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第72話『呪いの勇者と姉妹の結末』


 「俺達以外には、誰も乗車してないんだな。レミア、調子はどうだ?」


 「全く変わらないわね。本当に私と姉さんは帰れるの?」


 「それは、魔導列車が決めるだろうよ。大丈夫さ、俺達とレミアの絆は本物さ。この列車は、大事な人を連れ戻す為に存在してんだからよ」


 ーーガタンガタン! ガタンガタン!


 暗闇をただひたすらに走る事、どれぐらいの時間が経つんだろう。時が止まって感じてしまう錯覚に陥ってしまうけど、俺達はしっかり前へ進んでいるんだろうか。


 何処に停まる事なく、レールの上を走る魔導列車は、俺に何かを成せと言わんばかりの激しい音をたまに鳴らせていた。


 このままって訳にもいかないんだろうな。きっと何かをしなきゃ、この旅は終わりそうになさそうだ。


 「勇者様、聞きそびれていたんですけど、魔王は一体どうしたんですか? 冥界を乗っ取るって聞いてたんですけど……」


 「あぁ、諸刃の剣でブン殴ってたら尻尾巻いて逃げて行ったよ」


 「ーーはぁ!? 魔王を殴ったんですか!? レミア、この勇者様は本物なの?」


 「そうよ、お姉ちゃん。ケダモノだけど、本物の勇者なんだ。意外とカッコイイでしょ?」


 「レミア、変なこと吹き込むな! 姉さんが困るだろ!」


 ケダモノって奴は、どうにかならんのか。マリエルのせいで、全員から変態扱いされちまうじゃねぇかよ。だけど、姉さんはその事で困惑していた訳じゃない。


 姉さんには、言い忘れてたからな。姉さんの為に魔王を殴った事、必ず殺すと誓った事。勝手に立てた約束だったけど、魂を込めて俺は魔王に戦線布告したんだ。


 ーー姉さんの変わりに俺達が魔王を仕留めると。


 「悪い、姉さんの変わりに俺が魔王を殺すって言ってしまったんだ。だから、俺達に全てを託せ。俺にとっても因縁の相手だったし、何より魔王は弱かった。全て引き受けてやるから、レミアと生きてくれないか?」


 「勇者様はお強いのですね。魔王を雑魚呼ばわりなんて……。いいんでしょうか、私が生きることを選んでも」


 困惑の止まらない姉さんの手を強く握りしめるレミアは、自分自身の答えを導き出していた。言ってやってくれ。この、自信を無くした分からず屋には、妹の声が心に一番響くだろうから。


 「私は、お姉ちゃんと一緒に生きていたい。昔みたいな村じゃなくてもいい。朝起きておはようって言い合ってさ、楽しく食事して、馬鹿やって、最後におやすみって言う、ごく普通の毎日を過ごしたいの。だから、私と生きよう! 生きることを諦めないで! 私はここまで来たんだから! 今度はお姉ちゃんが答えてよ!」


 「本当にいいの? お姉ちゃん、出来損ないよ? 何かあったって助けてあげることも出来ない。そんな私なんか……」


 「お姉ちゃんは一人じゃないよ。私達は姉妹なんだから何でも一人で背追い込んじゃダメじゃない! 逆なのよ、私がお姉ちゃんを助けるし、お姉ちゃんは私を助ける。だから、責任なんて重荷は今日でさよならをしよう」


 見てられなかったよ。俺は涙を隠すので精一杯だったからな。責任なんてのは、分け合えばいい。自分でどうにかしなきゃって、姉さん自身がプレッシャーを感じていたんだろう。


 一人で背負うのは苦しいさ。俺も充分理解してる。皆んながいてくれるから俺は壊れずに済んだけど、この姉妹ならそれすら簡単に乗り越えていけるだろうからな。


 「ごめんねレミア。私も一緒に生きたい!! レミアと生きることを諦めたくない!!」

 

 ーーガタンッ


 狂おしいほど、姉妹は涙を流して抱きしめ合っていた。ありのままの気持ちを告げる姿に、俺はまた涙を流してしまいそうだったけど、妙な音がしてそれどころではいられなくなる。


 魔導列車が動いている感覚など全く無いのだがな。もしかして、死者の奪還に失敗してしまったんだろうか……。焦っていると、車内アナウンスが車両全体に響き分かっていた。


 「次で、終点でございます。『姉妹の絆』しかと聞き届けました。ただいまよりこの列車は、死者を蘇らせる為に運行致します。幸せを取り戻して下さい……」


 ーーガタンガタン! ガタンガタン!


