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第88話『呪いの勇者と魔導人形《マギア・ドール》』


 「何ダラダラしてるんですかカケルさん? ギルドのクエストを早く受けて来て下さい!」


 「うるせぇアクア! ここ俺の家なんですけど!? うちに住み着いてんじゃねぇーよ!」


 聖堂教会との戦争の決着、そして魔王との最終決戦の約束を交えたあの日から早一ヶ月、アクアお嬢様は受付嬢の職務を忘れて俺の監視業務に励んでいた。


 面倒だし、早く監視が解かれることを祈るばかりですが、そう簡単にもいかないらしい。あの戦争で俺らは一躍、救世主と崇められたんだが、皆が皆同じことを考えている訳では勿論ない。


 ギルド上層部からは、俺が、というかメンバーだな。


 余りにも脅威なる勢力になるのではと、危険視してんだろうよ。僕、一応世界の危機を救ったんだけどな……。四六時中、監視されるなんて辛すぎるだろぉ!


 愚痴の一つも言いたくなるけど、幸いにも監視は決まってアクアだし、その豊満なおっぱいに免じて許してやろうではないか。


 「どうしてそんなに働かないのですか? これまでの活躍が台無しです。カケルさんは、もうこの国の英雄なんですからね! それ相応の振る舞いをして下さい」


 「誰も好き好んで英雄なんかになった覚えはねぇよ! あのなぁ、俺はエリィ達とごく普通のまったりとした生活がしたいだけなんだ。またまた、お助け稼業の延長線上で踊らされた可哀想なピエロに過ぎねぇんだよ。働かないったら働かない!」


 面倒事は人一倍避けてきた。それなのにこの有様だ。


 ここ一ヶ月ずっとアクアと言い合いになっていて、正直俺もしんどくなって来てんだよな……。何か楽な仕事は無いものか。悲しいことばかり続いていたから何か心が洗われるような、そんな出会いの冒険もしてみたい。


 そのうち働くと、今日に限って俺はアクアに宣言してしまったのが運の尽き。ドチャクソどえらい事件に俺は足を突っ込んでしまったのでした。


 「あ、カケルさん。こんなところに居たんですか? 大変なんです!」


 「どうしたマリエル! オッパイがデカくなったのか!?」


 「余計なお世話じゃー! 死ねぇぇー!!」


 ーーバチンッ!!


 俺のアゴを砕くかのような、クリティカルヒットでした。余計なことを言うといっつもこれだよな。マリエルには、少し冗談というのを勉強して欲しいところだ。


 まぁ、でも冗談言っている場合でもないらしい。困り顔でマリエルが俺の元まで駆け寄ってくるのは、滅多に無いからな。可愛げがないのだけど、余程でも無ければ俺に弱みは見せたがらない。


 ーー面倒事じゃ無ければいいんだがな。


 「正門前に一人の女性がいたので声を掛けたんです。そしたらその女性、マスターの命令により参りました。アマツ・カケルはいませんか? って言うんで居ませんって言ったら最後、正門から一切動かなくなったんです」


 「マスターって誰だよ」


 「さぁ?」


 「だよな、知らんわな。何それホラーじゃん」


 また訳分かんねぇのが来やがったよ。どうすんのあれ、窓越しで見てみたが、一切動いてないんですけど。マスターって何かぁ? 敵の可能性まであるぞ。状況がますます悪くなる一方だぜ。


 暫く、窓越しで正門前で一切動かない女性を観察していると、買い物に出掛けていたエリクシアとブレッド、アリアドネが帰宅して例の女性と鉢合わせていた。


 「マズイですよ。ブレッドが騒ぎまくってます」


 「マリエル、止めてこい! あの馬鹿はすぐ屋敷に入れたがる。入れたら最後、責任取らされるぞ」


 「ちょっと! 何の責任ですか!」


 「か、カケルさん!? ブレッドが私達の方に指刺しているのですが……」


 ブレッドが喧嘩越しになったみたいですね。容易に想像出来ました。それが分かった時は、ほんの一瞬の出来事だったんです。


 一切の動きを見せなかった彼女は、俺と目線を合わせた後、魔術の詠唱を始めて俺やマリエル、アクアがいる部屋までガラスを割りながら突っ込んできやがりました。


 ーーガッシャーン!!


 バイオレンスなねぇちゃんだ。どうして、ここまでする必要があるんだよ。関わってはいけない悪夢が自我を持って襲ってくる恐怖に俺は打ち勝てるんだろうか。誰か助けて下さい。


 それと、俺の居場所をバラしたブレッドには後でお仕置きをしようと誓った俺である。


 「だ、誰だお前!!」


 「やっと見つけましたアマツ・カケル。マスターの命により参上しました。私に従うがいい。きっと幸運を呼ぶでしょう」


 「手の込んだ宗教の勧誘か! いや、幸運欲しいけど! そうじゃねぇーだろーが! お前は敵なのか?」


 「いいえ、カケルさん。恐らく彼女は敵ではないわ」


 「アクアどういうことだ?」


 「彼女、マギア・ドールよ」

 

 「マギア・ドール?」


 彼女がドールって本気で言っているみたいだ。透き通った翡翠の目に紅の髪が美しい。褒め言葉として人形みたいだなと使ったりもするが、俺自身困惑を隠せない。


 アクアの話し曰く、今現在で存在している事が奇跡とされている人形で、生命力を失った精霊の魂を人形に定着させることで体を与え、精霊の命を救う手法がいにしえにはあったらしい。


 元が精霊だけあって、マギア・ドールは人に友好的だった。


 誰が創り出したかまでは分からないみたいだか、前魔王との決戦で全マギア・ドールは破壊され消滅したらしいんだけど……。


 「生き残りがいた? もしくは誰かがまた創り上げたのかしら。真相は分からないわね。どうするの、カケルさん? 話し聞かないのですか? 働くって言いましたよね? 私、忘れてませんから」


 「あ、はいアクア様。僕、頑張ります」


 逃げられねぇー! なんで、今日に限って働くなんて言っちゃうんだ俺はよぉー! 絶対に無理なんだけど。可愛いからって人形だよ? 精霊だよ? 世界狂わせるぐらいの厄介事じゃねーかチクショー! って言えれば楽なんだけどな。


 もう腹括るしかねぇさ。意を決してマギア・ドールに俺の居場所まで来た目的を聞くことにした。


 「何か理由があって来たんだろ? 言ってみろよ。話しだけは聞いてやるから」


 「では、遠慮なく話しを進めます。マスターの命によりアマツ・カケル、貴方を私のマスターとして任命させて頂きます」


 ーーはぁ!? マスター? 僕、マスター?


 誰だよ、人形に訳の分からんことを吹き込んだマスターとやらはよぉー!! 話しを聞くって次元じゃないんだが。


 頭がオーバーヒートしそうになったけど、何とか耐えることが出来たぜ。回避不可能な不幸列車は、最速を決めてレールを走りだしたらしい。


 意味不明な人形の少女、彼女もきっと誰かを助けたくて、いや、それは、前マスターの思いが俺の元まで連れて来たに過ぎないのかもしれない。


 ーーでも、困ってるなら手を差し出すぐらいはしてもいいんじゃないかと、今は少しだけ思っている俺がいる。


お読みいただき、ありがとうございました!

魔導人形マギア・ドール】編 始まります。


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