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第87話『呪いの勇者、ただそれだけの為に』


 「……何でカケルさんが、サンダーボルトの設計図を持っているのですか?」


 「仕方ねぇだろ! いくら処分しようとしたって、燃えない上に切れやしないだから!」


 「どうするですかそれ。争いの種にしかなりませんよ?」


 「それなら大丈夫だ。魔王と近々、戦争することになったからな!」


 「はぁ……。頭が痛くなってきました」


 聖堂教会の一件を終えて、更には魔王に逃走を許してしまった俺達だけど、とりあえず勝利の報告をする為にアクアの元まで戻ったのだが、いつにも増してご立腹の様子だ。


 せっかく、アクアの仇を取ってやったのにつれないよな。その豊満な胸で俺を包んでくれてもいいのにと、つくづく思います。


 魔王との戦争の話しをした途端に、アクアが血相を変えてベッドに倒れ込んでしまいました。自信満々に放った一言は、さぞ心を震わせていたに違いない。


 ーーそうあって欲しいと祈るばかりであった。


 魔王と戦争する以外にもう選択肢が無いことぐらいは、サンダーボルトの設計図が処分出来るような代物では無いと説明した。頭のキレるアクアならきっと分かっているはずだ。


 結局、世界の命運は俺か魔王こと冴島が握ってしまっている以上、どちらかの設計図を奪う以外に道は無い。互いに絶対に殺すと誓いあったのだから。


 「カケルさんなら、そんな選択をするのでしょうね」


 「ご名答。もう引くに引けないさ。まぁ、そんなこたぁどうだっていいんだよ。大切なのは、聖堂教会のことだ」


 「まさか、カケルさん!?」


 「あぁ、討ち取って来たぜ。汚ねぇ教祖の首をよ」


 アクアやアリアドネを散々苦しめて弄び、更にはアテネを死に追いやった聖堂教会を壊滅させた報告をする。正直、俺もこの報告が出来て嬉しいんだ。


 アクアとの約束。


 『もし私が聖堂教会に消されそうになった時、カケルさんは私を助けてくれますか?』


 これを俺は、引き受けていたんだ。絶対に護るって俺が、仲間が約束した誓いでもある。もう、アクアやアリアドネは、必要の無い涙を流す必要なんて無くなったんだぜ? 最っ高の気分だった。


 「すまないな。ピンチの時に駆けつけられなくってよ。約束は果たしたぜ。俺も女神様の一件でかなり頭にきてたんだ。涙を流す理由はもう無くなったか?」


 「カケルさんは相変わらずブレないんですね、変態なところもですが……。まだ、そんな約束覚えててくれたんですね。ここまでしろ何て言ってないですよ!? 悲しむ理由なんてもうある訳無いじゃないですか! 私はどうやってもカケルさんに恩を返せないんですよ?」


 何だよ、いつもらしくねぇーじゃねーか。恩を返す返せないとかの話しじゃない。これは、俺がみんながしたくてした事なんだ。


 ーーアクアの笑顔が見たい、ただそれだけの為に。


 「返せるさ。とびっきりの奴をよ」


 「そんなのある訳が……」


 「これからは、辛かった分、思いっきり笑ってくれ。嫌な事があったら俺が愚痴ぐらい聞いてやるさ。俺が聞いてやれない時は、エリィやアリアがいる。そしたらまた笑ってくれればいい。あ、俺の愚痴はやめろよ? クエストは、あんまり行きたくないからな。これで、過去との因縁はおさらばだ。文句あるか?」


 「ーーそんなの……。ある訳……。無いでしょう?」


 頬に滴る雫は、何も悲しみの象徴などでは決してない。人間は嬉しい時にでも涙を流すことが出来る。今回が、まさにそれだ。


 これまでの苦難を乗り越えたとは思えない、女の子らしい笑顔の似合う立派な笑顔を俺達に向けていたのだった。



♦︎♦︎♦︎♦︎


 「カケルさん! 一体、何人の女の子を口説けば気が済むんですか! 変態にも程がありますよ!?」


 「口説いてねぇーし、馬鹿マリエル! その、あれだ! 不器用過ぎて言葉がキザになるだけだから! 正常だから!」


 「そうですわねカケル様。凛々しいお姿でした。私も涙がでそうでしたのに。邪魔するようで泣けませんでした」


 「カッコ良かったよカケル。その情熱をもっと私に向けてもいいんだけどねぇ……」


 「わらわは、たまに構ってくれればよいぞ主人様! とりあえずチューさせよ!」


 「テメェら、バッチバチに妬いてんじゃねーか! これ以上俺を困らせないでくれぇー!!」


 これにて、聖堂教会との戦争と、サンダーボルトの設計図に関しては、一旦の幕引きとなる。次に魔王と再会することがあれば、今度こそ最終決戦になるんだろうけどな。


 これからやっと日常に戻れるぜ。マリエルにドヤされて、エリクシアと笑いあったり、アクアがクエストの催促をしてくるんだろう。アリアドネとブレッドが、それを見守ってくれたりもする筈だ。


 今までにない達成感を屋敷に持ち帰り、仲間と共にお茶会でもして暫くは、休息を取ることにしよう。


お読みいただき、ありがとうございました!

【聖堂教会戦争編】完結です。

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