 停止した電車がまた走り出す。このアナウンスで張り詰めた緊張感は緩く解けて、俺は腰を抜かしてしまうところだったよ。


 「う……。嘘……。生き返れるの!?」


 「どうやら、そうらしいな。いやぁ〜、魔導列車に賭けて正解だったよ。無理だったらどうしようかと思ったぜ」


 「カケル、嬉しそうじゃん。泣いてたの?」

 

 「泣いてねぇーし! あくび出ちゃっただけだし! エリィだって目が赤いぞ!」


 「乙女はね、泣きたい時もあるんだから。デリカシーってのが無いのね、呪いの勇者様は!」


 「何それ、ここにはレミア含め、危ない乙女しかいねぇだろ! 俺だけ除け者にしてイジメてんのか!」


 魔導列車が終点に向かうまで、思い出話しやら、マリエルの下着の件で一同、馬鹿みたい笑っている。こんなに嬉しいなんてな。正直、夢みたいだよ。


 俺が望む未来に辿り着くことが出来た。俺だけが望んだって訳でもないけど、姉妹が生きることを諦めなかったこと、エリクシア達がサポートしてくれたこと、それらが全て結果となって返って来たんだと信じたい。


 ーーキィィィィ


 俺達の旅の終わりを告げるブレーキ音が響いている。意外と早かったんだな。いや、早く感じただけなのかも。早く降りないと、レミア達が生き返れなくなるかもしれないからな。皆んなを連れ出し、急いで魔導列車から降りることにした。


 「エルムーアに着いたみたいだな。なんだか懐かしい感じだよ」


 「ほ、本当に生き返った!? お姉ちゃん、私達生きてるよ!」


 「そうねレミア。もうお姉ちゃん迷わないから、これから一緒に生きていこうね!」


 無事に生還を果たし、一息つきたい気分だったけどそんなのは野暮だよな。喜びを隠しきれないレミアが、マリエル以上にはしゃぎ回っていて、やっぱり年相応なんだなと思ってしまった。


 エルムーアに到着したのも、魔導列車が狙ってやったに違いない。生き返っても、暮らしていくだけの環境がなければ困るだろうと気を利かせたんだろうな。


 頭が上がらねぇ、本当にありがとう魔導列車よ。この土地なら姉妹が幸せに生きていける筈だから。


 「ねぇ、お礼がしたいの」


 「何だレミア、別にいらねぇよ? お助け稼業なんかしてねぇからな」


 「いいから、目を瞑ってしゃがみなさい!」


 訳わかんねぇぞ、人質みたいなポーズさせられてるんだが……。リンチにでもされるのでしょうか。不安でたまりません。


 「ーーちゅ//」

 

 「んっ!? っん//」


 冷たくて柔らかい何かが、俺の唇を塞いでいる。驚きのあまり目を開けると、怒りの眼差しのヘイトは俺に向いていた。


 勘弁してくれよ、俺は何もしてないってのに。何でレミアが俺にキスしてくるんだよ。嬉しいとか以前に俺、皆んなから殺されてしまうのですが!


 「は、初めて……。だから、これでいいでしょ!?」


 「いい訳あるか! 火種撒いただけじゃねぇか!」


 顔を赤くしたレミアが逃走し、弁解の余地が無くなってしまいました。さて、僕はどうやってエリクシア達に痛めつけられるのでしょう。


 「ケダモノ!」


 「私以外とキスするなんてサイテーね」


 「わらわは構わないぞ! もっとわらわに見せてくれ!」


 「カケル様、抱きしめて差し上げてますよ?」


 「や、やめてくれぇーー!! 死んじゃうからぁー!!」


 ーーこの物語の結末が、悲劇であっていい訳が無い。妹を命すら顧みずに最後まで護ろうとした姉さんが、魔導列車から帰還出来たは、きっと俺達が何かしたって訳じゃないと思う。


 死者との絆を繋ぐ、あの魔導列車にレミア姉妹は認めて貰った事、人はこれを奇跡って言うんだろうな。


 でもこれは、奇跡でも何でもない。生きるということを最後まで諦めなかったから、それなりの結果をもたらしたに過ぎないのだから。


 レミア姉妹が、これからも幸せに生きていけることを俺も強く願っている。


お読みいただき、ありがとうございました!

【魔導列車編】完結です。

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