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第84話『呪いの勇者と業火の剣』


 「マリエル、詠唱開始!」


 「いつもの奴ですね! ポーションの残量は大丈夫ですか?」


 「あぁ、大丈夫だ。ケリつけに行くぜぇー!」


 【スロー・ギアクル】


 神速よりも速く、完全な殺意を持って、教祖に向かい諸刃の剣を振りかざす。終いにしてやるよ。テメェの筋書き通りにいかなくて残念だったな。


 遠慮の無い斬撃は、教祖を完全に捉えたかと思えば……。そんな簡単にはいかないよな。アクシデントは付き物だ。半分気が狂った教祖が、やたらと神器の複製を展開していて、攻撃が通りそうに無い。


 大量の神器を捌いていたら、ポーションの残量がいくらあっても足りないだろう。軽く牽制するように神器を二、三撃破した後、エリクシア達のところまで俺は引き下がることにした。


 「けっ! 教会様よぉ、ご乱心の様子だな。嫌なことでもあったか?」


 「何故なのだ!? 何故、貴様達は神器に恐れを抱かぬ。この罪人を裁く、幻想教会ガルドラドまでも乗り越えるつもりか!」


 「変なデザインした気持ちの悪い教会をそんなに信用してる何て笑えて来るぜ。もうお前は詰んでるんだ。大人しくサンダー・ボルトの設計図を渡せ。その後でじっくりと殺してやるさ」


 「ーーふっ。フフフフ……」


 この後に及んで、何故か教祖が笑い始めていた。気でも狂って笑うしか無くなったのか、それとも奥の手でもあるんだろうか。


 何か企んでいる可能性は、充分にある。その心意を確かようと呆れ口調ではあるが、教祖に俺は邪気を放ち威圧をかけていくことにした。


 「ーー何がおかしいんだよ」


 「えぇ、おかしいですよ。良い時間稼ぎになりました」


 「!? どういう意味だ?」


 「そのままの意味ですよ」


 時間稼ぎってのが、妙に引っかかる。教祖が時間を稼いで、何か得でもあるんだろうか。確かに俺は、戦闘が長引けば長引くだけ、呪いの代償があるから不利になる。だけど、それは教祖だって一緒のことだ。


 神器の複製を展開したって、俺に打ち落とされる訳であり、教祖にとっては、この状況を逆転させられないからな。劣勢でも無ければ、優勢でも無い。


 ーーそれだけの情報が有れば充分だった。教祖は、魔王到着までの時間稼ぎをしていたんだ。


 あわよくば、殺すつもりだったんだろうが、思いのほか、手こずってしまって状況が苦しくなったんだろうよ。教祖は、もう既に魔王と手を組んでいたって訳だな。


 「魔王との合流がもう近い。そうなれば、我と魔王が、この世界を掌握し支配出来るだろう。終焉の時は近いぞぉ、呪いの勇者。こうべを垂れよ。さすれば、奴隷ぐらいにはしてやるわ。まぁ、そこの娘達は殺すがな」


 「勝手にペラペラ好き勝手喋るなよな、キモデブ教祖。お前、童貞だろ。拗らせると厄介だな。自分の妄想ばかり語りたがる」


 「……童……貞……じゃと!? また、我を愚弄するか呪いの勇者! 貴様だけは……!?」


 「やっすい挑発に乗るんだな。まさか、図星か?」


 「貴様、いつ背後に!?」


 【スロー・ギアクル】


 ーーブンッ!!


 諸刃の剣は、神速の剣で教祖を叩き込む。ダサいよな、こんな挑発に乗るなんてよ。教会で担ぎ上げられていたんだから当然だよな。教祖には、煽り耐性なんてのは皆無だ。


 魔王と合流される前に、精神攻撃からの斬撃で教祖の心をへし折ってやるさ。だけど、なんか放って置いても良い気がしたんだよな。


 互いにサンダー・ボルトの設計図が欲しいはず。だけど、使用の目的が全然違うんだ。教祖は、この世界を掌握し支配する為、魔王は、この世界を消滅させる為、似ているようで全然違うよな。


 多分、魔王に嵌められてる可能性も捨て切れないが、危険分子である教祖は、ここで殺しておくのが無難だろう。


 「行って、カケル! アクアとこの街を護る為に!」


 「任せろエリィ! ブレッド行くぞぉー!」


 「主人様となら何処でも行くのじゃ! あの変態を成敗するぞ!」


 「「トドメだぁー!!」」


 ーーブンッ!!


 ブレッドの業火に身を包んだ、諸刃の剣の一閃は、動揺している教祖に狙いを定め、激しい火花を上げていた。


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