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第77話『呪いの勇者と双剣の激突』


 「主人様、前方に敵影は無しじゃ! 視界良好じゃぞ!」


 「そりゃ、敵影は居ないだろうな。ブレッドが見てんのは、アリアの胸の谷間なんだからさ。てか、いつまで見てんだよ仕事しろ!」


 アクアとの密談も終わり、部屋を退出した後、俺とエリクシア達は周囲の警戒に当たっていた。いつ何時も、目が離せないからな。


 急に襲撃でもされたら、聖堂教会の敵戦力十万人に最も容易く、エルムーアが攻め落とされるだけだ。少しの異変だって見過ごせないって言うのに、うちの黒竜さんは馬鹿全開なんだよな。


 絶景だってには、俺も同意するんだけどね。そんなことしてる場合じゃねぇんだよ。屋敷に連れ帰ってから、だいぶ頭がぶっ飛んでるとは思ってたけど、人化出来るようになってからというと、エロさと馬鹿さに拍車がかかってやがる。


 不安でしかねぇ。愛しいエリィは、関わりたくないとそっぽを向いてるし、当人のアリアは胸を見せつけて、マリエルに至っては、透かし指で恥ずかしがるアリアを見ているだけだった。


 だけど、それが俺達だよな。ブレーキ役でも欲しいところだけど、ここぞって時は切り替えてくれるし、俺の大切な仲間だ。たまに? のハメ外しぐらい許してやろう。


 「主人様! 前方敵影有り! 数は一つじゃ!」


 「単騎で攻めて来るたぁ、いい度胸してんじゃねーか。行くぞ! まずは、奴を叩き潰す!」


 事態は急変した。この大戦争の狼煙が上がったんだ。掛け声と共に敵影に向かうんだけど、この感じは妙だよな。誘われてるのかもしれない。


 罠か、或いは囮の可能性も充分にある。わざわざ、一人で攻めて来る必要も無いしな。聖堂教会の奴らは恐らく本気だ。常に先を読んだ立ち回りをしないと、敗北に繋がってしまうだろう。


 そうだったとしても、関係ねぇよ。俺達なら、どんな逆行だって簡単に跳ね除けてやるさ。眼前の敵を倒すだけだしな、人数や誰だとかは問題じゃない。


 ブレッドの背に乗って、ただ一つの影に急接近する。奴の姿を見た時、俺はその影に見覚えがある。ソイツは、記憶に新しく、到底忘れられそうにない顔だった。


 「おやおや、馬鹿が何人も集まって来てしまいましたか。まさか、本当に私達と戦争をしようとはね……。愚かですよ、呪いの無能勇者さん?」


 「なんだよ、猿芝居は他所でやれや。お前は、アクアを暗殺しに、エルムーアで暴れてた奴だろ? いけ好かねぇ野郎だな。どうせ、誘導役か何かなんだろう。通用するとでも思ってんのか?」


 「……はぁ、ホント馬鹿を相手するのは疲れる。私は呪いの勇者、あなたを殺す為に、ワザと見つかるような真似をしただけですから」


 エルムーアの襲撃で、手も足も出せずボコボコにされて尻尾巻いて逃げだだけじゃねぇーか。何でこんなに威勢が良いんだよ。もう訳分からん。


 策でも講じてきたんだろうか。エリート振りやがってよ。俺の怒りのボルテージが上がりそうだった。


 見た感じだと、特に変わった様子など見受けられないが、とりあえずは攻撃しないと始まらない。エルムーア時は、手加減してあのザマだったからな。アクアの仇を取るってのもあるし、今度は手を抜いてなんてやらねぇぞ!


 「マリエル、最速で行く! 頼んだぞ、詠唱開始!」


 「小手調べと行きましょうか! 危なそうだったら直ぐに引いてくださいね!」


 【スロー・ギアクル】


 ーーブンッ!!


 神速をも超える速度であの野郎に接近し、諸刃の剣を振り下ろした。剣速について来れてないのは分かってるんだけど、何とも言えない違和感が俺を襲っていた。


 攻撃が来ることぐらいなら、幾ら速いって言っても分かってるんだから、防御の態勢の一つぐらい普通はする筈なんだけどな。ソイツは、ただ突っ立ってるだけだった。


 何も出来ない雑魚だったならそれまでだよな。力を込めて諸刃の剣でぶっ飛ばしてやろう。


 ーーガキンッ!!


 得体の知れない細い長剣が、俺の目の前に現れて、諸刃の剣の一撃を完璧に防いでいた。いや、ぶつかって来たが正しいか……。


 剣が勝手に主人を護るかの様に現れたんだ。驚きのあまり、俺は一旦引く事にした。マリエルの元に戻り、あの剣の姿を追う。


 「双剣!? しかも、浮いてんぞ? どうなってんだ!」


 あれも神器の類なんですかね。また、厄介なもんに絡まれてしまったよ。恐らくは、あれにも意志があるんだろうな。


 ーーあの双剣を何としても攻略しなきゃならん。

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