第90話『呪いの勇者と勇者の激突』
「全く、セクハラ癖は治りませんね。馬鹿なんですから」
「マリエルが一番俺を殴ってただろ! もう、いい加減許してくれ!」
さんざん殴ってきた挙句、最後まで俺は罵倒されていた。どんだけ根に持つんだよ。謝罪の限りを尽くしたってのにあんまりだ。マリエルに至っては、なるべく刺激しないようにしておこう。
ドールの鍛え抜かれた技とやらで、一同、気が動転していて話しのことなんてすっかり飛んでしまったんで、これからは、しっかりと本題に入ることにする。
現状は、精霊殺しに狙われてるってことしか分からん訳だが、殺しの対象になる理由でもあるんだろうか。その辺から上手く話しの整理をしていくか……。まぁ、気は滅入るけど。
「殺しの対象になってる理由も気になるが、マギア・ドールさんよ、アンタ名前が無いんだろう? 呼びづらいんだけど」
「なんと名付けて貰っても構いませんよ、アマツ・カケル。前マスターもそれを望んでおりました」
「何だそれ、名付け親にまでするつもりかよ前マスターはよ。どうして俺にそれ程入れ込むかねぇ。まぁ、仕方ねぇからなんかテキトーに名付けてやらぁ」
名前が無いと呼びにくいしな。いくらドールとはいえ、名前で呼んでやった方がある程度は警戒を解いてくれそうだし、名付けもそこまで悪くないのかもしれない。
前マスターとやらに、見透かされているようでムカつくがな。本当に何者なんだろう。行動や思考まで読むような俺のことを知る人物ってよ。
考えようにも気が乗らないんで、さっさと名付けてやるとしよう。どんな名がいいんだろうな……。意外と難しいかも。
「んー、安直で構わないか? あんまり名前考えるのは下手だからよ。『ヒスイ』ってのはどうだろうか。俺はその美しい瞳からこう名付けたいと思う」
「ヒスイ、ですか。マスターのアマツ・カケルがそうしたいのでしたら私はこれからヒスイと名乗りましょう。命名ありがとうございます」
「素直に喜べやい! 嫌だとか言われるかと思ったわ!」
「私はドールです。感情など、無いのですよ」
寂しいこと言ってくれるよな。確かにそうなのかもしれないけど、俺はヒスイにだって感情があっても良いと思ってるんだぜ。
これ以上は、お節介が過ぎるといけないし精霊殺しの理由についてヒスイから続きを聞こうとしたんだけど、不運はトンデモない速度で加速していた。
「カケル、また正門前にお客さん。四人組なんだけど、まさかあれって……」
「エリィ、何も見なかったことにしておこう。決して関わってはいけないよ?」
現実から目を逸らしたい。
何で? 何しに来た?
目的も無しに尋ねてくるような奴らでも無い事ぐらい、俺は知ってんだよ。二度と関わり会いたくなかったんだがな。
ーーどうして、そこに智治らがいるんだよ!!
絶対にまた、とんでもねーこと言い出すんだろう。アイツら人の話しなんて全く聞かない馬鹿だしな。何を言い出すのか想像もつかねぇや。
このまま、潔く帰ってくれればいいんだけどよ。本物の馬鹿だからそんな上手いこといかねぇよな。
ーードドドドッ!!
「ちょ、ちょっと! 何勝手に屋敷へ入ってきたんです! 常識無いんですか!?」
まぁ、無いでしょうね。ご丁寧に武装までして屋敷に侵入してんだから。マリエルの静止を振りほどき、俺は久々に智治らと対面することとなった。
「カケル、また会ったな」
「馬鹿は治らねーみてぇだな智治。また会ったじゃなくてカチコミに来たってのか正しいと思うんだけど?」
「いいや、違うさカケル。用事があるのは、そのマギア・ドールことなんだよ」
智治の言葉を聞いて、エリクシア、マリエル、ブレッド、アリアドネは、いつでも攻撃が出来るよう身構える。その判断は正しいだろう。
これまでの経験がそうさせてんだ。何故かは知らんが智治らの狙いは、ヒスイなんだからよ。殺しに来たのか、はたまた、身柄を押さえに来たのか、メンドーだけど聞いてやるとするかな。
「うちのヒスイがどうしたよ?」
「見損なったぞカケル! マギア・ドールなんかに名前まで付けて匿っていたのか!? その人形は、人類を殺戮する為に創られた兵器なんだぞ。そいつは、俺ら勇者の手で破壊する。大人しく身柄を引き渡せ!」
「人類を滅ぼす兵器……。ねぇ……。なぁ、ヒスイ。人間を殺戮するのか?」
「そんなこと、する訳ありません。前マスターは、そんなこと望んでいませんから」
「だよな。俺は、ヒスイを信じるぜ」
恐らく、誰かの入れ知恵で踊られてるに違いないんだろう。
憶測で言えば、例の精霊殺しの仕業なんだろうが。
笑っちまうよな。俺は分かってる。ヒスイは、今まで一度だって嘘はついちゃいねぇんだから。それだけは、信用していい事実なんだ。
だったら、もう決まってんだろ。俺は、俺達は、ヒスイの身柄を絶対に智治らに渡しちゃいけないってね。
「決めつけで行動したらダメだよ智治。カケル君が困ってるじゃない。きっと訳があるんだよ」
「綾香は黙ってろ! 殺戮兵器を匿う正当な理由があるなら、是非とも聞いてみたいね。そんなもんある訳ねぇだろ!」
「ごちゃごちゃ、うるせぇーんだよ! 人ん家上がり込んで騒ぎやがってよ。悪いが、訳なんて語るつもりなんか微塵もねぇ。ヒスイは、俺の仲間だ。それが全てなんだよ。手を出すなら容赦しない」
随分前の脅しも充分に効いているはずだ。それなのに、智治は一切引こうともしない。それなりの覚悟を持って智治は、俺の前に現れたんだろう。
「何度も言わせるな。その人形は俺が破壊する。譲らないってんなら俺と決闘しろ!」
「いつでもやってやるよ。勝手にしな。返り討ちにしてやるさ」
「どうせ、仲間の手を借りるつもり何だろ? カケルは、一人じゃなんにも出来やしないゴミ虫だからな!」
「アンタ、この前カケルさんに負けてたじゃない! ゴミ虫はお前よ! いいんですよカケルさん。こんなくだらない戦いするだけ無駄です」
「ありがとうなマリエル。心配してくれてんだろ。でも大丈夫、俺一人で智治をぶっ飛ばすからよ」
舐められてるらしいな。一人じゃなんにも出来ない、使えない奴だとまだ智治は思ってるらしい。確かにそうさ。俺は仲間がいなきゃ何にも出来ねぇ弱い奴だ
そうだったとしても、俺は智治に負けることは絶対にない。
ーー自分が偉いんだと勘違いし、調子に乗って人の大切なもん壊して回るような奴に俺は負けちゃならねぇんだからよ。
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