、吐いちゃならねぇ言葉を吐く智治に俺は激怒する。そりゃもう、我を忘れる程だった訳だけど、それからはもうドツボにハマる展開だった。


 「殺すぞお前ぇぇぇぇー!!」


 悪鬼が如く、俺は当たりもしない諸刃の剣を智治に振りかざし、連撃を繰り返す。超猛毒が入った、試験管の様な瓶を口で噛み砕きながらの戦闘で、口の中や周りは血だらけだ。


 それを嘲笑うかの様に、智治は俺の斬撃を華麗に回避しやがる。こんな奴に仲間を侮辱されて黙ってられなかったんだよ。


 気がつけば俺は、理性を失った獣に成り下がっていた。


 「魔物? いや、魔獣だよ今のカケルは。血に飢えた獣そっくりだ。避けているだけで勝手に自滅してくれるだなんてなんて優しいんだろう。死ね! この害獣!」


 「ぐっ!!」


 ーーバキバキッ!!


 智治の蹴りが、右腹部に綺麗に決まってしまったみたいだ。


 アバラの何本かは、イッただろう。それでも、俺は果敢に智治に狙いを付けて諸刃の剣を振るうけど、そろそろ限界も近い。あまりの疲労と代償により俺は地面にうずくまってしまった。


 ♦︎♦︎♦︎♦︎


 「アマツ・カケルを止めないのですか? これは、私が悪いのでしょう? あんなに重症では、死んでしまいますよ!」


 「じゃあ、ヒスイはどうしてカケルが逃げないんだと思う? 死にそうでも、苦しくたって前を見て敵と戦っている。必死なんだよ、誰か大切な者を護る為ならね」


 「エリクシア様、だけどあれではどうしようもないのでは? 見ていられません……」


 「止めても無駄よ。カケルは、どんなになっても立ち上がるからね。ヒスイも泣きたいぐらい辛いんでしょ? 大丈夫よ、後はヒスイの気持ち次第だから。頑張れって言えばきっとカケルは応えてくれる。カケルに届く様に伝えてくれる?」


 「気持ち……。ですか……」


♦︎♦︎♦︎♦︎


 「……下さい……」


 ーー、声が聞こえた気がする。


 泣きそうながらも、懸命に俺へ向けて声が枯れそうな程、叫んでいる女性の声がして俺の意思は覚醒した。その声の主を俺はよく知っているんだ。


 「立ち上がって下さい、アマツ・カケル! 私、辛いんです。どうして何ですか、私はドールなのに、こんなにも心が痛むんですよ! やられっぱなしは、似合いません。私の為に勝って下さい!」


 全くよ、おちおち寝れもしねぇな。違うよヒスイ。ドールなのには余計さ。人の心が分かるぐらい、成長してきている証なんだぜ。


 ヒスイのおかげで、頭を冷やすことが出来た。怒りで、我を失って馬鹿やっちまって心配かけてしまったからな。こっから捲り返してやるよ。


 期待して、待っていてくれよな。


 「ったく。後少しで死にそうだったのに、マギア・ドールの茶番のせいで台無しだぜ。劣等種族は劣等種族らしく、黙って滅びやがれ!」


 「ーーーー智治、それは違うぜ」


 「!? 何、だと?」


 「劣等ゆえ、俺や今の仲間と出会うことが出来たんだ。劣等ゆえに、仲間とどんな困難にも立ち向かってきた。それは、今、この瞬間だって何一つ変わりやしねぇ。劣等上等! もう俺は膝を折らねぇ。覚悟しやがれクソっタレ!!」


 仲間の声が、想いが、俺の背中を後押ししてくれている。それにしたって、ヒスイが感情をあらわにしてくれたことが、心の底から嬉しくて堪らなかった。


 もう格好の悪い姿は、ヒスイや皆んなに見せらんねぇからよ。


 ーーやってやろうぜ、劣等上等! 反撃開始だ。

 

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